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2016年09月25日20:23

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久しぶりの公民館



オランダには中規模の町以上には殆どのところに Volkshuis と呼ばれる公民館がある。 Volks (大衆)の Huis (家)というのが直訳なのだがその起こりはベルギー、オランダでは明治、大正時代に産業革命により都市部に生まれた大量の労働者たちの労働運動の中から生まれた福利厚生、教育、余暇、娯楽を目的とした施設がありその代表的なものがこの公民館だ。 普通の町や村でも「村の家」、「近所の家」、「クラブの家」というような呼び名の施設がありそれも一般的に公民館とよばれて差支えないものだ。 ただ、VOLKSHUIS というのは労働運動から派生したものであるから他の「家」に比べるとその社会意識、組織性に歴史と一貫した継続性がみられ各地方自治体との行政面においては関係が密であるというような特長がみられる。 現在では文化行政の一部となり教育・文化をサポートする様々な活動の場となっている。 例えば移民にはオランダの永住権を得るうえでオランダ語は必須でありその資格試験のための語学教室がある。 それだけではなく一般市民のための様々な語学教室、様々な料理教室を含めた文化教室などが長年組織されている。 もう35年ほどまえ当時住んでいたグロニンゲンの市民大学で乞われ日本語を教えたことがある。 80年代当時テレビで放映された「おしん」や「ショーグン」に代表されるようなの日本ブームの到来により日本人がいない北の州都で俄か日本語教師をやるはめになったのだがその場所がやはり労働党の拠点の一つである都市の公民館だったのだ。

今の町に越してきて北の町と比べると北とは違いここは今の中央政治と同じく保守・労働党の連立政治の相を示し公民館の組織力はかなり協調的で緩い。 この10年ほどの財政緊縮のあおりを受けて組織の合併、コースの授業料アップ、講師の報酬削減、等々、その中で働くもの、受講する者両方に不都合を生じさせている。 けれどそれは官民ほとんどすべての組織で見られる現象であるからここだけ特別ということもなくそれでも日々様々な活動が続けられている。

家人はこの10年以上毎年この時期に開かれるこの町の美術協会主催の展覧会に出品しており去年までは美術好きの散髪屋の店を借りて展示していた。 それが事情によりその散髪屋は店を畳んでしまっため今回この公民館が会場になったということだ。 この公民館には少々の思い出がある。

造形作家である家人は全国組織で移民の子弟、特に少女たちに家庭で役立つ技術を遊びながら身に付ける教室の講師を何年かやっておりその教室がこの公民館だった。 学校の科学で教えられる原理を実際にどのように家庭でノミやペンチ、トンカチやはんだごてを使って役に立てるか、ひいては女性が他に頼らず自立の道を歩めさせようとするものでそれは文科省の意図にも沿うものだった。 その関係から自分にもまた日本語教師の口が廻ってきてそれを5,6年やっただろうか。 その後求められるままに寿司教室を3年ほど、その間に大学生の息子が夜間のコンシェルジェのバイトをしたり、とよくここに出入りをしていたものだが自分の定年に沿ってそれらも止めてしまってからここにくることはなくなっている。 初めはまだ学校をでたての青年がコンシェルジェとして入り、誠実で良く働く好青年だとおもっていたものが今ではここの事務長となっていたり町のジャズ同好会の世話人がここの理事長であったりとこういうほぼボランティア組織では町のあちこちで見知るひとたちが交差する場所でもある。 

ここで今回展示されるのは家人と20年ほどオランダに住んでいるイラク人の女性画家、ポートレートを撮る女性写真家の3人で土曜の青空マーケットに行ったついでにぶらぶらと歩いてここに来れば少々建物の内部が改造されているとはいえ見知ったところにそれぞれの作品が並んでいた。

その部屋の隣に、詰めれば200人以上入れる古風な舞台のあるホールがあって日曜の昼にはこの美術フェスティバルの景気づけにビッグバンドの演奏があるのだそうだ。 近くのジャズ・カフェーで時々演奏するドードレヒトの開業医が自分のビッグバンドで日頃のレパートリーを派手にやるのだから楽しみだ。 ホールの美しい木のフロアでは日頃様々なダンス教室が行われているのだからここで生のビッグバンドでダンスというのも悪くない。
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