英国の著名振付家のひとり、
アントニー・チューダーさんの作品を踊りたい!
という人たちが、彼を日本に招くとともに、
「オール・チューダー・プログラム」
と題したバレエ公演を主催した。
この時、中核となったのが、
小牧バレエ団出身の太刀川さんで、
今から50年前の話。
集まった人たちは、いわば同好の士なわけで、
目的を達成したとはいえ、離れがたく思ったのだろう。
1回だけでなく、もっともっと一緒に踊ろうよ、
ということで立ち上げたのが、
スターダンサーズ・バレエ団だった。
だから設立50周年を記念した演目が、
「オール・チューダー・プログラム」なんだな。
バレエ団の名称から、既存のバレエ団から、
鶏口となりたい人たちが集い、立ち上げたのかな?
と勝手に思っていたが、「寄せ集め」という意味では、
間違いではなかったのか。(笑)
【第1部】
★Continue(1971)
特に物語はなく、男女3組が古典的な振付を、
パッヘルベルのカノンにのって踊るというもの。
女性の中では、やはり林さんの動きが抜きんでているが、
他の二人もまあまあ。
それに比べると男性3人は体捌きがぎこちない。
日本にも、スタイルの良い人や、
踊りの上手い男性ダンサーはいるが、
両方兼ね備えている人はまだまだ少ない。
脚長長身、実力もある男性ダンサーがたくさんいる、
ユニバーサル・バレエが羨ましい。
★リラの園(1936)
望まない結婚をさせられる女性とのお別れパーティ、
というシチュエーションで、招待者の中には、
元カレ、彼女の婚約者と、その元カノもいる。(笑)
主役のカロラインに小林の島添さん、
元カレに吉瀬くん、元カノに佐藤万里絵さんと実力者を揃え、
さらに群舞が16名。
吉瀬くんの慟哭が聞こえてきそうなラストが印象敵な作品。
チラシのゲスト表記が小さいのは、
主役はあくまでもバレエ団だという意思表示だと思うが、
そのゲストがなにげに豪華。
ちなみにこの演目と、
第2部の「小さな即興曲」、第3部の「火の柱」は、
50年前にも演じられた。
【第2部】
★小さな即興曲(1953)
舞台下手にピアノが置かれ、
シューマンの子供の情景が奏でられる中、
若い男女の戯れが描かれる。
少女役の鈴木優さんは、見た目も可愛らしく、
甘える仕草が板についていた。(笑)
★「ロミオとジュリエット」よりPDD(1943)
ロミオが旅立つ日の朝、寝室でのPDDで、
本邦初演とのこと。
演じるのはバレエ団の看板ふたり、
林さんと吉瀬くん。
吉瀬くん、踊りはいいし、
動きから感情も伝わってくるけれど、
表情の変化が乏しいのは、
彼のポリシーなのだろうか。(笑)
作曲もディーリアスだから、
普段よく観る作品とはまったくの別物だが、
曲相がなんとなく似ているところが、
かえってもやっとする。
★「葉は色あせて」よりPDD(1975)
ある女性が、ひと夏の想い出を、
晩夏の森で懐かしむ、という作品で、
踊るは都さんと山本隆之さん。
林さん、本当に上手くなったなあ、
と思いつつ眺めていたが、
島添さんと都さんは、やはり別格だった。
二人を目指して頑張れ。
【第3部】
★火の柱(1942)
20世紀初頭、とある街に住む、
歳の離れた3人姉妹の物語。
主役は真ん中の奥手な少女ヘイガーで、
新国の本島さんが担当。
新国では若手が次々と台頭しているため、
彼女の主役を務める機会が減っているのが惜しい。
長姉役の天木さんは、落ち着いた風貌なので、
「シンデレラ」ではお母さんを担当しており、
この作品でも長姉は「老嬢」と表現されているから、
適役と言えば適役なのだろうが、
話を知らずに観てしまうと、
母親と姉妹の物語に勘違いしそう。
妹役の西原さんがいい味を出していて、
思わず頭をはたきたくなるほどの、
憎ったらしい演技。(笑)
ガラにもかかわらず、音楽はテアトロ・オケの生演奏。
指揮の田中さんは相変わらずのしかめっ面だから、
出来の良し悪しを彼がどう思っているのかは不明だが、
腕のたつOB、OGをかき集めたのではなかろうか、
という良い演奏だった。
秋の学校巡回公演、年末の「くるみ」を経て、
年明けには上野で、
ライト版「コッペリア」を上演するという。
ミハイロフスキーとかぶってなければ、
観にいくのだが。残念!
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