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2015年06月16日08:03

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【バレエ】東京バレエ団「ラ・バヤデール」(12日)


先週明け、同僚からバイオテロを受けてしまった。
コジョカルさんとは、つくづく相性が悪いのだなあと嘆きつつ、
幸いにも我が師は初日と楽日の観覧だったから、
ついでに中日もお願いします、と伝えたところ、
初日観覧直後の木曜夜、
「気合いで治せ!」と励ましのメールが。(笑)
骨は拾ってあげるから、ぜひ観るべし! とおっしゃる。

奇跡かはたまた気合いの成果か、
当日のお昼頃、風邪の諸症状がピタリと収まり、
周囲に風邪菌を撒き散らす心配もなくなったので、
まだふらつく足を上野へと向けたが、
道中、なぜそこまで推奨するのだろう、
と訝しく思わなくもなかった。
ユカリューシャさんには大いに期待しているが、
その効果が表れるのは、まだ先なのだから。

今回の公演は11、12、13の3日間で、
12日には貸切のマチネもあったようだ。
主役は、11と12のソワレがゲスト2人、
13はオール東バ。
12マチネは不明だが、
ゲストのマチソワということはないだろう。

私が観たのは12日の夜公演で、
11、13もご覧になった我が師のコメントを
適宜織り交ぜた。

客入りは、オール東バの13日は、
やはりゲストの日より少なかったそうだが、
新国「白鳥」とK「海賊」が
かぶっていることも影響していそうだ。

もう少しばらけてくれていたら、
私も初台に足を運んでいただろうし、
フィギュア(人形)好きの男性バレエ・ファンは、
新国と東バでさぞ悩んだことだろう、
と我が師は分析する。(笑)

それにしても、日本のバレエ団の経営/営業は、
マーケットの規模をどうみているのだろう。
バレエ教室に通う生徒たちが、
意外と舞台を(映像も)観ていない、
ということを勘案すると、
シェール・オイル的な潜在層は期待できそうだが、
現状のバレエ・ファンは多いとは言えず、
小さなパイを取り合いしている構図がつい思い浮かぶ。
公演日程を調整すれば、ファンの財布から、
もう少し絞り取れるように思えるのだが。(笑)

東バは1971年に「バヤ」からの抜粋として
「影の王国」をレパートリーに加えたが、
全幕を演じたのは2009年のマカロワ版が初。
以後2011、12年と再演し、今回は4回目となる。

マカロワ版には例の名盤があるが、
その収録年(1991年)から2006年の間に、
若干の改訂がなされており(いつだろう?)、
東バが演じるのはその小改訂版の方。

すぐにわかる違いとしては、
花籠の踊り(アレグロ)の後半、
あの能天気な曲が省かれたのと、
影の王国第2ヴァリと第3ヴァリの、
順番が入れ替わったところだろうか。

キナ様も語られているように、花籠の場面は、
2人を取り巻くその後の状況を考えると、
ただ笑顔で踊ればいいというものではない。
にしては曲相が明るすぎるから、
ならばと削除してしまったのだろう。
ヴァリも、たしかに入れ替えた方が、
急/緩/急とメリハリがつく。

主役の3人(ニキヤ、ソロル、ガムザ)は、
ゲストの日が、
コジョカル、シクリャーロフ、奈良、
東バの日が、
上野、柄本、川島。

英国の妖精コジョカルさんは、
かつては愛らしい風貌どおりの踊りだったが、
首に大怪我をして以降は筋トレにいそしんだのだろう。
表情や演技は相変わらずキュートなのだが、
上半身の筋肉がコンテ・ダンサー並みに強化され、
踊りのスタイルも、従来の音楽性に富んだ柔らかな動きに加え、
パワフルさが備わった。
ベールのPDD終盤のシェネなど、
プリセツカヤさんやロシアの道化を彷彿させるほど速い。

彼女のニキヤは、
身分の違いをわきまえた、控えめな天然系で、
ガムザの部屋に呼ばれ、宝飾を差し出されても、
伏せ目がちに、私のような者には過分でございます、
とのセリフが聞こえてきそうな仕草。

