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2017年10月23日23:55

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言いたい放題の新車レヴュー・【トヨタ・アクア、MC後期】

■コモディティ化したハイブリッドカー■

 アクアは1.5L以下のマイクロハイブリッドカーでは最も売れているハイブリッドカーだろう。ヴィッツをベースに、ヴィッツ譲りの街中での取り回しの良さ、老若男女、誰が乗っても嫌味の無いデザイン、吊り目の怖い顔をしたクルマが多い中、ごく普通。それでいて豊富なカラ―。200万円以下で購入も出来る。プリウスが登場して20年目。最早ハイブリッドカーは特別なクルマでは無くなった。なお、欧米では「プリウスC」という名で売られる。1.5Lのエンジンにモーターがつき、カタログ燃費は38.0km/Lを謳うが、これは商用車ベースの最廉価グレード。それ以外は34.4km/L。多くの方が乗っているのはこちらだろう。

 実質賃金は横ばいか、マイナスの中、自動車はマイナーチェンジを繰り返し、そんな庶民の懐など関係なく値上げが続く。正直完成度高いが値段も高くなったモデルが多い中、アクアの値上げは8万円程度。良心的な方だ。商品力だって侮れないものとなった。

 まあ、日本中に溢れかえっている車なので、商品説明はほどほどにしたい。デヴュー当時は「ベースが所詮ヴィッツとはいえ、色々とやって欲しいことが山ほどあるな」と思わざるを得なかったが、マイナーチェンジ(MC)後は商品力だけでなく、完成度も高くなり、ハイブリッドであることに持つ誇りは全然感じなくても、スタイルで買っても間違いではないモデルになって来たので、レポートすることにした。

 初期型や兄弟車のヴィッツとの比較などを交えてお届けしたい。

 
■薄紙を重ねるようなカイゼンの跡■

 シート自体はクッション性こそあるものの、矢張り後席は狭い。ただ座ってしまえば不快にさせられることは無かった。お迎えが多い方はヴィッツの方が良いのかもしれない。こちらの方が後席の広さはアクアよりも上。まあ、フォルムを見れば、一目瞭然。アクアは空気抵抗重視の為、4ドアクーペのようなデザインで、一方ヴィッツはオーソドックスなコンパクトハッチのようなフォルム。デザインが後席に正直に出た結果ともいえる。逆にパーソナルに使いたい方はアクアでも良いのかもしれない。

 操作性は上々。ヴィッツベースのジクザグ式シフトセレクターも初めて乗る方にも使いやすいはずだ。MCでエアコンのボタンが大きくなり、シンプルで使いやすくなった。走行性能には直接関係ないとはいえ、毎日触るところなので、これは重要だ。カップホルダーもヴィッツと比較したら使いやすい。距離を稼ぎ、故意に角度の掛かった設置にしている。ヴィッツのそれは運転席なのに助手席側に置いた方が取りやすくなってしまう。そんなのは自分だけだろうと思ったら、ユーザーの多くが同様の事を感じたという。フルモデルチェンジではアクアに見習って要改善の部分だ。ハッチの上げ下げは上品になった。初期型は渋くて硬い感じだったが、こちらは上げ下げが背の低い女性でもストレスフリーで出来るようになった。

 車両感覚はコンパクトカーとしては及第点。コンパクトカーは見切りが悪いものが多いが、その中でもまともな方だ。ダッシュボードがフラットというのも効いている気がする。それとヴィッツ、ラクティスは1本ワイパーで、それはそれでアイデア商品なのかもしれないが、そのメカが大きく、先端が殆ど見えない。一方アクアはオーソドックスな2本ワイパーなので、高くすれば辛うじて先端が見える。

 クーペのようなフォルムだからシート調整には限界があるのでは、と思ったら、意外とシートリフターは調整幅が大きく、身長が155cmの女性でも高過ぎるという程上がり、一方で180cmの同行者が低過ぎると感じる程下げられる。しかもテレスコピックが殆どのグレードで今回は標準となっているのも良い。イイカゲンな姿勢を許さないのは評価出来る。疲労度、事故率にも好影響を与えるはずだ。

