【バレエ】ＮＢＡバレエ「ドン・キホーテ」（２７日）

２７日は、バレエ団を違えての、
「ドンＱ」マチソワをしてきた。（昼間がＮＢＡ）
開演時間と場所を眺めていたら、
ハシゴできることに気付いてしまった。（笑）

ＮＢＡの「ドンＱ」は、従来はヴィハレフ版だったが、
久保さんを芸監に迎えての初「ドンＱ」として、
マリー・ホームズ版が採用された。
今回はその初演ということで、
年明け１月から練習に励んでいたらしい。

ホームズ版も狂言自殺を後半に置く３幕構成で、
街の踊り子の場面ではナイフに代わりゴブレットを使うなど、
細かいところの演出にはいろいろ手が加えられているが、
２幕までは大きく変わったところはない。

ところが３幕冒頭に、他の版にはない踊りが挿入されている。
幕が上がると、酒場にスモークが焚かれ、
黒パンツに赤黒のベスト、赤スカーフの男性が１０人。
一拍子の小太鼓にあわせ、
コンテ／タップダンス風の踊りを披露する。

また酒場と結婚式の合間、着替えタイムとして、
キホーテとガマーシュの決闘があり、
一幕キトリとの遣り取りで、
ガマーシュはハゲが露呈しなかったと思ったら、
ここでバレていた。（笑）

そういえばユニバーサルでは、いったん幕は下りたものの、
３幕の前奏があっただけで特に時間稼ぎはしていなかった。
群舞の頭数、それほど余裕があったようにも思えないのだが。
もし着替えていたのだとしたら、もの凄い早業だ。（笑）

演奏は榊原さんと東京劇場管弦楽団。
統一感はいまひとつだったが、
オケピの仕切り板を震わす音量は迫力十分。

冒頭、いきなりトランペットが盛大に外した時は、
チラシをオケピに投げ込みたい衝動に駆られたが、（笑）
本人も「やばっ！」と思ったのか、
その後は気合いの入った良い演奏だった。

編曲者名は特に記されていないが、
耳慣れたロシア版と比べると、
小フレーズを繰り返したり、音を無理矢理伸ばすなど、
いろいろ手が加えられている。

ただしランチベリーのようにごてごて飾り立てるのではなく、
改訂された振付に尺を合わせようとしているため、
テンポは速めなのに間延びした感じになってしまう。

舞台上の様子は、ちょっと微妙だった。
去年の暮れに観た「くるみ」が良かったので、
さらなるレベル･アップを期待していたのだが、
９ヶ月近く練習していた割には習熟感が足りず、
夜に観たユニバーサルの出来が良かっただけに、
印象がさらに薄まってしまった。

もっとも「ドンＱ」特有の雑然とした賑やかさは、
ＮＢＡの方があった。
ユニバーサルは、上品と言えば聞こえはいいが、
新国に通ずるちょっとすました雰囲気なので、
街の喧騒や元気の良い住人を描くにはやや物足りない。

キトリは楽しみにしていた竹田さんだったが、
残念ながら今回は期待通りとはいかなかった。
回転など勢いのある踊りは良いのだが、
なぜか手足の動きが小さいのだ。

背が低く、手足の長さの比率も
今風のダンサーほどではないにもかかわらず、
背の高い新国群舞に囲まれても埋もれない、
ダイナミックな踊りが彼女の持ち味だったのに。

バジルは高橋真之さん。
アメリカへの留学経験がある、２０１３年入団のソリストで、
勢いがあり、溌剌とした踊りをする良いダンサーだった。
竹田さんが小柄ということもあって、
フィッシュダイブはこちらのペアの方が迫力ある。

ロマの頭領、皆川さんも、
短い踊りがもったいなく感じる出来映え。
男性群舞もなかなかにワイルドで、
前日観たスタダン公演の男性ダンサーたちよりも
見応えがあった。

このバレエ団には、女性陣にも、
気になるダンサーが何人もいたはずなのだが、
今回はハウスキーパーの平居さんしか
印象に残らなかった。

ハウスキーパーは、キホーテの家付きの娘で、
特に踊りのある役ではないのだが、
冒頭、パンサがキホーテに擁護されると、
捨て台詞代わりに中指を突き立てて去っていくなど、
表情が豊かで、他の場面でも
演技を絶やさない様子が好印象だった。

一方、良くない意味で気になったのが、
キャラクター・ダンスのアクセントの付け方。
緩急はあるし、ポーズも一応型になっているのだが、
タイミングや頭の角度などが、いまひとつ決まらない。
ダンサーのせいというよりは、教師の教え方が悪いように思う。

気になるところはいろいろあったが、
こなれてくればもっと良くなりそう、
そんな期待を抱かせる舞台でもあった。


カーテンコールでは、
「さよなら　ゆうぽうと」の垂れ幕が下りてきて、
ちょっとうるうるきた。

華やかなバレエのイメージとはややかけ離れた、
庶民的な雰囲気の劇場だったが、
上野より座席まわりが若干スペーシーで、
傾斜もそこそこある、観やすいハコだった。

３３年間というのは、建物の寿命としては短かすぎる。