ガムザとアヤに行く手を阻まれ、右往左往する場面も、
哀れを誘うが、意外にもナイフを掴むや、
それまでの怯えた様子はどこへやら、
無表情でガムザに迫りナイフを振り下ろす、
明らかに殺意を感じる演技。
「まるで何かが憑依したかのよう」(お師匠様談)

前に観た時はどうだったろう。
彼女のこの解釈、ダンマガあたりが
インタビューしてほしいところなのだが。

それにしても、
なぜチェス台にナイフがあるのだろう。
熊版などでは果物の籠が置いてあるから、
果物ナイフと解釈できなくもないのだが。

相方のシクリャーロフくんは、
マリインスキーが絶賛売り出し中の若手で、
元々素質はありそうだったし、最近は出番も多く、
ヴィシニョーワさんに厳しく指導されてもいそうだから、(笑)
成長を期待していたのだが、1幕を観た時は、
見た目がちょっと逞しくなっただけで、
機会を得ている割には伸びていない、とがっかりした。
衣装もだぶだぶでかっこ悪いし。

ところが2幕になると動きが一変。
彼の登用頻度を考えるとまだまだ十分とは言い難いが、
動きの精度が上がり、明らかに進化の跡がうかがえる。
前日も同じパターンとのことだったから、
もしかしたら衣装のせいだったのかもしれない。

ただ、サポートの「下手さ」は相変わらずで、
腰が引け動きがぎこちない。
相手がベテランのコジョカルさんと奈良さんでなければ、
どうなっていたことだろう。彼女たちの方から、
距離感などをフォローしてくれていたからだ。

我が師は前日に新国のゲスト、
ムンタギロフくんを観たばかりだったので、
未熟なサポートがよけい目についてしまわれたようだ。

リフトする際の悪いクセもなおっていない。
相方を上げ下げするときは、
片足を後方に大きく引いた方が、
腰への負担も少ないし見た目も美しい、
と語っていたのは、ルグリさんだったか、
マラーホフさんだったか。

私も重い荷物を上げ下げする時は実践しており、
日常生活の中での見た目はともかく、(笑)
腰への影響についてはなるほどと思ったものだが、
彼は片足を引くことなく両ひざを曲げてしまう。
だから格好悪く、ミカン箱を上げ下げしているよう、
などと言われてしまうのだ。
先生はなぜ、そんな基本的なことを指摘しないのだろう。

奈良さんは、テクニックがもう一声あればと思う。
婚約式でのイタリアン・フェッテや、
婚礼の場の冒頭、ヴァリの掴みで失敗してしまった。
(初日はもっと良かった、とするネットの書き込みもある)
雰囲気造りが良いだけに惜しく思う。

ガムザのタイプとしては一般的だが、
表情が大げさでないにもかかわらず、
その時々の感情が手に取るように伝わってくる。

シクリャーロフくんのソロルは、
ガムザの紹介場面では驚きの表情をみせるが、
基本はニキヤ一筋で、自分をとりまく環境に、
どう対処してよいのかわからないでいる風。

ガムザに笑顔をみせることはなく、
ニキヤが一緒の場面では終始うつむいている。
婚約式の場面では、消沈して座るソロルに、
奈良ガムザは顔どころか体全体をソロルに向け、
微笑むでもなく、じっと彼を見つめる。
蛇に睨まれたカエルの絵面が、つい脳裏に浮かんでしまった。

コジョカルさんや大僧正に気を取られて、
白黒灰色は見損ねてしまったが、
私は関係ないわ、と言い訳はしていた。

婚礼の場では、
彼の心が自分に向いていないことを理解したため、
基本不愉快そうな無表情だが、
時折みせる寂しげな表情が印象的だった。

パートナーシップは、
やはり調整量の違う上野/柄本組の方が上とのこと。
ただし2人は「50年ガラ」の「影の王国」でも組んでいて、
この時は良いというほどではなかったから、化けたのだろう。
これはマラーホフさんの指導が大きい、と我が師は推測する。

