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2017年01月02日20:23

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おせちとスペースケーキ



年末年始は日頃とは違う喰い物で日を過ごすことが多い。 殊に大晦日、元旦となると日蘭混交の食生活となる。 今年は初めてアムステルダム・ホテルオークラでシェフをしていた夫婦が作ったおせち料理を試し、大晦日の夜のパーティーでは義弟の家に持ち寄った様々な美味いものに交えて自分の作ったちらし寿司、稲荷寿司をシャンペンで喰いよちよち歩きの子供たちも含めて30人ほどでカウントダウンをしたのだった。 大きな長いテーブルにもう何年も皆が作り持ち寄った同じほかの料理とともに置いておくと今ではそれが何なのか材料や喰い方を説明せずとも偶々訪れた新顔にも「Sushi]として普通に扱われるのだがオランダ人には古い日本のおせちは分からないから造らない。 もし出したとしても材料、調理法、そこにある由来などを説明するのに日が暮れてそのあと彼らがそれを口にしたとしても普通のオランダ人の舌にはそれがどうした、というほどの理解できない系統のものだ。

おせちが外国人には慣れてはおらず理解しがたいものだとしても日本国内でも若者が昔ながらの煮物、蒸し物に親しんでいるかといえばそうではない。 ただ野菜の煮物だけのおせち料理で満足するかと言えば60年代ごろからの若者の食生活の変化をもたらした脂肪、油、肉文化の中で育った若者の舌には物足りないものとなっていることは確かだ。 それに肉料理は材料に留意すれば調理は煮物に比べて簡単だ。 昔からの煮ものを伝授する婆さん、オバサンたちが去り、今残ったものは新聞広告で何か月前かから注文する名のある「料亭」のものかコンビニのおせち料理パッケージであるのだからそこには海老、蟹、肉類の調理で値段をブーストしたものが豪華さだけみせるものとなっており40代の主人夫婦の家族であればそういうものも取り寄せて主婦が慣れてはいない幾つもの細かい煮物をいちいちつくる手間を省くという手もあるけれど20代の若者の舌にはおせちの煮ものはもう異文化となっていて取り立てて今更それがどうだというものではないのではないか。 それが長くヨーロッパに住んでいる老人の想像であるのだがその想像も的の中心からは大して離れていないように思う。 

子どもの頃田舎の農家で育っているので煮物、おせち料理には親しんでいる。 近所の親戚からは法事や祝い事、この時期になればそれに要る材料が集まってきて下ごしらえがなされ大きな金盥やバケツに準備されるのを見ている。 一家族ですべてをまかなうというのでもなくある材料に関しては何家族分もの量を煮炊きするということもあるからそうなるのだ。 家の女たちは大抵大晦日の紅白歌合戦を斜めに見ながら材料を調整し最後に塗りの重箱に御重ねとして完成してから「ゆく年くる年」を見ながら年越しそばを喰う。 そのとき大人たちは重箱に入りきれなかったものを酒で摘まむというのが習いとなっていた。

新年になったときは皆でシャンペンをグラスで一杯だけ飲んだけれどこの夜はアルコールを混ぜずアイリッシュ・ウイスキーだけを口にしていた。 あるときにテーブルの上のブラウニー・ケーキの上に「Space Cake」と書かれた紙が置いてあるのが見えた。 5,6人のこどもがいるのだから注意しろと言う意味でもあるのだが久しぶりだ。 もう30年以上になるだろうか目の前にあって口にしたのは。 嗅いでみるとマリファナ、カナビスの香りがするから確かだ。 2cm四方に切って喰った。 しっとりとしたブラウニーに微かなカナビスの香りがして味には変わりがなかった。 そのまま皆とゲームをしたり談笑したりして元日の朝5時ごろまで過ごしたが目立った変化はなかった。 それまでにウヰスキーを4杯ほど飲んでいて酔いは回っていたのでそれ以上のものはなくゲームの推移で馬鹿笑いはあったもののそれは周りと同じもので周りも喰っていたものがいるので同じようなハイになっていたのかいずれにせよ日頃の陽気なパーティーだ。 朝方には皿の4分の1ほどが残っていたのだが、11時ごろ起き出して残った寿司をビールで喰ったあと濃いミルクティーを作ってスペースケーキをまた一片喰った。 このときはブラウニーのチョコレートの甘さに惹かれたからだ。 起き出してきた家族たち10人以上とバカ話をしながらワイワイとテーブルを囲みブランチをしてから4時ごろ15kmほど運転して帰宅した。 友人たちとどこかで年を越して戻っていた娘と3人で夕方残ったおせち料理を日本酒で喰った。 家人は一緒になってほぼ35年、それまで気持ちが悪いと口にしなかった酢蛸を初めて食べて美味いと言った。

今回初めてだったものが二つあった。 海外で作られた日本のおせち料理と30年ぶりのスペースケーキだ。 アルコールが入っていたのでスペースケーキの効き方がどうだったかはっきりわからない。 オランダに来た当初マリファナを紙煙草に混ぜて吸引したことは何回もあるけれど値段の割には効かなくてアルコールの方がいいとして止めてしまった。 ただ一度ハッシを友人たちと回し飲みをしたときは効いた。 だれかの運転する運搬車のバンの中に7,8人が車座に座り回し飲みをして知り合いの造形作家の展示会のオープニングに出かけたときだ。 気分が良くなり皆理由もなくヘラヘラゲラゲラ笑っているだけだった。 会場に着き各自バラバラになってからはどうしたかは覚えていない。 芸術家たちは纏まるはずのないものたちばかりだからすぐに勝手に誰かとまたどこかに行くかどうかしたのだった。 自分がどのように自分の町に戻ってきたのかも覚えていない。 その覚えていないと言うのはハッシが効いていて忘れたと言うのでもなく会場では正気に戻っていたのだと思うし誰かの車に同乗して戻ってきたのだろう。 どういうわけかそれからあとはいくらでもカナビスやハッシは吸引する機会があったのにやっていない。 自分の子供たちにやめろといったこともないし高校の頃から煙草を吸い医者となってもタバコを止めない娘にはマリファナの方がいいぞ、といってもマリファナは何もしたくなくなるからやらない、という。  ただこの30年の間にマリファナの濃度が10倍近くにも上がっていると聞くので自分たちの若い時と同じように扱うのには留意する必要がありそうだ。 けれどその割にはスペースケーキの効き目は穏やかなものだったようでもある。
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