 感心したのはウインカーだ。音自体はヴィッツやオーリスと比較してしまうと安っぽさも感じるが、運転席と助手席とでは響き方が異なる事だ。助手席は音がうんと小さい。このあたり良い意味でトヨタらしい配慮だろう。

 では早速走ってみよう。

■総合的には良い意味で「普通」になった乗り味■

 ハンドリングは中立付近がやや不明確で、高速道路でも車速が上がっていくのに、ハンドルが重くならない。この点トヨタ車に多いタイプに変わった。この点、路面情報を察知しやすい初期型の方が自分は好きだったが、ターゲット層を考えるとこれでも良いのかもしれない。とまあケチをつけたが、ウレタン製とはいえ、ハンドルのタッチはなかなか良い。滑りにくく、革製など要らないのでは?と思うほどグリップ性に優れているのは毎日触る部分だけに、好印象だ。

 デヴュー当時はそれこそ燃費最優先と言わんばかりのグレードもあったくらいだ。特に初期型のあの、ピーピー、キーキーといった硬質で高い電子音は酷いもので、個人的には聞くに堪えなかった。あの音は駄目な人には本当に駄目らしい。だが、現行型モデル終盤だろうが、その音は鳴りを潜めた。耳を澄ませばブレーキング時に聞こえる程度。矢張り私と同様、不快に感じる人はかなりの数がいたことの証左だろう。これでハイブリッド車が嫌になった人もいたはず。ところがこれが大幅にカイゼンされていた。朗報といえる。

 そもそもアクアというクルマ、プリウス以上にクルマに何のマニアックな知識も無い普通の人がどこにでも売っている靴で普通に運転出来るのが売りで、今もそうだろうから、この点はそんなキャラクターを消しかねない大きなネガだったのは間違いない。

 エンジン音も矢張りドラマは感じない。MC後のヴィッツの1.3Lやオーリス120Tなどは同じトヨタ車でも硬質で良い音を立てているのに、まるでアクアのエンジン音は並の3気筒エンジンみたいな感じだった。いやいやスズキ・スイフトRSt、バレーノXTだって1Lの3気筒ターボなのにもう少し良い音を立てている。もうひと捻り欲しかったところ。それでも初期型は高めの回転(3000rpm超くらいか?)になるといきなり唐突に音が高まる、常用域以外は粗野なところはいかにも昔のトヨタ車的だったが、徐々になだらかに高まってくれる。音質には拘っていないものの、この高まり方は初期型よりも上質に感じた。
 
 加速性能はごく一般的な1.5L車といった感じ。このあたりも「ごく普通」。システム的には100馬力、モータートルクは17.2キロとかなりの力持ちだが、そんな大トルクのモーターは黒子に徹する。この点がモーター主役の日産・ノートE-POWERと違う。逆にダイレクト感は余りない。スロットルを開いて0.5秒程度してから加速していく。この点、1.3Lのヴィッツもそう。

 トヨタのCVTはオーリスのように故意に段つきにしているものと、ヴィッツ、カローラのようにラフな操作でもショックが殆ど無いものとに分けられるが、アクアは後者。

 アクアのシステム出力は100馬力で車重は1060〜1100kg。パワーウエイト・レイシオではひとケタにはならないので、多分0−400mでは18.7秒程度かと予想出来る。それほど余裕がある訳ではないと考えたが、矢張りそうだった。流れの速い地方のバイパスなどでは先読みして動く必要がある。まあ日本の交通を考えれば、加速性能も普通で過不足は無い。このクルマでそんなに飛ばす人もいないはずだ。

