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2016年06月17日08:36

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【バレエ】Kバレエ「眠れる森の美女」(11日ソワレ/12日) その2

NBS公演「バレエの王子さま」(笑)に、
王子がひとり、追加された。
http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/cat16/post-650.html

我が師によれば、見た目は及第点だが、
既出4名と比べてしまうと、力量には「?」マークが付くようだ。


昨夜から英ロイヤルの日本公演が始まった。
さっそく初日を御覧になった我が師から短信が届く。

「(演目がR&Jだから)さすがに良かったよ。
主役二人も良かったけど、今回惹き付けられたのはティボルトの演技。
マキューシオよりティボルトばかり観てしまった。

カスバートソンさん、グランジュテでも足音がしない。
小柄な印象ではなく長身のイメージだったから、
観る前はジュリエット? と思ったけど、
溌剌として元気で可愛かった。
ロミオと出会ってからは、次第に幼さが消えていくけど、
初々しさはあるし、さすがの演技力。

ボネッリさんは久しぶり。
相変わらず滑らかで美しい躍り。
優しくロマンティックなロミオだった。」

かつてのパートナー、ボネッリさん主演の日だからか、
都さんの姿も会場にあったそうだ。

それで何回御覧になるので? と水を向けると、
てへ、と視線を逸らす我が師。(笑)

ロイヤルと言えば、
平野さんと高田さんのプリンシパル昇進、
平野さんはアコスタさんの後任人事選考で、
バレエに対する真摯な姿勢が評価されたのだろう。

高田さんは「ついてた」だろうか。
コジョカルさんほか実力者たちがもう数年残っていたら、
有望な若手が育ち、状況は変わっていただろう。

理由はどうあれ、どのような分野でも、
称号を得るのは目標ではなく、新たな始まり。
2人とも、肩書きに負けないよう、
さらなる努力をするだろうから、
むしろこれからが注目かもしれない。


去年見たタッチキン版「眠り」では、
眠りについたオーロラを残し、
両親が城を去って行く演出に驚いたが、
あれはペロー版(原作)ではなく、
バジレ版から得たアイディアのようだ。

また初演台本によれば、カラボスの呪いは、
オーロラを殺すのではなく眠らせるだけで、
リラ精の魔法は王子の接吻により目を覚ますという、
呪いの解除キーを用意するものだった。


過去の感想で何度も書いているように、
Kはダンサーの層が厚いから、キャスト違いで観ても、
他のバレエ団のようにファーストとセカンドの差を
意識することはほとんどなかったが、
意外にも今回は、それを顕著に感じた配役だった。

とは言え2回とも十分楽しんだし、
「眠り」をもっと頻繁に演ってほしいと思えるバレエ団は、
内外含めて、今はなかなかない。

配役表には、主役に続く3番目に、
リラ精をさしおいてカラボスの名がある。(笑)

ご存知の通りこの役は、シンデレラの継母のように、
男性が演じる版と女性が配される版があり、
熊版は最初、女性が演じていた。
しかし2006年の2回目ではダウエルさん(!)、
2010年の3回目ではキャシデイさんと、男性の役になった。

もちろん、2人に不満があったわけではないが、
初演時のサンドラ・コンリーさんも良い味を出しており、
Kには芸達者な女性ダンサーもいるから、
女性のカラボスも観てみたいと思っていた。

そんな想いを抱きながら配役を待っていたら、
11日マチネと12日がヘイドンさん、
11日ソワレが西成さんと、
男女のダブルキャストではないか!
これはもう、両方観るしかない。

美しくも威厳があり、表情豊かでいやみったらしい、
サンドラさんのカラボスがツボにはまっていたので、
最初は少々不安もあったが、終わってみれば、
すっかり西成さんのファンになってしまった。
あの顔芸なら、シンデレラの継母や姉たちもいけそうだ。

顔芸と言えば、山田蘭さんのカラボスも観てみたい。
しかも彼女なら、リラ精もいけるだろう。
「白鳥」の白黒踊り分けではないが、
ひとりのダンサーによるカラボスとリラ精の演じ分けは、
「眠り」の楽しみ方のひとつに十分なるんじゃなかろうか。
そのためには2回、会場に足を運ばなければならないから、
主催側も儲かる。(笑)

もっともヘイドンさんがリラ精を演ったら、
何か別の演目になりそうだが、
西成さんを上回る彼の演技は、さすがロイヤルの、
プリンシパル・キャラクター・アーティスト。

リラ精は小林さんと浅川さん。
小林さん、踊りは申し分ないのだが、存在感がまだ薄い。
表情の変化も、もっと派手にした方が良いのに。

前回は6年前だから、
経験者と言っていいのかわからないが、
浅川リラ精は、世界のプリンシパルに引けを取らない、
笑顔も麗しい、堂々たる妖精のリーダーだった。
進化した彼女のオーロラも、ぜひ観てみたい。

