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2016年04月03日08:04
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カラヴァッジョの講演会
大変な数の応募があったという講演会、まさかで当たってしまいましたので行って来ました。
カラヴァッジョの革新性
宮下規久朗(神戸大学教授)
@イタリア文化会館
●見どころ解説
講演に先だって、川瀬佑介さん(国立西洋美術館研究員)の展覧会解説。
�＼こ�初《法悦のマグダラのマリア》公開
マグダラのマリアはカラヴァッジョがローマから逃亡して山中で描いたものですが人気ゆえにコピーも多いそう。
2001年に東京都庭園美術館と岡崎市美術館で開催されたカラヴァッジョ展では《クラインのマグダラのマリア》という別作品が展示されました。
今回作が真筆と判断された根拠は第一に絵のスタイル。
マリアの下唇は青く(チアノーゼ状態)、お腹が出っ張っている(栄養失調)。
ここまでのディテールを描ける、また肩から胸のブラウスを一筆で描いている力量、まさに本物。
さらに来歴を示す文書まで添付されていることも後押ししました。
ちなみに空間の黒いシミ２つは洞窟の中のツタの葉とのこと。
�▲ぅ織螢�国外初公開の古文書資料
カラヴァッジョは芸術よりも犯罪歴の方が多くの資料が残されている人です。
しかし今回出ているバリオーネ裁判の記録では彼の芸術観が述べられていて興味深い。
それまでの理想を描く芸術と異なり、自然を模倣するという近代写実主義的態度が明らかにされています。
��照明、展示デザイン
背景が暗く表面がテカっている作品のために、全体照明をおとして下から光を当てています。
各方面から絶賛(これで《バッカス》のフラスコに映る自画像も見えます)。
●講演
宮下規久朗先生の『カラヴァッジョへの旅』は読んでいましたので
画家の生涯を辿りながらの作品解説はすんなりと頭に入りました。
面白かったのは《マタイの召命》のお話。
徴税吏だったマタイがキリストによばれて弟子となりマタイ伝を残すまでになった、そのことの始まりの場面です。
この絵で右にいるキリストに呼ばれているのは誰？といういわゆる「マタイ問題」。
永らく、「私ですか？」と指さししている髭の男だと言われてきましたが
宮下先生は左端の若い男だという立場。
その理由のひとつは、はじめに描いて受け取りを拒否された《マタイと天使》でマタイの座っている椅子が若い男の椅子と同じであること。
しかし現存の描き直しバージョンではマタイは《召命》の髭男に似ているような…。
ところが「このうちの誰でもいいのだ」という説も出ているというのです。
つまり近代的立場では、奇跡は現実というより頭の中で起こっていることであり、そうした意味で誰にでも起こりうると考えられます。そこで「"マタイ"は誰ででもある」。
そもそもキリストとテーブルの5人の服装も違う時代のものであるし。
ちなみにもうすぐ国立国際美術館で始まる森村泰昌展ではキリストを含め全員森村さんであるそうな(笑)。
講演の最後の質問コーナー。
●問。
《メドゥーサ》といえばウフィツィ美術館のものが有名だが、今回それよりも古い個人蔵の作品がきている。それにサインがあるということは、《洗礼者聖ヨハネの斬首》の血のサインが彼の唯一のサインということと、どう考えたらよいのか。
答。
《メドゥーサ》のサインも《ヨハネの斬首》と同じく血で書かれている。しかも F Michelangelo の騎士団を示すフラまでついていて、掠れている部分まで同じ。できすぎです。
しかしあれは本物。それ(本物であること)を補強するために誰かが書いたかもしれない。
《法悦のマグダラのマリア》に文書があるのと同じ。あれも無い方がいいかも。
主催者はどう思われますか？
ふられた西美研究員の川瀬さんの答。
否定の証明は難しい。あのサインが後から書かれたという証拠もない以上、《メドゥーサ》に《ヨハネ》のオリジナルのアイデアがあると考えざるを得ない。
●問。
晩年の様式について。焦燥や絶望、時間がなかったから等という見方があるが、そこに恣意性はないか。
レンブラントの晩年の様式と比較してどうか。
答。
確かに時間もなかったかもしれないが、自分はプラスの意味で考えたい。
ローマでは目の肥えた客や競争者も多く、丁寧に描かなければならなかった。
しかし地方で目の肥えていない客には自分の描きたい様式で描けたのではないか。
晩年のブラッシュストローク等は実に生き生きとしている。
レンブラントもそうだが、急いで描いたように見えて見事、というのは一流の証だと思う。
ローマではそれが許されなかった。
その他、
芸術新潮３月号の記事についてや
デル・モンテ枢機卿との出会いについての質問もありました。
●告知。
Eテレ『日曜美術館』4月17日には宮下先生と川瀬研究員ご出演とか。