 ブレーキは相変わらずスポンジー。しかしアシストの介入は早い。ベテランドライバーになると、ブレーキを全開に踏むのではなく、全開のカックンブレーキを10とした場合、10のうち7くらいの踏力で踏み込み、次にブレーキを抜いて、また踏む。こうすることで、カックンブレーキにならないようにする訳だが、その「抜く」際に癖がある。微調整がしにくい。そんな性格。一方でペダルを強く踏めない人には良いのかもしれない。この点もヴィッツ(全輪ディスクブレーキが標準のRS、G‘s、GRは除く)と同じ。アクアとヴィッツのメインターゲット層はどういう人達かが明確に分かる部分。

 大幅にカイゼンされたサスペンション。ヴィッツのRSと同様、初期型は本当に棒のように硬かったが、今回しなやかになって来た。この点は高く評価したい。乗り替えた人たちが最も良い、と感じているのはこの部分のはず。特に日常域が使いやすい。乗り心地重視に振って来た。というと、柔らかすぎるのかと思いきや、ちゃんと減衰力も確保されているところが良い。それほど高価な部品を使っているとは思えないが、車重がたかが1100kg弱ゆえ、ダンパーとサスペンションとのバランスが優れているからそう感じるのだろう。

 一方で静粛性という点では下からのノイズ、風切り音という点ではヴィッツ、カローラと比較してしまうと、アクアはそれほど良いと言えない。乗り心地が良かっただけに悩ましいところではある。


 売りの燃費は満タン法で400kmほど走って、高速3、地方の幹線道路3、東京の一般道4で25.3km/Lだった。特に燃費運転はしていない。実燃費も25km/L行けば先ず及第点だろう。

 ■ハイブリッドに「色」をつけたクロスオーバー■

 アクアには中期型にあったアーバンというグレードの後継としてクロスオーバーというグレードがある。地上最低高を30mmアップし、16インチタイヤ、街乗りSUVタイプだ。アクアはベストセラーカーだけに被るのが嫌だという人には良いかもしれない。但し車幅は1715mmとほんの少しだけ3ナンバーサイズになるものの、ミラーからミラーの寸法はレギュラーモデルと同等とのこと。室内は明るめの色も選べるようになった。現在日本のコンパクト市場でまだ開拓されていないのが、このコンパクトクロスオーバー(街乗りSUV)ということもあり、少し個性を感じる。

 取り回し半径は185/60R16の場合、5.4mになる。このクロスオーバーを選ぶのはトヨタの予想に反して若者ではなく、高齢者のような気がする。高齢者は色々とSUVに乗ったけど、日本で不整地にズカズカと入れる場所など現実には皆無に等しい。ならば、オプティカル(カッコウ)で選んでも良いでしょ、と悟りの境地でこの手のクルマを選ぶことが多そう。その場合はこの取り回し半径は留意すべきかもしれない。それが気になる人がいることもトヨタは想定しているのか、抜け目なく185/60R15というタイヤも用意している。こちらはレギュラーモデルと同様の4.8mである。

 こちらも乗せて頂いた。車重が上位グレードのG、中間グレードのSと比較し、10kgほど重いが、ガソリン車ほど車重差は感じられなかった。ガソリン車でたかが100馬力のクルマの10kgは結構感じるが、それは無い。この程度の車重差ならば、モーターの大トルクでカバー出来てしまうところはハイブリッドの得意なところかもしれない。その分、燃費はやや悪化するのかもしれないが。しかし私ならばこれにするだろう。但しタイヤのサイズ、16インチはやや過剰だった。それほど飛ばして乗る訳ではないのだから、15インチタイヤにしてタイヤの銘柄のグレードを上げるのがこのクルマの性格にマッチしている気がした。

 よくヴィッツ・ハイブリッドがあるのに・・・という意見もあり、確かに前期型だと一体どこが違うのかと悩ましい話になってしまうが、このクロスオーバーは違いを感じさせてくれるモデルだった。

