■スーパーアクセルII導入まで
よく「床までアクセルベタ踏みに・・・」という表現を聞くが、トヨタ・ヴィッツのオーナーの方、レンタカーでよく利用されている方、営業車としてご利用されている方はご存じかもしれない、実はヴィッツは床までアクセルが踏めないアクセルの構造をしている。ペダルが床にぶつかり、それ以上アクセルを踏めなくなるからだ。
まさに「腹八分目で走りましょう」というのは確信犯的ですらあるが、或る意味これはトヨタが封印したヴィッツの真の力かもしれない。
その真の力を引き出す、ヴィッツのアクセルの開度を最大に出来るパーツとしては以下のものがある。
●ハイパワーアクセルペダル(Gump)
●スーパーアクセルブラケット(ジムゼ)
●スーパーアクセルII(アクシスモーターブティック)⇒今回導入
最も廉価なものはスーパーアクセルブラケットのようだが、残念だがまだ2016年1月現在、130系(通称3代目ヴィッツ)は開発中とのこと。そこで一足先に130系の開発が完了し、市販化も可能になったスーパーアクセルIIをつけることにした。
元々北九州市・小倉区にあるアクシスモーターブティックは初代ヴィッツのカスタマイズを手掛けており、ヴィッツラリーにもパーツを導入して来たため定評がある。このパーツを装着しているマシンは加速が顕著に良くなった為、一時期は装着している車両には出場制限が掛かったほどだ。
なお、ご存じの方もいらっしゃるかもしれないが、実はこのスーパーアクセルII、2016年の東京オートサロンにも出展されている。オートサロンはカスタマイズカーが多数出展される為、車が趣味ではない人には一見面白くないかもしれない。しかし、本当の見どころはカー用品だ。生活の為の車というライフスタイルを送っている大多数の日本人(自分もそうだ)は、将来市販化されたら買いたいと思うものをチェックし、市販されたら明日のカーライフに役立てていくのが賢い見学の仕方だろう。ここで好評だったカー用品は将来市販化される可能性が高いものばかりだからだ。その意味ではモーターショーが未来に振っているのに対し、オートサロンは意外や現実的。メーカーが地に足のついた冒険をしているといえる。実際、初代のトヨタ・ヴィッツRSに乗っていた時、純正にはHIDの設定は当時無いので、バルブに定評のあるベロフ社のHIDを奮発してつけたが、それが寿命を迎えたので、ここで出展されていたカーメイト・ギガに替えた経緯がある。かなり廉価で済んだ経緯がある。
アクシスモーターブティック社では時速0−80kmタイムで1Lのヴィッツの場合、1秒以上速くなり、スムーズに吹け上がるので、結果的に燃費も向上。
加速性能よりエコを評価する時代(最近はそれが行き過ぎではないかと思う節もあるのだが)、両者はトレード・オフ(二律背反)のはず。そんな上手い話などあろうはずがないと思った。しかもゼロスタートから80キロでこれだけタイムが縮むのであれば、0−400mだと1.1〜1.5秒程度縮む計算になる。ちなみに0−400mタイムの目安とは次のようなものである。
軽自動車のNA・・・19秒後半〜20秒
コンパクトカー・・・18秒後半〜19秒台
1.5L車、軽自動車のターボ付、2Lクラスのワンボックス・・・18秒台前半から後半
1.6〜1.8L車・・・17秒台後半〜18秒台前半
2L車・・・17秒台前半
2.5L車・・・16秒台〜17秒台前半
くらいが普通である。だいたい0.5秒刻みでランクが分かれている。最近の車も速くなったものだ。なお、VWゴルフのようなダウンサイジングターボ車だと1.5L車と同程度。一方2Lといってもトヨタ・86くらいになると16秒台をマークする。ニッサンのGT−Rクラスになると12秒台〜13秒台に突入し、最早異次元だ。この数字は飽く迄特別なチューニングや特殊な過給などされていない中位クラスの平均、と思って頂きたい。
それが1秒以上縮まれば車格がふたつくらい上になってしまう。実はこの製品は130系用が出る以前から注目していたものの、1.3Lのヴィッツが1.6Lのセダン並みの加速性能になるとはちょっと信じられなかった。