貫禄、威厳とも十分で、かつらも似合うキャシデイさんは、
今回は王さまのみ。カタラビュート(式典長)相手に、
いろいろアプローチするのだが、
対するヴィユウジャーニンさんのノリが悪い。

考えてみればこの王さま夫妻、
なにかあると責任を部下に押しつける、
典型的な欠陥上司。(笑)
招待客リストを作ったのは式典長の部下だし、
自身もチェックしているから、
式典長の責任はもちろん大きいが、
王さまたちも一応リストは見て、OKを出している。

責任問題は脇に置いて、3幕冒頭では、
結婚式の招待者リストを手に王さま、
「こんどは大丈夫だろうな!?」と式典長を睨む。
けれどヴィユウジャーニンさんは小さく頷くだけ。

いや、そこは、
「先日はすみませんでしたっ!」と土下座したり、
「今度は大丈夫ですっ!」と胸を張ったり、
「それはもう、言わない約束でしょ?」と照れ笑いしたり、
「あんただって確認したでしょう!」と不服そうにするなど、
やりようはいろいろあるはず。

彼はライスさんの映像、観てないのだろうか。
古典を踊るダンサーは、役者でもないと。
ロイヤルの当日券買って、勉強してくるように。

「王妃さま、膝をつくのが早くない?」と我が師。

妖精たちは人間より上位の存在であることを、
きっちり描いている版もあるが、熊版はそうでもない。
むしろ王さまの方が偉そうに見える。
ところがカラボスが現れると、その脅しに、
あっさり屈服してしまうところに違和感を覚える。

カラボスの脅威を強調したいのだろうが、
王族はそう簡単には頭を下げない。
熊さんは英王室を身近で見ていると思うのだが。

上級妖精、11日ソワレは、
國友、松岡、新居田、岩淵、矢内の5名で、揃って良い踊り。
中でも岩淵さんの愛らしさと、矢内さんの優雅さが目を惹いた。

この踊り、全員に満足感を覚えることはなかなかないので、
やはりKはレベルが高い、とほくほくしながら帰宅したが、
翌日の面子(小林、井上、浅野、辻、中村)には、
感動すら覚えた。ロシアの2流バレエ団どころか、
1流の若手より上手いんじゃないか。
さらに一言加えるなら、浅野さんの成長ぶりに驚いた。

群舞はシェフチェンコ並に足音が静かで、
北朝鮮のマスゲームほどではないが、(笑)
音楽に乗り、いい塩梅に揃っている。
動きものびやかで優雅だ。

見応えある群舞だと思ったら、
普段は役付でプログラムに名前の載る、
あの人やあの人やあの人が、しれっと混ざっていた。(笑)
こうなるとさらに欲が出て、もっと頭数がほしくなる。
「白鳥」の群舞は24羽+だが、32羽でも観てみたい。

かぶり物で顔はわからないが、
高いジャンプや鋭い回転から察するに、
カラボスの部下にも腕達者たちが配されているのだろう。

4人の王子たちは石橋、杉野、堀内、栗山の長身イケメンズ。
姫も内心、迷っていたのではなかろうか。(笑)

3幕の財宝トロワは、
11日ソワレは山本、井上、新居田の3名。
3人とも満足の踊りだったが、やはり井上さんが上手い。

12日は小林、井澤、浅野の3名で、
もう3回くらいリピートして観たかった。(笑)
はじけるような井澤くんはさすが先輩、
プロローグ同様、浅野さんは笑顔が眩しい。
その一方で小林さんはやや抑制しているような動きで、
笑顔も少ないのが気になる。

11日のお伽噺主人公は、河合白猫のデレないSぶりと、
猫よりも犬的な篠宮長猫のM具合がツボにはまった。(笑)
荒蒔さんの赤ずきんは可愛らしく、西口狼は顔が見えないのが残念。
白鳥のように優雅で美しい中村王女に対し、
益子青鳥はいつもの溌剌感がなく、ちょっと心配。
どこか具合が悪いのだろうか。

キャラダンは12日も同じ配役かと思ったら、
荒蒔赤ずきん以外一新されていた。
湊&酒匂の猫ペアは、
前日の2人より動きがダイナミックでわかりやすい。

我が師は池本青鳥に、リアブコさんの幻影が見えたという。
リアブコ青鳥は、我が師が現役最高と讃える青鳥だから、
それだけ素晴らしい出来というわけだ。

しかも相方涌田さんのフロリナ王女も良かった。
彼女はノーマークだったため、日記に名前を探したり、
プログラムの名簿欄を掘り返したりしているうちに、
素性がわかった。入団は2014年の後半で、
昨年暮れの「くるみ」ではクララを担当している。

クララは見損ねたが、
群舞の一員として何度も目にしているはずで、
いいな、と思った何人かのひとりが彼女だった可能性がある。
またひとり、気になる踊り手が増えてしまった。(笑)
ちなみに2010年のヴァルナのシニア・シルバー・メダリストだから、
歳は26〜31の間。上手いわけだ。