■地獄耳【コンパクトハイブリッドはアクアが専売か?】■

 余談だが、4代目ヴィッツは2020年の五輪までにはデヴューし、ハイブリッドを廃止し、1.5LのマイクロPHEVを出すという情報を入手した。確かに今のままではアクアを買った人から不満が出そうだ。ヴィッツにハイブリッドが無いから、仕方なくアクアを買った、という方は多いのも事実。

 個人的には欧州のヤリスでラインナップされている1.4Lのディーゼルターボを出してくれれば、と思ったが、BMWすらディーゼルから撤退しようとしている中、それは難しいのだろう。PHEVとガソリン車が欲しい方はヴィッツをどうぞ、というのは理に適っている。なお、ダイハツ製の1Lの1KRエンジンは継続、1.5Lの代わりにオーリス120T、CH−Rで既にラインナップされている8NR−FTS・1.2L直噴ターボが1.5LのNAの後継機種にあたるとのことだった。

■ライバル車と比較すれば・・・■

 アクアクロスオーバーになると別だが、それ以外のグレードと比較するのであれば、以下の2台かもしれない。

 ◆マツダ・デミオXD(ディーゼル)

 トヨタも欧州ではディーゼルを販売しているものの、今や日本国内ではディーゼルエンジンの普通車といえばマツダの専売特許になった感がある。その躍進役がこのデミオだ。実燃費支払額はアクアと大差が無いどころか下回る場面も出て来るほど好燃費。

 しかし、いざ15万キロまで乗ってやろうと思うと、気になるところもある。ディーゼルエンジンは鼻先がとても重たい。一般道の制限時速30〜60kmのところで走ろうとすると、始終微調整を余儀なくされる。逆に高速道路では別のクルマのように直進安定性を得る。

 ドライバーズカーなのは率直に認めるが、問題は家族がいる方だ。家族を乗せて試乗して投票させたら、アクアに票を投じる人の方が多くても不思議ではない気がする。

 デミオでもMT車が好き、という方は、15MBがベストチョイスかもしれない。6MTしかないが、ハイオクというネガこそあるものの、鼻先は軽く、車重1000kgゆえ、XDディーゼルのネガが解消されている。加速性能は0−400mで16秒台。俊敏であるだけでなく、価格も160万円以下からと廉価なのも嬉しい。何といってもスポーツ仕立てにしては派手さが無いため、言わなければただのMT車にしか見えない。家族に言い訳も不要である。

 ◆ニッサン・ノート・E-POWER

久方ぶりに大ヒットを日産が飛ばしたクルマ。確かに時速80kmくらいまでであれば、2L車にひと泡吹かせることが出来るほどの瞬発力はある。しかし自分が乗ったメダリストだと乗り心地は後席に乗車させた場合でも結構キツイ感じ。

 またこの手のクルマ、マツダ・デミオXDのようにレシプロエンジンとも違い、電気自動車もどきだから、果たして10年10万キロなんて当たり前、15万キロを目指す時代になった今の時代に廉価な維持費で15万キロ乗れるのかどうかも未知数である。

 そもそもノートというクルマは初代の場合、ルノー・モデュスというクルマとシャシ、フロアパネルを共用としていて、全長4m程度でフィット並の積載能力と2Lセダン並の味付けが魅力だったはず。ところが2代目後期型の現行型はメカの先進性ばかりが優先され、そうした魅力が失せてしまったのも確かだ。この不器用さはいかにも「技術の日産」ともいえる。ただNISMO仕様は結構良いらしいが、いでたちからして、「いかにも速いぞ」という演出が激しく、家族に許可が要りそう。

 こうして見ると、ライバル車と言いつつ、この2台は良く言えば結構パーソナルなクルマのようである。

 どれを選ぶかは同居されているご家族のご意見も聞いて下さいといったところだ。ドライバーと乗せて貰う人とでは快適性で意見が異なるのは不思議なことではない。

 言いたい放題のクルマレヴューを最後までご覧頂き、ありがとうございました。

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