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2015年09月30日10:20

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映画は監督で選ぶとハズレが少ないと言ったけど、どんな監督にも駄作はある。バリー・レビンソン監督「ザ・ベイ」(2012)はその典型。

「レインマン」でアカデミー監督賞を受賞したバリー・レビンソン監督作です。アカデミー脚本賞に3回ノミネートされているレビンソンが脚本に加わっていない(ストーリーは共作)ので、ちと不安はありましたが、上映時間が84分と潔いので見ることにしました。

物語は、メリーランド州のチェサピーク湾に面した小さな町クラリッジが舞台。湾の汚染で魚などが被害を受けている中、それを調査していた科学者たちが、死体で発見されます。腹を抉られたりしているのでサメではないかと考えられますが、住民たちに異常な発疹が現れ、今度はウィルス説が取りざたされる。かくてCDCという疾病対策の国家機関を巻き込んでの大騒動へと発展する、しかし国は内密に収めようとする、という展開です。

だいたい僕は、映画を見る前にその映画の解説文を読みません。それより監督名や俳優名で見るか見ないかを決める。やはり監督名がいちばんハズレがありません。俳優でもいいのですが、その俳優を見ているだけで90分から2時間我慢できる俳優さんは少ない。ということで今回はバリー・レビンソンという監督名を信頼しました。

でも見終わってオールシネマ・オンラインの文章に、“「レインマン」の名匠バリー・レヴィンソン監督が「パラノーマル・アクティビティ」シリーズのスタッフと手を組み”とあるのを読み、これを先に読んでいたら見なかったのに、と後悔しました。フェイク・ドキュメンタリーの連中と手を組むなんて、バリー・レビンソンの名折れですわ。

imdbのトリビアによると、レビンソンはチェサピーク湾の汚染というものに目をつけ、ドキュメンタリーを作ろうとしたそうです。ところが既成のドキュメンタリーをいろいろ見たら、なかなかのできばえの作品ばかりだからと、劇映画に変更した。それは英断かもしれないけど、そこでフェイク・ドキュメンタリーを作るか? その神経を疑うわ。

何が面白くないかというと、プライベート・フィルムやテレビの取材素材、そして街頭カメラの映像を並べるわけです。そんなダラダラと退屈な映像など僕は見たくない。でも、ああいう映像を“リアルだ”と喜ぶ人もいるらしいですね。たとえば裏ビデオの時代に“ラブホテル流出物”という粗雑な映像がけっこう流通したそうです。でも僕は、あの粗雑さが嫌いでダメでした。
「プレアウィッチなんたら」以後、そういう方向性もありだとする人たちが増えたように思います。つまり、作り手が簡便に用いられる手法で、作り手側の理由だということ。

具体的に言うと、危険な状態の中、幼子を抱いて独りで街を歩く若い母親が、パトカーを見つけて乗ろうとします。そして乗り込んで、発車しようとすると後部座席から何者かが抱きつく。僕はこういうの見ると“アホか”と思うわけです。もうちいと注意を払って車に乗らんかい、とね。とはいえ僕も、現実にそういう場にいたら不注意な行為をするでしょう。だからこそ僕は、映画の中では注意深い人間を見たい。自分と同じかそれ以下のバカがバカをしでかす映画に、なぜ金を払う必要があります?←そんなんに金払う人、僕の生活を見せたるから金払って。

あるいはテレビ・キャスターがカメラに向かってしゃべる。とちったからとやり直す。これも“アホか”です。我々観客が見ている映像は、事件が一段落した後に編集したという設定です(医師が映っている場面で“この医師は後に死亡”と語られる)。だったらNGフィルム(ビデオだけど)を使って余計なことするな。レビンソンが調査のために見たドキュメンタリーは、そんな素人細工なんかしていないと思うよ。

ということで、この映画を見たせいで僕は、チェサピーク湾の汚染問題についてまじめに考える気がなくなりました。バリー・レビンソンは「フランシス・ハ」のプロデュースに噛んでいたし、こんな駄作を見せられたからと言って見切りをつける気はありません。でも、もうちいと仕事を選んでくれよ。買い付けた人も、バリー・レビンソンの名前を信じたんでしょう。そして彼の監督作としては安かったんだろうな。気持ちはわかるけど、以後気をつけましょうね。
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