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2017年08月13日10:33

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作品鑑賞が第一の目的だが、現場の話を聴いて映画製作の実情を知る。東京月イチ映画祭8月例会に参加しました。

今回は金曜日の“山の日”祭日と日曜日に挟まれた通常例会に参加しました。グランプリ大会というのも魅力ですが、ちょっと時間がかかりすぎるのでパス。加えて“僕が好む作品はグランプリ受賞作にならない”という“定説”に従ったのでした。

出遅れて先月のグランプリ作品を見逃しましたが、先月参加しているから僕は見ています。またお盆休みの真っただ中ということもあり、わりと空いていました。ということで定席に着席。

今回は30分から1時間の作品が多く、いちばん短いので18分ありました。全6作品。最初に上映された橋本麻未監督「今晩は、獏ちゃん」(42分)は、監督の世界観と作品がマッチしていない。というかわかりやすく言うと、描きたいものを描く力が不足しています。悪い夢を食う獏が若い女の子で、それ自体は魅力的なのに、展開などが平凡でした。

続く佐藤快磨監督「壊れ始めてる、ヘイヘイヘイ」(写真3)は、ndjcの若手作家育成プロジェクトでした。コンビニや量販店などでクレーマーを見かけると、つい跳び蹴りを食らわせてしまうという男と、その跳び蹴りに惚れたコンビニ女性店員の物語。跳び蹴りというアクションが、僕には別にかっこよく見えないので、そこが致命的でした。

ブルース・リーのアクションやスティーブ・マックイーンの動きが好きだという監督ですが、僕にとっては“それで、跳び蹴り?”という感じ。しかし、二人が仲よくなって寝転んでいるだけなのに、“楽しいね”とほほ笑むシーンに説得力がありました。そして、とことん勘違いした“正義感”という実に寂しいそして侘しいテーマなどは、もしかしたら“現在”を切り取っている可能性がある。その可能性には注目しておきます。

藪下雷太監督の「わたしはアーティスト」は、自撮りする孤独な女子学生が主人公。この侘しさにも、先述の作品とつながるものがありました。プライベートフィルムをつないでいるだけのような感覚が、とても侘しい。しかし作品としては鑑賞できるかどうかぎりぎりのラインだと思います。主人公が一人で踊る部分だけ、ちょっと気を引きました。どうもこの俳優さんはダンスをやっていたらしい。そこだけが見所です。

Bプロに入って最初の古川原壮志監督の「なぎさ」が僕にはいちばんでした。プールサイドで同級生の水泳授業を見学する男女の会話と、プールの雑音がかぶさります。二人の顔をほとんど見せず、背後からのフィックスショットが中心。男子生徒は“泳げないから”と見学、女生徒は理由も名前も明らかにしません。

しかし途中で女生徒が、“私がいなくなっても…”と語るあたりで背景が見えてきます。そして男子生徒の日常映像がかぶさり、机の上に花瓶が飾られているのを机に突っ伏した男子生徒が見ていたりする。そして場面変わって、その男子生徒が泳いでいる。プールに上がって腰を下ろすと、隣に先ほどの女性徒。そして同じ会話が繰り返され、女生徒が消えます。この情感がなかなかいいわけです。

司会の岩崎友彦監督が上映後、“あれはどういう意味ですか?”と質問したので、僕は“野暮だなぁ”と遮ってしまいました。会場からは僕に同調する笑いが。実は、僕は泳げないもので、ずるをしての見学はしませんでしたが水泳の授業は苦手でした。だから男子生徒が泳げるようになって、隣に彼女が座っているかのごとく話すシーンは、実に味わいある場面でした。それに解説を求めるなんて!

あとの2本は、6月のグランプリ作品「笑え」を作った太田真博監督の「園田を元気づけてやろう的な」と、7月のグランプリ作品「お父さん、娘とギターを買いに行く」の加藤行宏監督の「人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女」(写真2)ですが、僕は「笑え」のフェイク・ドキュメンタリー方式が嫌いだったので、今回も似たタイプのためスルー。「笑え」のときみたいに、ワンカメ長回し的嫌味ではないのですが、細かくカットを割ったことが今度は押しつけがましくつまらない。

加藤行宏監督の「人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女」は、題名ですべてを説明してしまっているようで残念でした。こういう説明ではなく、女のすごさを映像化してほしかった。手堅く作品にまとめ上げるという方向よりも、作品的にまとまらなくても観客にぶつかってくる何かが欲しいのです。つまり映画を知らない舞台女優という役柄を、ヌーベルバーグを知らないという会話で表すのは安易に過ぎる、と僕は思います。

ということで、僕は「なぎさ」をベスト作品として推しました。そしたらなんと、最高得票数を獲得してグランプリに。僕は自分のベストとグランプリが2か月連続して一致してたため戸惑ってしまいました。終了後の打ち上げではプロデューサーの方と同テーブルとなり、いろいろと製作事情が伝わりました。ダメな日本を腐しても、状況は何も変わらないので、その中で作り続けるしかないのですけど。
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