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2015年07月26日22:54

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日本の大チャンス

■労働生産人口の低下が意味するものは

 久しぶりに20年近く前に買ったイギリスの経済アナリストのピーター・タスカの『日本の大チャンス』という作品を読んだ。

あれから20年近く経った今、日本にチャンスがまだ残っているのかどうかを確かめたかったからだ。

 本書のオビにはこう記されている。

 「富の爆発的拡大か、それとも市場から一方的な退去か」

 読破すると、そのチャンスの内容は変わって居るが、確信と自信を得た。何に対して?

 今の日本に対してである。

 一体今の日本のどこにそんなチャンスがあるというのか?貧富の差は拡大し、少子高齢化は進み、経済は成長せず、実質賃金の低下が著しいではないかと。一方的な退去の方が近いのではないか。

 しかし日本の諸問題の大半を解決出来るかもしれない数値がある。労働生産人口の比率が下がっていることだ。バブル期には69%あったが、60%を切ろうとしている(労働力統計)。2020年、東京五輪の時期には確実に50%台前半に突入するだろうという見方もある。

 この数値の低下が何を意味しているのだろうか?

 信じられないだろうが、深刻な人手不足が近いことである。それもたった5年以内に、である。経済の原理では深刻な人手不足となれば、若年層が大切にされ、彼らの賃金は今後嫌でも上昇に転じざるを得ないのである。

 高齢化社会は避けられないが、少子化は解決出来る。少子化の背景は非婚化が深刻に進んでいるからであり、非婚化が深刻に進んでいる背景は、若年層が今まで低収に抑えつけられていたからである。

 少子化は若年層の低収入化という現実が是正されない限り、いくら結婚相談所や広告代理店が独身者を非人格者・禁治産者扱いして結婚へ恫喝し、煽動しても、この趨勢は変わらず、絶対に解決出来ない。

 税込み年収が300万円以上あれば結婚して所帯を持とうと思うかもしれないが、これが200万円前半しかなかったら、生きて行くのがやっとだから、結婚しようという気にはなれない。しかしそれが上がれば、少子化も解決出来るはずだ。

 そのサインが労働生産人口に如実に出始めているのである。

 
■抑制する力【度の過ぎた構造改革と財政再建原理主義】

 ピーター・タスカは本書で、日本の将来を阻む力を「抑制する力」と名付けている。この言の葉をお借りすると、この折角のサインを抑制する力が今の日本にも確かに存在している。

 中でもその最たるものが構造改革を始めとする、「デフレ期に行なうインフレ対策」である。労働生産人口の低さは、今後少子化はひとりでに解決し、日本人の実質賃金も否応なし上昇に転じる可能性を示して居るが、それは日本人と日本の科学技術で解決しようと試みるならばの話である。しかし、それが外国人労働者を入れたら、経済成長は達成しても、日本人の実質賃金は下がりっぱなしで、最終的には中国人の賃金と釣り合うまで延々と下がり続けるだろう。日本にそんな力があるのか?と思われるかもしれないが、高度経済成長期には、労働不足を日本人と日本の技術だけで乗り切ったので、今の日本がある。やって出来ないことは無いはずだ。

 例えばだが、最近女性が運輸の現場に進出が目覚ましい。

 彼女たちに「モビルスーツ」を着せて、着ない状態の数倍、力が出るような作業着を造ったら?
生産性は目覚ましく上昇するだろう。

 抑制する力、まだある。

 財政再建原理主義である。財政再建原理主義とは、「大増税無くして、財政再建無し」という考え方である。日銀のホームページの英語版を見ると、大変面白いことが書かれている。日銀は「政府の借金」としっかり明記しているのに対し、日本語版ではさも日本国の借金であるかのように書いている。しかしこの両者は明確に異なる。日本国のバランスシートを見ると、対外純資産は300兆円以上。文句無しに世界一の大金持ち国家だ。政府の借金も多いが、それ以上に国の資産も多いのだ。

 「あれれ。明日にでも大増税しないと国が破綻すると言っているのに、なぜ300兆円も純資産があるの?」

 という意見は極めて真っ当である。

 公的債務の絶対額が問題なのではない。その中身が問題なのだ。仕舞には日本とギリシャを同一視する御用学者、マスコミまで現れた。日本の場合、1985年以降、100%日本円建て、94%が日本人か日本の機関投資家。更に低金利で運用されている。この場合、公的債務が膨大だったとしても(既に大変な金額だが)、日銀に買い取らせれば、それでおしまいである。日銀は政府の実質子会社なので、連結決算で解決出来る。

 喩えていうならば、こういうことだ。

 「日銀さん、日銀さん、1000兆円も借金があるから払ってよ。」と政府。

 「えっ?1000兆円か。ふ〜ん。ああ、そういえば、それくらいあったかな?ちょっと待ってね。今、刷るからね。」

 ここで日銀さんは紙幣印刷機で印刷。

 「はい、お待たせしました。1000兆円。確かに渡したからね。」

 財政再建原理主義者やそれを支持するマスコミが大好きな言葉として、「1人当たりの借金」という言葉がある。

 2013年度・・・900万円。

 2014年度・・・830万円。

 差し引き残りの70万円はどこに?

 日銀が買い取ったのである。

 この状態では「財政問題」は存在しない。あるとしたら、国民の「債権超過」であろう。しかも消費者物価指数のうち、物価変動が著しいガソリン、灯油などを省いたコアコアCPIでは依然としてマイナスを向いたままだ。この状態ならば、国債を発行しても、財政問題にはならない。

 自分のつまらない日記を読んで下さっている方にはもうご存じだろうが、同じ状況に陥った国がひとつあった。

 ナポレオン戦争時のイギリスである。

 イギリスの公的債務はGDP比で288%。まあ今の日本といい勝負だろう。しかもイギリスは日本と同様、低金利、デフレ経済、大半がポンド建だった。といって、日本のように消費税増税などしていない。財政出動で乗りきったのだ。以後、イギリスの独走が始まり、それが覇権国という座をもたらしたのだが、ビクトリア女王の時代の経済成長率は幾つだったのか?

 何とたった+1%だったのである。

 たった1%でも毎年続けていれば、100年以内に世界の覇権国になれるというのは元気の出る話である。と同時に、債務は問題のない程度までになった。正確には、公的債務が積み上がるスピードを経済成長のスピードが抜き去ったという方が正しい。

 日本の公的債務も中身が問題で、巷間言われているように、無駄な道路の建設がもたらしたのではない。特別国債(赤字国債)が問題で、建設国債ではない。

 イギリスに倣って日本は建設国債を発行し、東北の復興と五輪のため、もっともっと財政出動を行なうべきである。

 今の日本経済の大チャンスを抑制する力をいかに減らすか。そこに将来が掛かっている。

 最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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