それを裏付けるのが、柄本くんの動き。
体格やキャラがまったく違うにもかかわらず、
彼の踊りからは、時折マラーホフさんが見えたという。
足音も静かで、動きが美しい。
その分、本来の持ち味であるダイナミックさが
影をひそめてしまったのがおしい、
今後はその切り替えが課題かな、とも。

シクリャーロフくんは、一生懸命やってます感も健在なので、
多少失敗しても悪い印象は残らず、舞台も大きく使っているが、
まだ自分のものとしておらず、力みもあるので、
パとパのつなぎが途切れることがままある。

一方柄本くんは肩の力が抜けているというか、
踊りがより自然に、滑らかだったという。
目いっぱいな感じでもないから、つなぎもスムース。
少なくとも1幕の踊りは、
ゲストを上回っていたそうだ。
(衣装もぶかぶかではない)

ガムザとの出会い場面では、
柄本ソロルも一瞬驚くが、なびいてはいない。
ただ、以後は凹むだけではなく、
婚約式では笑顔も見せるなど、オトナの対応も。

上野さんは、演技からわざとらしさが消えていたという。
表情の付け方も自然で、
踊りにものびやかさが出ていた。
「あの手足の長さでそれをやられると、もう最強。」
2人の距離感も近くなり、
見つめ合う様子や、首などの角度、
腕で相手を撫でる仕草などを上手く使っていたそうだ。

上野さんの日のガムザは川島さんで、
見た目は華やかだが、身長は上野さんの方がある。
そのためすがる場面では、
小さいコジョカルさんはするりと抜けていき、
ガムザが勝手にこけた印象だが、
上野さんだと力で振り払われた感じになる。

続く床に手をつくところも、
叩きつけられたようにも見えるから
ガムザとしては屈辱感が増すので、
どちらが良い悪いではなく、両方ともありとのこと。

また上野さんの、
あの大きい目を見開いて突撃されると威圧感もあるので、
彼女には激昂型が似合いそうだが、
ナイフは振り下ろしていなかった。

いつか花開く大輪の薔薇と言われつつ、
アラフォーティとなってしまった彼女、
世界級の踊り手であるコジョカルさんと、
比べてどうでした? とたずねたところ、
タイプ違いとして楽しめるほど、成長していたという。

技術的に明らかな見劣りはなく、
上腕の使い方は、むしろ上野さんの方が、
ロシア的で豊かだったという。
ついに開花したか、と思いたいが、
彼女は観るたびに出来が変わるから・・・とも。

劣るとしたら役作りで、まだ甘いところがある。
宝飾をもらう時も、じっと見つめてしまったり、
花籠を受け取る時もコジョカルさんの方が自然。
(彼女はいったん通り過ぎかけ、呼び止められる)

ガムザの川島さんは初役ということもあり、
演技に問題はなく、
テクニック的に大きなミスもないが、
踊りにもう少し魅力がほしかったそうだ。
綺麗にまとめました、よりは+αが感じられたという。

奈良さんも、川島さんも、悪いとはいわないが、
何度も書いているように、「バヤ」のガムザは、
3人目の主役である。
首脳陣は、上野さんにニキヤとガムザ、
2役を担当させることは考えなかったのだろうか。
現在のダンサーの力量と、舞台のクオリティを考えれば、
迷うまでもないと思うのだが。

大僧正は、ゲストの日が木村さん、東バの日が森川くん。
2人ともオーバーアクション型のため面白いが、
アプローチは異なる。

基本冷静な木村大僧正は、
ふとしたきっかけで感情がでてしまう、
という風なのに対し、
森川大僧正はほとばしる感情が先で、
自制しようと心掛けているタイプ。

森川くんも体格が良いから、
カーテンの隙間から勢いよく飛び出し、
憤る様子もダイナミックで、
感情表現も極端でメリハリがある。

木村さんは、東バの日はラジャの担当だが、
ソロルとガムザの引き合わせ場面では、
群舞の踊りの時、ソロルの友人とチェスを打っている。

この時、「あっ! あれはなんだ?」と対戦者の注意を引き、
相手が「えっ?」とよそを向くと、駒を動かしてしまう。
今回、ソロルの友人は和田くんで、
勝ち誇るラジャに「恐れ入ります」とオトナの対応をしていたが、
以前、柄本くんが担当した時は、
「ズルしましたね!?」と食い下がっていたとか。

