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2015年11月15日13:08

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ああ鬱陶しい



2015年 11月 14日 (土)

一週間前に南リンブルグのベルギーとの国境沿いの田舎を珍しいほどの好天気の下、気持ちよく歩いてから帰宅して以来急に冬の訪れを告げるような鬱陶しい天気に覆われ少々辟易している。 雨や時にはそれに雹が混ざるものが降り、風が吹いては自転車のギヤを下げないと北西の風に抗えないようなものなのだ。 リュックザックを背に歩いていた時には全然使わなかったポンチョが今家では離せないものになっている。 毎日予定が特にない者としては目覚めて雨音が聞こえるとそのまま寝床に籠ってタブレットでいろいろの物を眺めたり読書で時を過ごすのだが、それでも一日に一度は外気に晒されないと駄目になるとボロイ買い物袋を提げて自転車で土曜の市に向かう。 

2週間前まではまだ色づいた葉があった濠沿いの並木はもう裸になりその落ちた葉は今は雨に濡れて黒に近い深い茶色に光っている。 光っていると言ってもまだ4時前なのにも関わらず自転車の前灯のセンサーが反応してランプが独りで点っているのはそれだけ暗いということだ。 この暗さが鬱陶しさをもたらす元凶なのだがそれでも空にほころびが出て青空は覗かないものの時には太陽のぼやっとした光が透けてみえるのでそこにカメラを向けて今日の一枚とした。 これでもまだ明かりが覗くといったものでこの前後には細かい雨が降ったり黒雲が覆っていたりしているのでこれを本日のハイライトとした。

久しぶりに露店市場でいつもの魚屋に来て目配せをするだけで揚げ物の兄ちゃんにムール貝のフライを作ってもらい道々それを平らげ野菜や果物、花などを売って賑わう露店を抜けて行きつけのカフェーに来たら女将さんは不在でその孫と思しい4つ5つの娘をカウンターのスツールに乗せて息子と思しいぶっきらぼうな男がハイネケンの小瓶をこちらによこし2ユーロだと言った。 カフェーの外のベンチに座るのは侘しいので中のガラス窓越しに行きかう人々を眺めていた。 5分ほどそこにいて市役所前の時々ランチにする「市民課」というカフェーの前に来て街灯にもなる看板を見たらこの間リンブルグでその工場を覗いて歩いてきた Gulpener ビールがそこのタップ・ビールになっているのを見て、そこではそういえばそれを飲んだことがなかったのに気付いて苦笑した。 人は視ていても見えず、といったところだろうか。

市立図書館の入口に来ると知り合いの画家・造形作家がこれから冬季の市民大学講座の絵画・彫刻講座のキャンぺーンをやっているところに行き会った。 彼が自転車で何週間もかかってオランダからローマまで途中のそのところどころでスケッチ、油絵、エッセーなどを Face Book に載せているのをその都度見ていたけれどそこから20mも行かないジャズカフェーの前で出発前に会って以来もう何か月ぶりかの再会だった。 12月には展覧会をするのでそのオープニングに行くと約束してそこで別れた。 フェースブックで観たオーストリアからイタリアに出るあたりの景色を描いたスケッチが良かったので懐の具合に差しさわりがなければ買おうかなとも思ったけれどそれより彼のファンが多いのでそれがこちらにまわって来るかどうかだ。 

小雨の降る横丁を歩いていたら息子の小学校から中高一貫校まで一緒だった友達の父親が生鰊とアルコールの混ざった臭い息をしながらふらふらと歩いて来たので小雨の降る中、二人とも傘もささずにこの半年ほどの近況を話し合った。 その男はあと2年ほどでデルフト工科大学の研究職を定年するのだけれどそれまでボチボチ行く、息子は27になるのにデルフト大学の院にも行かずまだ学部でうろうろしているということを聞いたけれど、それは自分がまだ教職にいたときに常に自分の学生に、もしエンジンを全開に出来るような研究目的が見つからなければ出来るだけ大学に残って親のすねを親が痛くて堪らんというまで齧り続けブラブラしていればいいと無責任に言ってきたことに符合するからいい学生だと言うと、それは自分も思うことでうちのどら息子はお前さんの学生なら優等生だなと二人で大笑いして別れた。 そのどら息子は5つ6つの時このマーケットでこんな時に親子何人かで立ち話をしている折には落ち着きがなく傍の鋳物の街灯のポールをよじ登り上から下を行く人々を眺めていたことも思い出し、猿はまだ猿のままだと思った。 母親は児童精神科医、父親は世界に名のある工科大学の研究者なのだからドラ息子を放し飼いにする余裕はあるのだろうからこれからあと10年後、あの子猿だったロルフがどんな成人猿になっているかを見るのが楽しみだ。 でもそのときまだブラブラしているという可能性も少なくない。 

自分には学生時代そのような経済的余裕がなかったから今のようなことになったのだが自分の夢は特に何もしないで過ごすというものだったからロルフはそういう意味では希望の星なのだ。 あと2年ほどすればこのパウルも定年でしばしば町で昼間に出会うことになりカフェーでウダウダ言いながらコーヒーや酒を飲むことになるのはほぼ確かではある。 一人息子がぼんくらだというのは面白い。 果たしてそのボンクラが化けるか化けないか観るのが我々年寄りの楽しみでもある。 自分の息子と言えばパウルも同意するのだが、計理士・アカウンタントという面白みのない職業をやりたいというその気持ちが分からない。 パウルも自分も互いに金勘定に興味がなくこの職業を30年ほどやってきたのだから経済は必須のものとはいえできるだけそういうことにタッチしたくない年寄りたちなのだ。  

細かい雨に濡れて冷たくなるからとそこをそれぞれ反対側に急いで別れ雨宿りをあちこちでしつつ自転車とポンチョを置いてきたスーパーの駐輪場に向かった。
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