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2017年06月27日13:55

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【バレエ】 新国立劇場バレエ 「ジゼル」 (26日)


「ぱろ的には 『ふ〜ん』 だと思うけど」 と、お師匠さま。

「『バレエ・スプリーム』に出演予定だったラムさんが降板だって」

...読まれている。(笑) でも、なぜそのようなことをわざわざ?

「マクレーくんの決めた代役が、ヘイワードさんと金子さんだよ!」

...ピンポイントでツボを突いてくるなあ。(笑)

ラムさんのファンには悪いが、
彼女にこだわりのない人にとって、これは朗報と言える。
2人はロイヤルの未来を担うであろう逸材だからだ。
私が初めて観た時からは少々間が空いてしまったので、
現状は不明だが、どうか順調に育っていますように。


週末のK公演に向けて気分を盛り上げようと、
「ジゼル」の映像をBGM代わりに流し始めたら、
うっかり観てしまった。マリインスキーとロイヤル、
そしてミハイロフスキー。

しかもつい先日、ボリショイでも観たから、
最近良くなったよ、と我が師も太鼓判を押す、
新国の舞台も気になってくる。

ダメ元でチケット・サイトを覗いてみたら、
月曜日に1席だけ、希望席が残っていた。
これはもう、席が呼んでいるに違いない。(笑)

というわけで、急遽有休を取り、久しぶりに初台へ足を運んだ。
なぜ有休かと言うと、開演時間が1400時だったからだ。
変な日時だな、と思いつつもポチってしまったが、
「団体向けの日だね」というお師匠さまのコメントに、
改めてサイトを見直せば、たしかにそう書いてある。

団体と同席するのは初めてではないし、
むしろベテランのバレエ・ファンや、
いかにもバレエ倣ってます風の生意気そうなちびよりも、
マナーは良いから構わないのだが、
今回は想像していた以上に人数が多かった。

新宿駅の京王新線ホームから車内、
劇場前の広場、中劇場入り口まで、
制服姿のJK(JCもいた?)で埋め尽くされている。

男にはろくでもない奴が多いから、
つきあう時は気をつけるんだよ、という教訓として、
「ジゼル」は丁度いいと言えば丁度いいか。(笑)

今でこそ男性客も増えたが、昔は女性客が圧倒的に多く、
初期のKバレエ公演など、
自分以外男性客はいないんじゃなかろうか、という時もあったから、
臆することなく彼女たちの間を縫うように歩んだが、
気弱な男性なら回れ右しそうな光景だった。
人間、何事も慣れである。(笑)


私の観た日の主役は、
木村優里さんと渡邊峻郁くんの、
新国ニューカマー・ペア。

新国ファンには語るまでもないのだろうが、
一応不特定多数を対象に書いているので簡単に記すと、
木村さんは、橘、新国研修所出身の若手で、
2015年にソリストとして入団、現在もソリストだが、
後述の様子からすると昇格は近いだろう。

小顔で目鼻立ちのはっきりした、美少女的風貌のせいか、
声援の様子からすると痛いファンがすでに付いているようだ。

最初は特に感銘を受けなかったが、
物語が進むにつれて次第に動きが良くなってくる。
ベテランでも冒頭は緊張するというし。

高い跳躍や高速回転を誇るわけではないが、
足音は静か、おつりもなく安定した技術の持ち主で、
手足を大きくしならせ、上体の表情も豊かな、私好みの踊りをする。
加えて演技力、感情表現にも優れ、
言葉と感情が踊りや仕草からダイレクトに伝わってくる。

他の日を観ていないので、もしかしたら団の演出かもしれないが、
公爵たちに飲み物を提供するシーンでは、
衣装に見とれるあまり公爵に注ぐのを忘れてしまったりと、
なるほどと思わせる工夫もあった。

何気ない仕草も自然で、驚く場面では思わず声が出てしまうなど、
真摯な役作りには好感が持てる。
もちろん、鐘の音に続く安堵と悲しみの表現には泣かされた。

今後が楽しみな踊り手を発見した気分だが、
気になるのは手足の細さ。
腱や骨に負担がかかっていそうで心配になってくる。
ハリウッド・スターのような「見た目」筋肉は、
ロケットの燃料を運ぶための燃料のように、
バレエ・ダンサーにはデメリットも生むので必要ないが、
適度な筋肉は軟骨と腱のサポーターだ。

滑らかな動きが一瞬途切れたりするのも、
筋力が足りないからだろう。
またいくら細身が身上のバレエ・ダンサーといえど、
見た目が骨格標本ではヴィジュアル的にはマイナスである。

