熊本、静岡、福井、広島、東京・・・と巡回してきた展覧会。
最後の名古屋はこの10月にランスと姉妹都市となりましたので
名古屋市美術館限定で3点の特別出品がありました。
ランス美術館展
@名古屋市美術館
その1
《父の呪詛を受けるデスデモーナ》ウジェーヌ・ドラクロワ
61.4x50.5
フライヤーの裏面右の作品です。
ドラクロワ作品としては、全国を巡回した本展中にも
《ポロニウスの亡骸を前にするハムレット》
が出ています。
やはりシェイクスピアにもとづくもので 誤って刺し殺したポロニウスが床に倒れ、
ハムレットは 片手でカーテンをあげてそれを見下し、
画面奥にはオフィーリアが 顔を抑えて天をあおいでいます。
緊張感のある場面なのですが、なぜかハムレットは 呆然としていて動きに乏しい。
それに対して《デスデモーナ》はムーア人との恋を選ぶ娘に対する 父ブラバンショーの怒りが真紅の衣とさえぎるような大きな手のひらで 表され、
髪をみだしたデスデモーナがとりすがる、その2人が黒い背景に スポットライトがあたったように表現されていて、よりドラマチックです。
その2
《ベルク、漁船の帰還》ウジェーヌ・ブーダン
79.3x109.3
やはり本展中にもブーダン作品は 《ダンケルク周辺の農家の一角》 が出ていますが
《ベルク》の方がずっと大きいですし 画面の2/3が空。
その空も、暮れ方か、暗くきれぎれに広がる雲、わずかに光る遠い空、
「空を知っているのはブータン以外にない」(クールベ)
「空の王者」(コロー)
といわれるブータンの特徴がわかりやすいのはこちらでしょう。
《ダンケルク周辺》の空は薄明るく輝く一様な空ですから。
その3
《青春》ラファエル・コラン
81.9x59.8
パステルカラーの明るい画面に少女の半身像。
背景の木々も緑にひかり、片肌ぬぎに水色の衣をまとっている。
キャプションにあるとおり、特定の誰か、というのでなく青春、という タイトルをつけているのがふさわしい美しい絵です。
作者は黒田清輝の師として知られており、そうした意味で 選ばれた作品でしょう。
もちろん全国を巡回してきたのもすばらしい作品ばかりです。
レオナール・フジタ関連の23点(礼拝堂のためのデッサンを含む)も ”ランスらしい”展示でしたが
個人的にはナビ派の
《魅せられた人々》モーリス・ドニ
《試着》エドゥアール・ヴェイヤール
がよかったかな。
メインビジュアルの
《マラーの死》ジャック・ルイ=ダヴイッド
になりきる撮影コーナーがありました。
12月3日まで。
http://www.art-museum.city.nagoya.jp/reims
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