11日の主役は、ともに初役の佐々部さんと宮尾くん。
カラボスに後押しはされたが、(笑)
宮尾くんは「ドンQ」「白鳥」と良かったし、
小柄で華やかな見た目の佐々部さんは、
オーロラ向きかな? と思っていたので、
キャストが発表された時から気になっていた。

2人ともDVDを焼き切れるまで観たのだろう、
熊さんとデュランテさんの姿が随所に見え隠れした。(笑)
ただし役の解釈については、試行錯誤の最中のようだ。

宮尾くんは、最初はやや横柄で感じが悪いのだが、
後半それが威厳に変わっていく。
どういう王子像が描きたかったのだろう。
無理して熊さんを真似ずとも、
持ち前の誠実で優しい雰囲気路線を、
迷うことなく行けば良いのに。

そういえば、カラボスを突き刺す時、
本来は切っ先を脇の下に射し入れるところ、
彼は胸を本当に突いてしまったかのように見えた。
西成さん、大丈夫だったのかな?

佐々部さんは、1幕はイメージどおりの愛らしい姫だったが、
3幕は大人に成長し、色気が出たというよりは、
子供が媚びを売っているように見えてしまった。

誰が言い出したのか、
「眠り」は1〜3幕でオーロラの成長を描く、
とは時々耳にするが、それは違うんじゃないか。

1幕と2幕の間には100年の時の経過があるが、
オーロラからすれば一晩寝ていただけ、
16歳のままで、歳をとったわけではない。
好きな人が出来た時の、
少女の心情の変化は表現すべきだが、
別に成長する必要はない。

テクニック的には、
宮尾君は最初やや動きが重めだったが、
次第に軽やかになっていった。
佐々部さんも総じて安定感はあったが、
2人ともまだ動きが板についておらず、
ステップがぎこちなくなることも。

12日の王子、遅沢さんは、6年前の経験者だが、
当時は熊さんががんがん踊っていたから、
清水さんともども1回演じただけだ。
にもかかわらず、完成度は高かった。
熊さんを除く男性のトップ・プリンシパルは、
やはり彼だと言うことを実感した。

2幕は少々用心していたようだが、3幕グランパは絶好調。
怪我の後遺症は、仮にあったとしても、感じられなかった。
これでニーナさんと共演した時のわくわく感が、
常時出せるようになれば、熊さんも安泰なのだろうが。

12日のオーロラ、中村祥子さんは、
ウィーン時代にライト版を踊っているようだが、
オデット/オディールよりは経験が浅いはず。
にもかかわらず、今回は見違えるような、
素晴らしい出来だった。

丁寧で優雅、威厳もあり、力強さもある。
最後アポテオーズの2人の立ち姿は、
額に入れて飾って起きたくなるほど、
神々しいものがあった。

女性が言われて嬉しいかどうかは不明だが、
アレクサンドロワさんに通ずる「格好良さ」が、
この日の中村さんにはあった。

昔に比べ肉付きが良くなったのか、
相対的に肩幅も広く、頭が小さく見える。
彼女には、スタイルの違いに愕然とし、
如何に手足を長く見せるかに苦心した、という逸話があるが、
舞台上の姿を観る限り、誰の話かと思う。(笑)
お師匠さまによれば、メイクも上手になったという。

熊版のオーロラとリラ精の振付は、
見慣れたロシアのものと比べると、
手足の動きがやや小さく、それが少々残念なのだが、
彼女と浅川さん、小林さんの踊りを観ていると、
それを一層強く感じる。
彼女たちがロシア式ののびやかで大きく、
ゆったりした動きをしたら、さぞ美しかろう。

それにしても今回のローズ・アダージョは、
盛り上がる音楽とは裏腹に、
2人ともまったくはらはらしなかった。
もしかしたら言われているほど難しくないのかも?
と思ってしまったほどだ。(笑)


11日は、近くに辛口の老夫婦がいた。
この舞台を観てそこまで不満なら、国内どころか、
海外にも観られるバレエ団ないよ? と思ったが、(笑)
具体的にどこがどう良くないかは言わないから、
ただ悪口をいいたかっただけなのだろう。

ただし彼らが脳内に再生する、なんらかの基準もあるはずで、
それがいったいなんなのか、ちょっと気になった。

「たぶん」と我が師。「ニーナさんに釣られた人じゃないかな。」
彼女との共演舞台を観て、では他の演目も観てみるか、と。
「彼女が全盛期の頃のボリショイと比べられたら、
さすがにKでも太刀打ちできないよ。スケール感が違うものね。」

なるほど。単に体格の話ではなく、
技術的にも熊さん級、あるいはそれ以上の踊り手が、
ごろごろいたバレエ団と比較されたら、たしかに辛口にはなる。

しかし、さらなる高見を目指せるだけの潜在力が、
このバレエ団にはあると思う。
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