お召し列車

　座・高円寺で燐光群「お召し列車」を見る。この題名は天皇家を乗せる特別列車のこと。そしてハンセン病患者を療養所へ運ぶ強制収容列車の隠語でもある。２０年の東京オリンピックで、海外からの観光客のため、「お召し列車」の企画コンペティションが行われている。一つはそのまま御料車を復活させる車両。もう一つは豪華列車ツアー用のハイグレード車両。これを無作為に選ばれた委員が乗り、走行する中審議する。
　その間にボックス席を置いただけの、何もない車両がある。これが三つ目の車両で、隠語としての「お召し列車」。この列車に乗っている元患者の老女とその支援者の女性がいる。「十二人の怒れる男」と言うより、「十二人の優しい日本人」風の委員たちのやり取りから、老女の壮絶な人生が見える。演じる渡辺美佐子の、抑えながらも迫ってくる演技が素晴らしい。
　その他戦争から原発まで、社会批判が次々出る。唯一のハンセン病患者のための公立高校である「新良田教室」は初めて知った。
　二社のＪＲ、二社の広告代理店の思惑が絡み、さらに途中無断で乗車してくる不審者もいて、話は意外な方向へ。この人物の意外な正体。それによって人間関係が収まるべきところに収まり、問題が解決する幕切れは、いい後味を残す。今年はエンターテイメント路線だった燐光群の、集大成的な面白さがあった。