mixiユーザー(id:58808945)

2015年06月06日00:34

8621 view

言いたい放題のクルマレヴュー・【トヨタ・オーリス120T】

■「量産型」に真打ち登場■

 ハッチバックが好まれる欧米では昔から売られていたし、それなりに力の入った車種となっている。が、日本では兎角「そんなクルマもあったなあ」という印象しかない。それでもトヨタは今世紀に入って、カローラ・ランクス/アレックスを出している。オーリスはそんなカローラ・ランクス/アレックスの実質的な後継車種に位置している。初代は2006年にデヴュー、その2代目が今春、マイナーチェンジを行なった。

 オーリスのキャッチフレーズは

初代が「今の自分が最高!!」
2代目は「常識に尻を向けろ」
そしてこのマイナーチェンジ版は「自分を生きる大人たちへ」

となっている。

 威勢のいいことは良いことではないかと思い、オーリスがデヴューしたての頃は見に行った。ところが何しろ日本では以前であれば、免許取り立ての人達が挙っておカネを貯めて買った、このCセグメントというアッパーコンパクトハッチ、至って不人気で、最早日産のパルサーもホンダのシビックも無い。米、欧、豪州では好評なのだが。

三菱にはミラージュがあるが、別のクルマになってしまった。振り向けば、マツダ・アクセラ、スバル・インプレッサ、ということで、日本ではFFアッパーコンパクトハッチの帝王、フォルクスワーゲン・ゴルフの独り勝ちの状態が続いた。

威勢の良かった初代オーリスもモデル後期のCMは「大きいリス」が登場する何とも力の抜けたものとなった。トヨタ自動車はクルマのノンポリ化に成功したが、成功し過ぎがアダになり、クルマ好きを遠ざけたともいえる。

2代目は「常識に尻を向けろ」というものだったが、至って常識的だった。パワートレーンもガソリン車の1.5Lと1.8L。主戦場なる欧米、豪州では1.6L、1.4Lのディーゼル、ハイブリッドもある。個人的に良いと思っているのが、1.6L、131馬力のエンジンで、中低速トルクがたっぶりとあり、6MTも用意されるから、このエンジンこそ日本仕様にベストマッチと思っているのだが、残念ながら導入されていない。

豪州では日本のRSが「カローラ・レビンLX」という懐かしい名で販売されている。が、日本では至ってオーソドックス。6MTが1.8Lにつくだけ。それゆえ特別仕様車の「シャア専用オーリス」が却って目立った。しかしながら本来オーリスは実用車であるだけに、「シャア専用機」よりも、「量産型」をしっかり売らねばならないクルマのはずである。

 そのような中、「量産型」に新グレードが登場した。

 欧米では最早定番と化しているが、日本ではまだまだそれほどでもないダウンサイジング+過給モデル。オーリスの最上級グレードとして、RSよりも高価な税込259万円。トヨタとしては次世代レシプロエンジンと位置付けている。真打ち登場、という訳だ。キャッチフレーズの「自分を生きる大人たちへ」。なるほど・・・確かにこの価格を1.2L程度の排気量のクルマに余裕で払える人は、大人、それも50代以上だろう。

 ■エンジンを買うクルマ
 
 いつもこのコーナーでは内装から入るが、今回はエンジンにトピックがあるため、先行してエンジンからみたい。

ダウンサイジング型エンジン+過給という考え方は、必要な時だけ過給することで、排気量を実質上げたのと同様の効果を得る、というもの。可変排気量な考え方だが、その実、オーリス120Tのエンジンフィールもそのような感じだった。

 そのスペックだが、1.2L、116馬力でトルク18.9キロ(1500rpm-4000rpm)、ガソリンはハイオク指定となる。

 価格帯は非常に微妙だ。いや、自動車税が安い(確かに排気量だけならば、ヴィッツと同じ)からとか、燃費が良いから、という理由で選ぶグレードではない。何しろ価格が新車時で259万円もするからだ。この価格帯となるともうマークXの安いのが買えてしまう。もう少し我慢すると、86に手が届くではないか。このクルマを選ぶ人はどういう人なのだろうか。次世代エンジンを味わいたい人、メカ好きの人か、或いは後述するが、VWお得意のDSG+TSIに懲りた人かもしれない。

 オーリスのトピックとなるエンジンの型式は8NR−FTS。今後10年くらいは作り続けられると予想出来るし、果たしてどんな車種に載るのか、それも興味津々。出来ればヴィッツRSに載って欲しいと思うが・・・。

 乗る前にアイドリング状態のまま、エンジンフードを開けてみる。すると、物凄く質感が高い。今までのトヨタのエンジン音ではない。今までトヨタのエンジンは音質よりもパワー感重視のきらいがあったが、良い意味で硬い音。カリカリカリカリ・・・そんな音質なのだ。

V6のクルマくらい買えるけど、敢えて積極的にこのエンジンを選んだ、そんな人向けかもしれない。値段が高くても良いものは買う、そういう人向けにも見える。バッテリーは日本のカー用品店でもなさそうなサイズ。

何だか高そうだ・・・。
 
では、早速乗ってみる。良いのはエンジン音だけ?・・・そんなことは無かった。

走行している時は、4000rpmまでは全然苦し気な音がしない。それどころか、タコメータを追っていないと、4000rpmまでだったら、どの回転で走って居るのか掴みにくいほど洗練されているのだ。