それでもカー用品の性能検査が厳しくなった昨今、それをクリアしている。しかもオートサロンで出展されたこともあり、信用して申し込むことにした次第である。ただ、東京オートサロンに出展した会社とはいっても、小人数で事業を展開しているのだろう。基本的に受注生産品とのこと。2、3週間とのことだったが、結局取りつけて乗れるまで一カ月ほど要した。
■エンジン音は別物に
個人でもつけることが出来るし、それほど難しい訳ではないが、取りつける際、手探りの作業が結構多いので、自信のない人はオートバックスあたりでもホームページをコピーして、注文し、5千円ほどの工賃を払えばつけてくれるはずだ。スロットルには電子式とワイヤー式があり、車種によって付け方は異なる。
届いた製品にはご丁寧にカラー写真つきの取りつけ説明書と滑り止めのついた軍手も付属されていた。
130系ヴィッツは電子スロットル式。
作業は25分ほどで完了。
見掛けはノーマルと殆ど変わりが無いが、角度がやや異なる。この角度がフルスロットルを可能にするのだろう。まあ、その程度の違いだ。正直、あまりの違和感のなさに拍子抜けた。エンジンを停めて、踏み込み具合を確かめる・・・多少アクセルペダルのバネが堅くなったのかと思うくらい。ますますこの時点では疑わしくなってしまった・・・。
多少騙された気になって、早速エンジンに火を入れてスタート。市街地に出てみる。
しかしその疑念はあっさりと払拭された。
「おおっ」と思ったのは、まずエンジン音。今まではボウボウとダイハツ製の1NR型エンジンは元気な音は立てるが、それほど絶対的な加速の伸びは無かった。それでも元気に力強く仕事をしている音と相まって、加速感は1.5L・RSの1NZよりも良い感じだった。絶対的な加速についてはまあ、1.3Lであれば、この程度だろうと思っていた。ところが装着後、いつもよりもずっと静かなエンジン音でターゲットとした速度まで簡単に到達する。まるでひとつ上の排気量のエンジンが載った感じだ。しかも重低音のエンジン。ゼロヨンタイムはどれだけか定かではないが、「たかが1.3Lでもこれくらいの加速は欲しいよね」といえる程度にはなった。
Fにはタコメータがついていないので、果たして針がどういう動きをしているのか分からない。しかしエンジンが静かならば、それほどエンジンも仕事をしないで済んでいる訳で、結果的に燃費にも寄与しているはずである。ヴィッツのメーターは瞬間燃費がリアルタイムに表示されるので、試しに出しながら運転してみると、矢張り良好だった。ガソリンの供給がカットされる「99.9km/l」(実際には30.0くらいだという)の時間が東京の街中だとせいぜい5秒も連続して続けば御の字なのだが、それが7秒〜10秒くらいになっている。自宅周辺は東京都でも有数の信号密度が高い地域で、ハイブリッドカーを除いて、どんなエコカーでも二桁行けば良い方。この地域は7.9〜9.8km/Lだったのが、軽く10.4km/Lに達した。エンジンブレーキも必然的に効きやすくなった。前に制限速度未満の車が走っている局面では自分はいつも「D」から「S」に入れてアクセルから足を離すことで、ブレーキの踏み数を減らすことは良くやる。何しろヴィッツにしてもアクアにしても、ブレーキフィールは普通乗用車のフィールとは思えないほど、オーバーサーボ気味で嫌になるほどだからだ。要するにイキナリ効き出す昔のトヨタ車みたいなアソビが無いタイプ(ラクティスはもっとマシ、RSはディスクブレーキなので素晴らしい効き)だから、なるべくブレーキを踏むのは完全に停車する時にしたいと考えている。ところが「S」に入れなくてもどういうことか、ちゃんとエンブレが効くのは有難い。
では今度は地方の幹線道路程度の比較的速い巡航速度で走ってみる。
(続く)
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