これは観なくてはなりませんね。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
千鳥ヶ淵の桜が満開でした。
カラヴァッジョの革新性
宮下規久朗(神戸大学教授)
@イタリア文化会館
●見どころ解説
講演に先だって、川瀬佑介さん(国立西洋美術館研究員)の展覧会解説。
�＼こ�初《法悦のマグダラのマリア》公開
マグダラのマリアはカラヴァッジョがローマから逃亡して山中で描いたものですが人気ゆえにコピーも多いそう。
2001年に東京都庭園美術館と岡崎市美術館で開催されたカラヴァッジョ展では《クラインのマグダラのマリア》という別作品が展示されました。
今回作が真筆と判断された根拠は第一に絵のスタイル。
マリアの下唇は青く(チアノーゼ状態)、お腹が出っ張っている(栄養失調)。
ここまでのディテールを描ける、また肩から胸のブラウスを一筆で描いている力量、まさに本物。
さらに来歴を示す文書まで添付されていることも後押ししました。
ちなみに空間の黒いシミ２つは洞窟の中のツタの葉とのこと。
�▲ぅ織螢�国外初公開の古文書資料
カラヴァッジョは芸術よりも犯罪歴の方が多くの資料が残されている人です。
しかし今回出ているバリオーネ裁判の記録では彼の芸術観が述べられていて興味深い。
それまでの理想を描く芸術と異なり、自然を模倣するという近代写実主義的態度が明らかにされています。
��照明、展示デザイン
背景が暗く表面がテカっている作品のために、全体照明をおとして下から光を当てています。
各方面から絶賛(これで《バッカス》のフラスコに映る自画像も見えます)。
●講演
宮下規久朗先生の『カラヴァッジョへの旅』は読んでいましたので
画家の生涯を辿りながらの作品解説はすんなりと頭に入りました。
面白かったのは《マタイの召命》のお話。
徴税吏だったマタイがキリストによばれて弟子となりマタイ伝を残すまでになった、そのことの始まりの場面です。
この絵で右にいるキリストに呼ばれているのは誰？といういわゆる「マタイ問題」。
永らく、「私ですか？」と指さししている髭の男だと言われてきましたが
宮下先生は左端の若い男だという立場。
その理由のひとつは、はじめに描いて受け取りを拒否された《マタイと天使》でマタイの座っている椅子が若い男の椅子と同じであること。
しかし現存の描き直しバージョンではマタイは《召命》の髭男に似ているような…。
ところが「このうちの誰でもいいのだ」という説も出ているというのです。
つまり近代的立場では、奇跡は現実というより頭の中で起こっていることであり、そうした意味で誰にでも起こりうると考えられます。そこで「"マタイ"は誰ででもある」。
そもそもキリストとテーブルの5人の服装も違う時代のものであるし。
ちなみにもうすぐ国立国際美術館で始まる森村泰昌展ではキリストを含め全員森村さんであるそうな(笑)。
講演の最後の質問コーナー。
●問。
《メドゥーサ》といえばウフィツィ美術館のものが有名だが、今回それよりも古い個人蔵の作品がきている。それにサインがあるということは、《洗礼者聖ヨハネの斬首》の血のサインが彼の唯一のサインということと、どう考えたらよいのか。
答。
《メドゥーサ》のサインも《ヨハネの斬首》と同じく血で書かれている。しかも F Michelangelo の騎士団を示すフラまでついていて、掠れている部分まで同じ。できすぎです。
しかしあれは本物。それ(本物であること)を補強するために誰かが書いたかもしれない。
《法悦のマグダラのマリア》に文書があるのと同じ。あれも無い方がいいかも。
主催者はどう思われますか？
ふられた西美研究員の川瀬さんの答。
否定の証明は難しい。あのサインが後から書かれたという証拠もない以上、《メドゥーサ》に《ヨハネ》のオリジナルのアイデアがあると考えざるを得ない。
●問。
晩年の様式について。焦燥や絶望、時間がなかったから等という見方があるが、そこに恣意性はないか。
レンブラントの晩年の様式と比較してどうか。
答。
確かに時間もなかったかもしれないが、自分はプラスの意味で考えたい。
ローマでは目の肥えた客や競争者も多く、丁寧に描かなければならなかった。
しかし地方で目の肥えていない客には自分の描きたい様式で描けたのではないか。
晩年のブラッシュストローク等は実に生き生きとしている。
レンブラントもそうだが、急いで描いたように見えて見事、というのは一流の証だと思う。
ローマではそれが許されなかった。
その他、
芸術新潮３月号の記事についてや
デル・モンテ枢機卿との出会いについての質問もありました。
●告知。
Eテレ『日曜美術館』4月17日には宮下先生と川瀬研究員ご出演とか。
これは観なくてはなりませんね。
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千鳥ヶ淵の桜が満開でした。
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