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2016年09月13日06:02

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Robert Rook Trio;  in Twee Spieghels



水曜日、少々気が重い帰省からスキポール空港にもどればメールボックスにロバート・ロークから金曜にハーグでセッションをするからと案内が来ていたのに気が付いた。 場所は2年前に出かけたハーグのジャズ・カフェ Murphy's Law だ。 このカフェは日本でも人気のあるギターのイェッセ・ファン ルラーが10年ほど前にライブ録音しそれが優れたアルバムになった場所でもある。 2年前のものは新進のリトアニア出身の歌手ルギール(Rugile Daujotaite)をフィーチャーしたものでその時の様子を下のように記している。

2014年9月

http://blogs.yahoo.co.jp/vogelpoepjp/64273731.html

2年前に比べると今回のルギールの成長が著しいことに気が付いた。 ロバートと共演してあちこち周り2か月ほど前には彼女の出身地リトアニアへのツアーも行ったとか、ハーグの音大を首席で卒業後の2年間セッションを実際に各地で経験して表現力をつけたことに目を瞠った。 2年前の上記のコンサートではロバート・ロークのピアノトリオではなかったけれど今回のものは下に記したときのかれのトリオだった。 

2014年2月

http://blogs.yahoo.co.jp/vogelpoepjp/63893798.html

2013年11月 

http://blogs.yahoo.co.jp/vogelpoepjp/63720497.html

オープニングはピアノ・トリオでそれに続いてパンチの効いたスキャットを利かせるルギールの「ニカの夢」、カッコーに材をとったリトアニアのフォークソング、ミュージカル「サウンドオブミュージック」から「私のお気に入り」を独自の歌詞をつけたもの、サンバ、「ワンノートサンバ」、ホイットニー・ヒューストンのもの、ジュディ・コリンズの「ボースサイズナウ」、スタンダードの「ザッツオール」で締めその後は集まったミュージシャンとジャムセッションをするなど楽しいものだった。 アイルランドを歩いてギネスとマーフィーを晩ごとに飲んで楽しんでいたのだがここでそのマーフィーをその名のカフェのタップで飲めたのはオマケだった。 そのときピアノから日曜に下記と同じセッティングでお前の町で演るからと聴いて時間の融通がつくなら行くと約し午前1時前のほとんど車通りの無い街から20分ほどで家に戻ったのだった。

そして、

2016年 9月 11日 (日) 午後4時半 − 6時半

at Jazzcafe Twee Spieghels in Leiden, The Netherlands

Piano; Robert Rook
Double Bass; Thomas Winther Andersen
Drums; Bart van Helsdingen

まだ夏を十分引っ張っている日曜の午後4時半、ジャズをまともに聴こうという人間はいない。 バカンスなのだ。 入ればカウンターに2人、外のテラスに7,8人、小さな舞台に向かうテーブルには一組の若いカップルがビールを飲みながらチェスをし、でっぷりとした中年女性が一人ワインを傾けながら聴いているだけだった。 正面に坐るとそれにつづく20ほど坐れる後ろのスペースには舞台に背を向けた人が2,3人いて、つまりまともに聴いているのは中年婦人と自分だけなのだ。 夏の日曜午後ではカフェーはこんなふうでこのカフェーがどんなカフェーかは関係ないのだ。 演奏者には聴衆が多ければ多いほど助かるのだがいなくともそれがどうということはない。 セッション自体がジャズの場であるから好きなように自分たちの音楽を自由に解体・構築・実験・試行を聴衆を斟酌せずできる機会なのだ。 それに接することが出来たのは刺激のある経験だった。

上記アルバム Momentum からの数曲をテーマに様々なバリエーションを披露する。 R・Rの好みであるハービー・ハンコックの「ドルフィンダンス」もハンコックの「ヘッド・ハンターズ」も主題はほんの数パーセントであとはインプロヴィゼーションとなり、例えばこの3日で彼のドルフィンダンスを3つ聴いている。 もう一つはR.Rの You Tube で聴かれるものだ。

https://www.youtube.com/results?search_query=Robert+Rook

インプロヴィゼーションではそのとき頭に去来するイメージをそのまま指先で実現させるのであるから自由に「遊ぶ」プレーするという現場に我々は立ち会うことになる。 主題のメロディーは皆に知られたもの、スタンダード、素材であって、それをどのように料理するかが問われ創られた料理として結果する。 この日のように題名を言わず各々が持ち出してくる「素材」をその場の合意で創り始めると素材が見えず途中でほんの一瞬顔を覗かせその香りで素材が何か分かると言う具合だ。 

そんな具合にして我々は素材がハンコックの「処女航海」であったり「止まないドラム」であったりマイルスの「ソー・ファット」であったりするのが分かる。 この日の演目はR・Rが用意させたフェンダー・ローズのエレキピアノに触発されたものだ。 スタインウエーや安物のアップライトピアノをコンサート、録音で使うけれどエレキ・ピアノは稀であり同じものを同じように弾いても全てフェンダーローズの音になり我々が聴いた70年代が現前するから日頃とは趣を変えファンクが混ざるようでもある。 だからウッドベースは殆ど使われずフェンダーベースが否が応でもそれに沿って響くのだ。 そのときドラムスのシンバルや鐘の響きが効果的に70年代から現代であることを覚醒させる。 3年前の新譜「Momentum」は録音が端正で折につけてイヤプラグから聴いているのだがライブでは自由さ荒々しさ、若しくはイマジネーションの奔放さが体験されるからこれが次のCDに結実されれば今迄のCDで聴いてきたことの枠から外に出て自由奔放に「遊べる」のではないか。

ドラムスのバートには老いたゴールデンリトリーバーがいて何処にでも連れて行く。 広い舞台であればドラムスの横に毛布を引いてもらってそこに横になり45分のセットが終わり休憩になれば背伸びをしてバートと一緒に外の空気を吸いに周りに散歩に出る。 ここでは足の踏み場もないほどの狭い舞台だから自分のテーブルの下にバートの古いオーバーを敷きそばの皿に水を張り寝転べるようにしてあるのだがフェンダーローズピアノの下がいいのかそこにいる。 ロバートがピアノのペダルを操作するのに差しさわりがあっても犬は斟酌しない。 どれだけ頭の上で音の狂騒が渦まっていても老犬はピクリともせずセッションが終わるのを待っている。 犬にはこの音楽はどのように響いているのだろうか。
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