チェスは、ガムザとソロルもやっていて、
川島さんと柄本くんはただ指していただけだったが、
奈良さんとシクリャーロフくんは、
ガムザが勝って、かなり嬉しそうにする。
その様子を見たソロルは不愉快そうに眉を寄せる。
ソロルは、もしかしたらこの時、
迷いを振り切れたのかもしれない。(笑)

ブロンズ像(黄金像)は、
ゲストの日が梅澤くん、東バの日が岸本くん。
主役が似合いそうな梅澤くん、
「ドンQ」でもガマーシュ役で意表を突いてくれたが、
もうこっちの路線でいくのだろうか。

マカロワ版のブロンズ像と言えば熊さんだし、
梅澤くんにテクニシャンのイメージはないから、
正直なところ、まったく期待していなかった。
我が師も彼にはまったく触れていなかったから、
まあ、そういう出来だったのだろう、と解釈した。
ロホさん/アコスタさんのディスクでも、
演奏のテンポを落とし、振付の型を見せていただけだし。

そして踊りが始まっても、動きは綺麗だが、
キレがあるでもなければ、跳躍が高いわけでもない。
もしかして、戦う前から諦めて、流している?
と思ったりもしたが、実は後半に向けての布石だった。

ご存知のとおり、この踊りの後半には、
ピルエットやピケ、シェネと、回転が多用される。
彼はこれら回転技のために体力を温存していたのだ。
軸はぶれず、高速の回転はなかなかのもので、
前半の緩、後半の急と、視覚的にもメリハリがつく。

なるほど、こういうやり方もあったのか、と目から鱗だった。
(岸本くんも同じアプローチだが、完成度は梅澤くんの方が上)
下手に熊さんに喧嘩を売って砕け散るよりも、
観終えた後の印象はずっと良い。

その旨を師に伝えると、私がどう反応するか、
わざと話さなかったとのことで、
良い成績を取った生徒を眺めるように微笑んでいた。

冒頭、観覧について、
我が師から強い推奨があったと記したが、
私の性格を熟知する師が、
現在の東バの全幕もので、
あそこまで推してくるからには、
何か特別な理由があるに違いない。

と判断し、コジョカルさんの微笑みにも後押しされ、
ダメコンに努めたわけだが、
たしかに頑張った甲斐があった。
群舞が素晴らしかったのだ。

我が師は新国の「白鳥」群舞もご覧になっていて、
「綺麗だったよ」と語りつつも、
嬉しそうに褒めるのは、東バの群舞ばかりだった。

まず揃い具合だが、新国の群舞を100とするなら、
90くらいだろうか。
そして長丁場の「影の王国」にもかかわらず、
ぷるぷるダンサーがほとんどいない。

脚の高さも揃い、下ろす時も、
新国のように引力に引きずりおろされた感はなく、
悠然と、丁寧におろす。
上体の動きはヌレエフ版ほど大きくはないが、
空間の占有量は新国群舞よりも広く見える。

ロイヤル映像の演奏と比べると、
テンポは東バの方が速く、耳に馴染むにもかかわらず、
足音は(2日後に観たKほどではなかったが)十分静かで、
しかも楽日までそれが継続していたという。

ユカリューシャさんが指導に来ていた「ドンQ」では、
目を惹くソリスト級に対し、見劣りした群舞だったが、
その後は立場がすっかり逆転してしまった。
今回も3人のヴァリとピンク・チュチュからは、
悪くはないが、これといって感銘も受けなかった。

もっとも、力量はある人たちのはずだから、
新体制下、ソリストが復活し、
今回の群舞と肩を並べれば、
「東バの日」は、さらに魅力的になることだろう。
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