劇場入り口でもらったチラシを眺めていたら、
いくつか気になる公演があった。
ネットではすでに話題になっているが、
来年11〜12月にマリインスキーが来日する。
招聘元はジャパン・アーツで、
詳細の発表は来年春とのことだが、
演目は「白鳥」「ドンQ」ほか、とある。
また来日が予定されるダンサーは、
テリョーシキナ、コンダウーロワ、スコーリク、シャキロワ、
シクリャーロフ、キム、アスケロフ、パリッシュほか。
...キナ様の名前がない。(T T)
モスクワ・クラシックの予定も明らかになった。
チラシに載っているのは今年12月8,9日、場所は上野で、
演目はカサートキナ版の「くるみ」。
招聘元は光藍社、さりげなく値上げしているので、
薦める手前、上達してくれていないと困るのだが、(笑)
4年前に観た時は、上手い人もいるし、
変わった演出の面白い「くるみ」だった。
WEB先行発売は来週。
ファジェーエフさん効果がどこまで浸透したのか、
ちょっと気になるヤコブソン・バレエは、
今年年末から年明けにかけての来日で、演目は「白鳥」と「くるみ」。
招聘元はインプレサリオ東京、8月上旬に一般発売が始まる。
待望しつつも前回はちょっとがっかりしたシェフチェンコ(キエフ)、
東京近郊の予定が明らかになった。
12月24日の「くるみ」に始まり、
26日にウクライナ国立歌劇場創立150周年記念ガラ、
年明け3日に新春ガラ、4,5日「ドンQ」、6〜8日「白鳥」。
ゲストは毎度お馴染みのサラ坊で、
フィリピエワさん、カザチェンコさん、
ニェダクさん、ヴァーニャさんの名前はあるが、
今回も戦力は3分割の気がする。
光藍社も、ダメもとでいいから、一言言ってくれないだろうか。
来週から先行発売が始まるが、今回は観るのをちょっと減らそうと思う。
先日の「饗宴」映像を観て、興味が失せた牧の「眠り」だが、
ゲストとしてニーナさんのジョージアから、
ヌツァさんとフェドーロフさんを呼ぶという。
「ニーナ・ガラ」を御覧になった方は覚えていると思うが、
ヌツァさんは世界に通用しそうな、目を引いた踊り手のひとり。
牧さんもすでに80を超えているが、
ダンサーの力量を見抜く眼力は衰えていないようだ。
表題公演、互いに都合がつかず、
我が師は初日カプツォーワさんの日のみ、
私は3日目クリサノワさんの日のみを観てきた。
ザハロワさんの日はどんな様子だったのだろう、と検索していたら、
人がせっかく名前を伏せていたのに、
わざわざ名乗りをあげて絡んできた、(笑)
例のパリオペ・ファンの観覧事前日記がひっかかった。
ボリショイを観るなら「看板ダンサー」ザハロワさんという、
ある意味ぶれないスタンスには、ちょっと感心した。(笑)
それにしてもザハロワさんの人気は凄い。
もちろん私も、彼女が初めて日本に来た時の舞台を観るや、
躊躇うことなく「贔屓リスト」に登録したし、
パリオペと違い、彼女への賛辞には、おおむね首肯できる。
しかしいま、彼女のファンを名乗る人たちのうち、
彼女の「バレエ・ダンサーとしての個性」を目的に、
劇場に足を運んでいる人は、はたしてどのくらいいるのだろう。
「ブランド目当て」は、なにもパリオペ・ファンの専売特許ではなく、
「ボリショイ・ブランド」「ザハロワ・ブランド」に群がる人々も当然いる。
そんな中身を観ない人々にいくら褒め称えられても、
ザハロワさんは嬉しくないんじゃないだろうか。
またまた余談が長くなってしまったが、
表題公演を観終えた直後の率直な思いは、
「ロシア・バレエを観た気はしたけれど、
ボリショイを観た気はしなかった」(我が師談)
「ボリショイよ、おまえもか!」(その弟子談)
