フランス映画「めぐり逢ったが運のつき」(1993)のリメイクだそうです。僕は見ていませんから、「ターゲット」をばりばりの新作だと感じました。ビル・ナイが腕利きの殺し屋に扮して、名画売買の女詐欺師(エミリー・ブラント)を狙うのですが、その前にブラントを殺そうとする人間が現れたため、ついそちらを殺してしまう、という展開。
このエミリー・ブラントが自転車で、信号無視を平気で行って自動車を混乱させ、さらには自転車に乗ったまま美術館内を走り抜けます。このマンガ感覚がダメな人は、この映画を見ても楽しめないと思いますので、手を出さないでください。僕は最近、エミリー・ブラントに好意的になっているので、問題なくついていきました。
エミリー・ブラントが、エイミー・アダムスの妹を演じて迷惑をかけていたころ、そしてアン・ハサウェイに出し抜かれるファッション関係者だったころはダメでしたが、「ボーダーライン」でコマのひとりとして消耗品として使われているあたり、結構好きです。ビル・ナイが腕利きの殺し屋というジョークを認めてしまえば、エミリー・ブラントは二重丸でした。
まして今回の監督は「いとこのビニー」のジョナサン・リン。今回は「隣のヒットマン」に優る出来だと思います。「いとこのビニー」のマリサ・トメイみたいな役どころがアイリーン・アトキンスという感じですが、このばあさんでは色気がありません。それが玉に瑕でした。だってアトキンスがビル・ナイの母親役ですよ。15歳の時に産んだんかい?←計算が合う? そう思う方は、この映画を見ても怒らないから、ぜひご覧ください。
そして巻き込まれる青年がとぼけた味で楽しめます。見た目がデビュー当時のアンドリュー・マッカーシーみたいなんですが、妙に厚かましくていい。なんと「ハリー・ポッター」シリーズで、ちょっとチャビーな少年だったルパート・グリントでした。人並みの体つきになり、ラドクリフ君みたいに「ハリ・ポタ」色が濃厚ではないから、使いでがあるんじゃないでしょうか。
さらにビル・ナイを追い落とそうとする二番手(自称)殺し屋がマーティン・フリーマン。キレ者のように見えて、もちろんそうではなく、なかなか笑いを誘います。分かりきっているオチですが、それでも納得。軽妙に楽しく展開する、その安心感がすべてでした。やはり映画というものは、こうでなくちゃ。と、先日のダメ・アニメ・オンパレードのサイテー作を見た影響が大きい。
いや、だからといって僕の評価基準がぶれているのではありませんよ。そんなことはないと信じたい。少しはあるかもしれないけど、あのダメージを口直しさせてくれるだけの手柄は、この「ターゲット」に認めてやってください。しかしまぁ、タランティーノだったらエミリー・ブラントを、「ジャッキー・ブラウン」のブリジット・フォンダのように描くんでしょうね。僕も製作年の近くに見ていたら、同感だったと思います。
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