相方の渡邊くんも期待の若手で、
モナコ公国アカデミーの出身、
2016〜17年度からソリストとして入団、つい先日昇格し、
来年度からはファースト・ソリストとして舞台に立つ。

彼も後になるほど調子を上げ、
アルブレヒトのあの過酷な足技を平然とこなし、
ヴァリエーションでは大きな拍手をもらっていた。

ただし演技の方はいまひとつで、
特にバレエ独特の品の良い動きに欠けるのが気になる。
冒頭、ウィルフリードを振り払う仕草が妙に乱暴で、
その後も歩く姿などが「一般人」なのだ。

海外で学び、ゲスト・コーチとしてテューズリーさんの名前もあるのに、
なぜだろう(お墓へのマント掛けを期待したが、それもなかった)。
バジルやフランツなら許されるかもしれないが、
ジークやデジレはだめだ。注意してくれる先生はいないのだろうか。

逆に演技で目を引いたのが、ハンス役の中家さん。
回転は軸が太く、ぶれて傾いだり、着地で姿勢が乱れるなど、
踊りの技術にはまだ改善の余地があるが、
1幕の演技はKの堀内くん、石橋くんよりメリハリがある。

冒頭、墓地にやってくる場面は、
悲しげに歩いてくるだけなのでもうひと工夫欲しいが、
2幕の中盤、いたぶられる場面は良かった。

ミルタの寺田さんは、
演奏の速いテンポに負けない気迫を感じたが、
精霊ではなく運動会の応援団長といったノリで、
動きも直線的というよりは直角。(笑)
ウィリたちをまとめているのではなく、力ずくで押さえつけていそう。

筋力はありそうだし、
耳を貸してくれるバクランさんなのだから、
芸監と相談してテンポをゆっくりにした方が、
ウィリらしくなるのではないだろうか。

ペザントの奥村さんと柴山さんは、
やや小振りではあるけれど、
勢いがあって気持ちの良い踊りをする。

群舞は、期待を裏切らない美しい精霊たちだった。
足音や揃い具合も、Kほどではないが、
ボリショイよりは静かで揃っていた。

以前観た時より個々の動きも大きくなっていて、
1幕の芸達者ぶりも加味すると、
S席1万チョイという低料金は十分武器になる。
(以前は安かろう悪かろうだった)

ファーストとセカンドに力量差があり過ぎたのも、
初台に足を向けなくなった理由のひとつだが、
26日の舞台は、セカンドのはずなのに十分見応えがあった。
こうなると、小野さんや米沢さんの日も観たくなる。

ちょっと気になったのが、
帰り際に聞こえてきた新国ファンたちの会話だ。

木村/渡邊組は、前日の日曜日にも踊っていて、
新国のダンサーはひ弱、という印象を持っていたから、
それだけでも大したものだと思うが、それは置いとくと、
2日間通しで観た会話主たちによれば、
出来映えがまったく違ったらしい。
(月曜日の方がかなり良かったようだ)

月曜日の舞台は、たしかに足を運んだ甲斐はあったし、
楽しみもしたが、個人的な出来映え尺度は、
「中の中」か「中のやや上」くらいなので、
これよりレベルが下がってしまうと、
いくらチケット代が安くても、観るのはためらってしまう。
月曜日と同等ないしそれ以上がデフォとなれば、
初台通いも再開したくなるのだが。

オケはバクランさん+東フィル。
行く前は不安要素のひとつで、カメラも入っていなかったが、
意外にも迫力のある良い演奏だった。
やれば出来る子なんだよなあ、東フィルは。(笑)
いつもこうだと嬉しいのだが。

編曲がオーソドックスなこともあり、
バクランさんの熱い指揮ぶりともマッチしていた。
ダンサーに寄り添うような井出さんの指揮ぶりは大好きなのだが、
バクランさんはさらにダイナミックさもあり、
演奏を聴いているだけで情景が目に浮かぶだけでなく、
キャラクターの感情まで伝わってくる。
もちろん、彼の意図を汲んでくれる優れた演奏家がいたからだが。


ネット検索で釣れる観覧感想には、モノサシが短かったり、
妙なバイアスがかかっているものが多く、
専門誌やプログラムの解説者、業界ブロガーたちも、
提灯記事を書かざるを得ないから、いまひとつ信用できない。

だが、バレエが大好きで、劇場に日参する我が師の、
縦横のみならず三次元に広がるモノサシは半端なく巨大で、
しかも自腹での鑑賞だから、信憑性は比較にならないほど高い。

今回の観覧で、改めてそれを実感した。
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