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2015年09月09日05:39

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少なくとも前半は、音楽制作の妙味と恋愛感情が楽しめ、作意もあまり気にならない。ビル・ポーラッド監督「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」(2015)。

はい、見終わって少し反芻すると、なんか後半の安物の手品の種明かしみたいな展開が鼻について、せっかくの前半の好印象が雲散霧消してしまった感じです。ビル・ポーラッドという監督さんは初耳ですが、「イントゥ・ザ・ワイルド」や「それでも夜は明ける」を製作していたらしい。この「ラブ&マーシー」の前にも監督作はあるみたいですが、あんまり評価はよろしくないみたい。

僕がこの映画を見る気になったのは、マイミクさんが日記かつぶやきで“意外な印象”と書いておられたことから。題名からパスしかけていたのですが、初耳の監督だしimdbの得点も7.6とわりあい高い。で、キャストを見たらエリザベス・バンクスが出ている。こりゃ見なきゃ、というあんばいになりました。そしたらタイトルに、20年前に目を付けていたジョアンナ・ゴーイングの名前も。←ケヴィン・コスナーの「ワイアット・アープ」でアープの奥さんをやってました。

物語は、アメリカ西海岸で大人気だったサーフィン・サウンドの雄ザ・ビーチボーイズのブライアン・ウィルソンを描きます。僕がビーチボーイズの音楽を聴いたのはビートルズの“対抗馬”みたいな説があったから。あのころはロック音楽の初期で、それこそ「イージー・ライダー」に使われたグループのLPを全部集めるとか、「ウッドストック」で気になったアーティストのLPを買い集めるとか、そんな時代でした。てなわけでビーチボーイズも2枚ほど買いましたが、タイトルは失念。“グッド・バイブレーション”が大好きでした。

ところがこの映画は、音楽ものでもなければ単なる伝記映画ではない。いや、音楽は出てきますけど、いわゆる音楽ものとは一線を画しています。まず冒頭、キャデラックのショールームに入ってきた男が展示している車にもぐりこんでいる。それを女性ディーラーが見つけて話しかけると“車を買いたい”と言う。自己紹介し終わったところへ“ボディガード”が現れて、男を連れ去ります。男はブライアン(ジョン・キューザック)で女はメリンダ(エリザベス・バンクス)。

展示車に入り込むブライアンが、“砂浜をジョギングしてきたから”とスニーカーを脱いでいるところが面白く、メリンダもそのあたりに惹かれます。つまりこの冒頭のシーンには、男女の出会いにおける些細な事柄が、恋の萌芽となっているあたりをうまく押さえている。これが僕には大事なことです。そもそも好みのエリザベス・バンクスです。その彼女が、セールスウーマンとしての分をわきまえながら、そしてブライアンのエキセントリックな部分に気づきつつ、好意を持って行く。この説得力はなかなかだと思いました。

この映画でブライアンを演じるのは子役や本人映像も入れると4〜5人になります。ジョン・キューザックはブライアン・フューチャーで、ポール・ダノがブライアン・パースト、そして子供時代は監督の息子かも。ブライアン・パーストが音楽制作にかかわり、レコーディング風景などがとても興味深いものでした。ビートルズのLP「ラバーソウル」の多重録音やコンセプトの話、スタジオに演奏家たちを集めながら“今日はキャンセル”と言いだすブライアン・パーストなどなど。とりわけ僕の目をくぎ付けにしたのが4チャンネルのテープレコーダーです。

モノラル録音がステレオになったとき、僕はとても驚きました。そしてレコード会社へ就職して4チャンネル録音、8チャンネル録音という話題を耳にします。映画の4チャンネル音声しか知らない僕は、“8チャンネルって何よ”でした。するとマルチトラック録音は、それぞれのチャンネルに録り分けた楽器の音を、調整卓で2チャンネルステレオに配置しなおす(だからトラックダウンと呼ぶ)のだというわけです。つまりマルチになればなるほどコンセプトはモノラル録音なんですね。

というようなレコード会社時代の思い出がよみがえり、この映画の前半部分はとても楽しく見ました。ところが後半、ブライアンを治療する医師(ポール・ジアマッティ)との関係がギスギスしてくると、どうも居心地が悪い。エリザベス・バンクスも、ビョーキ人間のジョン・キューザックを信じてええのんか?と思うわけです。でもね、相手が髪の毛ふさふさのポール・ジアマッティでしょ。画面に出た瞬間“ちんけな悪役”そのものなんですよ。そしたらやっぱり…。

ということで肝心のジョアンナ・ゴーイングの御顔すら判別できずに見終わりました。ブライアン・パーストの母親役でしょう(写真3、右)。
終盤、ベッドを前にしたブライアンがパーストとヤングの自分を見るという、「2001年宇宙の旅」のもじりをやられると、微笑む前に萎えてしまったというのが本音です。でも“グッド・バイブレーション”ができるあたりは感動しました。
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