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2015年11月30日01:26

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突撃  (1957);観た映画、Nov. '15



邦題;突撃    (1957)

英題; Paths Of Glory

アメリカ映画; 86分

監督: スタンリー・キューブリック
製作: ジェームズ・B・ハリス
原作: ハンフリー・コッブ
脚本: スタンリー・キューブリック
カルダー・ウィリンガム
ジム・トンプソン
撮影: ゲオルグ・クラウゼ
音楽: ジェラルド・フリード
出演: カーク・ダグラス ダックス大佐
ラルフ・ミーカー パリ
アドルフ・マンジュー ブルラール将軍
ジョージ・マクレディ ポール・ミロー将軍
ウェイン・モリス ロジェ中尉
リチャード・アンダーソン サンオーバン少佐
ティモシー・ケリー モーリス・フェロール二等兵
スザンヌ・クリスチャン 歌手
バート・フリード ブーランジェ
ジョセフ・ターケル ピエール・アルノー二等兵
ジェリー・ホースナー
ピーター・カペル
エミール・メイヤー
ケム・ディブス


無謀な作戦によって激戦地で危険と恐怖にさらされた兵士の怒りを描く戦争ドラマ。第一次世界大戦、フランスの最大の課題はドイツ軍の撃退だった。そんな中、ダックス大佐はドイツ軍の要所を攻略する命令を受ける。だが、兵士たちの疲労を知るダックスは、現在攻撃を仕掛ければ兵士たちが壊滅的打撃を受けると抗議する。が、軍上層部は無視、作戦は実行される。フランス軍は大敗し、ダックスは責任を問われ軍法会議にかけられる。

上記は短い映画データベースの記述である。 パリでISのテロリストがフランス大統領臨席のフランス・ドイツのサッカー親善試合で爆弾攻撃をしかけ同時にパリの各所でカフェーやアメリカのロックコンサート会場に4人で押し入りカラシ二コフ・マシンガンを連射して80人ほどを殺害、結局全部で120人以上の命を奪いヨーロッパ各国がこれにより非常事態を宣言しているときにこれを記している。 かつてなかったような、国内が戦争状態はいったと非常事態宣言するほどの緊張した夜の翌日、ベルギー国営テレビの深夜映画としてかかった作品である。 尚、これに関わる首謀者たちはベルギーから移動してきたと言われていることからベルギーには様々な情報組織が捜索の網をひろげているようだ。 当然この突発事件テロと本作の放映に関しては何も関係はないけれどどちらにしてもカオス状態のなかで人はどのように行動するのか、それをどう人々は取り扱うのかという生き死ににかかわっていることではこれらを無理にこじつけることも許されるだろうと言ってみる。 

キューブリックのこのクラシックに属する本作品を観た後では戦争というものに対して様々な感慨が湧く。 この戦場には戦争相手の敵が見えないまま話が展開する。 フランス軍を舞台にとりかつてないほどの死傷者を出した第一次大戦、ヨーロッパの修羅場の最たる舞台であるドイツ、ベルギーに広がるあたりだと思われる。 今でもそのあたりの広い農地からまだ薬きょうや地雷が出るというあたりを見て来ているものには第二次大戦以上に兵士を無残に死なせてきた戦場で起きた出来事をモノクロでここに美しく描いた作品である。 けれど、その美しいと感じさせるのは薄いセピアにも見えるモノクロの画面というだけではない。 将軍たちのエゴや思惑に翻弄される下士官、ひいてはその中で一兵卒として普通に戦った挙句に難癖をつけられて軍法会議の結果処刑される理不尽をも描いている本作は2015年の現在に於いてはすでに本作以後にもアクション・戦争映画の氾濫する中で兵士の行動とそれを裁く軍法、それを取り扱う人々を巡って同種の映画が量産されていることを比べてみると本作はそれらの中でも群を抜いてクラシックとしての威厳を示す作品と言えるだろう。

本作はキューブリック31歳のときの作品である。 自分は「2001年宇宙の旅 (1968)」を封切り時に映画館のシネマスコープ大画面で観て以来魅了され続け「時計じかけのオレンジ (1971)」を名画座で観たもののファッションでは魅了されたもののその世界に困惑し、オランダに渡り住んでからは「シャイニング (1980)」を北のグロニンゲンの映画館でビールを片手にゾクゾクしながら観た後は後年テレビでモノクロ映画の「博士の異常な愛情 (1964)」、「フルメタル・ジャケット (1987)」、「バリー・リンドン (1975)」、「スパルタカス (1960)」などを観ている。 自分がキューブリックを辿ってきた中で特徴的だと思ったのは宇宙の旅の美しくも乾いた不気味さと不思議さは別として引っかかり続けていたのは登場人物たちの「狂気」だった。 だから「狂気」と「正気」の病院内の闘争であるミロス・フォアマンの「カッコーの巣の上で (1975)」でのジャック・ニコルソンをシャイニングに観、白黒映画の傑作、博士の異常な、、、の狂気、ベトナム戦争を舞台にしたフルメタル、、、での軍曹とその訓練に耐えずに銃で自死する兵卒の眼に現れる狂気がキューブリックのこだわりだと思っていた。 

バリー・リンドンにしてもローマ時代のスパルタカスにしてもどちらも生死をかけた戦争状態のなかでありスパルタカスのカーク・ダグラスが本作では若干洗練されて軍紀の「乱れ」を法で矯正しようと組織内闘争を試みるスパルタカスを演じることになる。 これらは世界の不条理さに対して人はどのように抗うのか、また抗えるのかというそのプロセスと結果を画像の上に提示した作品群なのだと思っていた。 それではキューブリックの初期に属する本作に狂気というものが現されているのだろうか。 そもそも戦争が狂気だというのは安易に過ぎる。 ダグラスや兵卒たちには狂気は見えず理不尽な将軍のエゴは面倒ではあるけれど凡庸な人間であり、スキャンダルを利してその将軍を落とす別の将軍も世間でありがちな男でもある。 もしここに狂気が見つけられないとしたら自分は無いものを探しているのだろうか。 キューブリックがここで現しているのがそんな世界に対しての諦観だとしたら若きキューブリックをその後上記の作品群を制作させ続けることになったその契機とは一体何だったのだろうか。

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