初日はオケのミスタッチも目立ち、
敢えて語りたい踊り手は、主役のオブラスツォーワさんと、
ハンスのサーヴィンさん、ドゥ・ウィリの2人くらいだったそうだ。
群舞も足音が耳に付いたという。
私の観た3日目は、オケも群舞もそこまで酷くはなく、
オケに関してはロシアらしい荒っぽい演奏を楽しんだが、
群舞は一昨年のシェフチェンコ群舞の方が、
はるかに静かで優雅、統制感もあったし、
統制感、ダンサーの鍛え具合で言えば、
今のK群舞の方がレベルは上だ。
ペザントやミルタも悪くはないし、
若いだけに今後が楽しみな踊り手だとは思うが、
「ボリショイ」の看板の下で観るには物足りない。
総じてダンサーたちは若く、マリインスキー同様、
日本(海外)公演を、若手の練習台にしているのは見え見えで、
(だから「ボリショイよ、おまえもか!」)
かつてのキラ星ひしめく圧倒的な迫力の舞台の面影はなかった。
もっとも、その予兆は前回の来日公演で感じていたから、想定内ではある。
ちなみにミルタの代役コワリョーワさんは、
写真の愛らしい笑顔から勝手に小柄な人だと思い込んでいたら、
思いのほか背が高かった。(笑)
しかも小顔で首も長いから、さらに背が高く見える。
動きはまだ雑なところもあるが、腕使いは柔らかく、
長い手足を存分に生かした、
大きくはじけるような踊りは観ていて清々しい。
大きなジャンプ後の着地音はうるさいが、
毎回音が大小し、音質も変化しているところをみると、
彼女なりに消音すべく試行錯誤しているように思う。
演技も先生に教わったことをそのまましているのでなければ、
拒絶の仕方をジゼルと男性で変えたりと工夫はしているようだ。
ミルタ(ウィリ)の定番通り基本無表情だが、
ジゼルと対峙すると、
自分の辛い過去を思い出すかのような遠い目になり、
アルブレヒトを見れば、責めるというよりも、
なぜ自分にはここまで思ってくれる人がいないの!?
と拗ねているようにも見えなくもない。(笑)
クリサノワさんは、前回の来日公演で注目したひとりで、
ザハロワさん、アレクサンドロワさんと言う主軸が、
直前の怪我や体調不良の影響から、本人比でいまひとつだった中、
攻守走を高いレベルでバランスさせていたのが印象的だった。
今回の来日でも、
安定した技術や豊かな表現力にはさらに磨きがかかっていて、
はにかむ内気な少女から一転する狂気の表現は見事。
足音も静かで、浮遊感いっぱいの動きはウィリそのものだった。
ラントラートフさんは、仕草が子供っぽく、
バチルド役のジャルコワさんが落ち着いた感じの美女だから、
並ぶと年上の婚約者との政略結婚という背景が見えてくる。(たぶん。(笑))
ゆえに彼の本命はジゼルで、
若さ故、将来の事はあまり深く考えていないがための悲劇、
というストーリーが成り立つ。
ジゼルが亡くなったあとの悲嘆具合は涙を誘うが、
ラストはルジさんやマラーホフさんのように、
一生彼女の面影を背負って生きます、ではなく、
助けてくれてありがとう、だったから、泣けなかった。
(クリサノワさんの演技には泣けた)
ハンス役のサーヴィンさんは、我が師推奨の踊り手だけあって、
1幕のジゼルを想う演技や、ミルタに操られる踊りなど、たしかに見応えがある。
コルプさんから妖しさ成分を除いた二枚目なのと、
初日のツヴァルコさんが王子にしては粗野な雰囲気だったから、
初日は王子役とハンス役を交代しても良かったのでは、とお師匠さま。(笑)
さて、白鳥の群舞たち、どこまで頑張ってくれるだろう。
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