オーリスのダウンサイジングはまるで「可変排気量」的な感覚。ターボがそれほど自己主張しないで黒子に徹する。このあたりがフォルクスワーゲンのTSIエンジンと明確に違う。

ターボが効かない1500rpm以下では矢張りただの1.2Lだが、ターボが効き出す1500rpmを越えると、1.8L、但し4000rpmを越えると、1トン以下の1.5L程度(初代のヴィッツRSくらい)の感覚である。なお、レッドゾーンはやや低めで5500rpmである。まるでディーゼルターボのようなタコメータ・・・。

そう書くと、ではいきなりターボが効いて走りにくいのではないかと思われるかもしれないが、そんなことは無く、CVTがちゃんとカバーしているから乗りにくさは殆どない。ハイブリッド車ばかり熱心なトヨタがここまで純内燃機関の素晴らしいエンジンを出してくるとは思わなかった。

このエンジンに惚れたのであれば、オーリスを買っても後悔はしないはずだ。

 ■ゴルフ・トレンドラインの欠点を見事に衝く巧みな商品企画【進化型CVT VS DSG】

兎角このクルマはゴルフの真似クルマではないか、と批判されがちだ。いい加減に見ると確かに似通っている。値段までゴルフのトレンドラインと似通っているのは確かに痛い(両方とも新車時価格は260万円)が、乗ってみて、細かく見ると案外そうでもないことが分かった。

相変わらず日本のカージャーナリスト達はポロ、ゴルフに軍配。彼らの多くは「一点豪華主義」のクルマは与しやすいからだ。しかし、日本のドイツよりもずっと低い速度域で使い、10年10万キロまで乗ることを考えて論じれば、オーリス120T、なかなか「ゴルフの真似クルマ」と言い切れないものがあり、日本の道でトレンドラインとの戦いだったら、結論を言えば、オーリスが優勢。

この優勢と思える点をご説明したい。

オーリス120Tのこのエンジンの好さ、意外にも助手席の人の方が分かりやすいと思う。何しろ中回転(1500〜3500rpm)で恐ろしく静かである。ゴルフ以上に同乗者と会話を楽しむことが出来る。

 それ以上に初代とは格段に良くなったのがCVTの扱いやすさ。そもそもトヨタのCVT車は後発である。初代・プリウスに載せられたのが初めてだから、1997年。次に些か実験車の感があるが、Opaに載せられ、次に2002年のマイチェンのヴィッツに載せられた。以後、量産にドライブが掛かり、オーリスにも載せられることになる。が、初代オーリスも初期型のリファイン版なのは間違いない。それゆえとても扱いにくかった。出だしがワンテンポ遅れ、いきなり加速。こんな感じだった(特に1500cc。でも1800ccはもっとマシ)。それが隔世の感だ。多分直噴ターボエンジンと相性が良いのだろうが、適度に走りやすいセッティング。というと個性が無いのかと思うかもしれないが、これがゴルフのトレンドラインに搭載されている7速DSGと比較してしまうと分かりやすい。

あのVWのDSG、ポロ、ゴルフのトレンドラインのDモードで日本の街中でイージードライブは意外と難しい。流石にハイラインになるとそんなこともないのだが、同価格帯のゴルフ・トレンドライン、ポロ・コンフォートラインになると、ギクシャク感は慣れるしかないのかと云いたくなるほど。なぜこうなるのかというと、日本の速度域だとどうしてもDSGは高めの回転数を選びたがる。その上、いざ中〜高速域の加速を目指そうとすると、今度はシフトダウンしてくれない・・・。

 「そんなに加速したければ、DSGのMTモードを使えよ。」

ということか。これは実質当時は300万円もするクルマのセッティングに相応しくないとクルマにそれほど興味が無い多くの日本人は感じてしまうのではないか。勿論オーリスにもちゃんと擬似的だが、7速のティプトロタイプのCVTがある。が、それを使わずともDモードでそのまま走れるほど洗練されている。

但し、VWのせい、というのはVWに気の毒だ。日独の速度域の違いだろう・・・。

オーリスの場合、そんな不快さもCVTが見事にカバー。どんなにラフな運転にもなめらかにこなしてくれる懐の広さがある。この点はゴルフと乗り比べてみると、多くのドライバーは「オーリスの方が乗りやすい」という判定を下すのではないだろうか。強いて欠点を挙げるとしたら、ほんのわずかなターボラグ、1500rpm以下でのリスポンスの鈍さだろうが、自分のように重箱の隅を突くような人間以外、ラグと感じる人は殆どいまい。勿論DSGほどの癖はない。オーリスはアグレッシヴなデザインとは裏腹にゴルフと比較して、走りはジェントルのひとこと。

オーリス120Tはゴルフ・トレンドラインの弱点を巧みに衝いて来た。それでいて、トヨタ車らしさも健在。価格帯は正直言って、ゴルフと一緒だから強気な価格だが、代を追うごとに改悪するモデルもある中、進化している点は評価できる。

トヨタの主査の人達も「動力性能、実燃費ではオーリス120Tが優っていると思いますし、扱いやすさも上だと思いますが、流石にハンドリングではまだゴルフに勝てないですね。」と仰せだ。今度はハンドリングにも手を加えて頂きたい。ジェントルさとワイルドという一見相反する部分が高い処でバランスしているクルマ。それが名車というやつだろう。今後も期待したいところだ。

最後まで御覧頂きまして、ありがとうございました。

もくじはコチラ左斜め下

https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1975988311&owner_id=58808945

2 5

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する