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2015年05月18日08:33

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プロヴァンスを歩く(2) 第一日目 Auribeau村からVitrolles en Luberon村まで22km



2015年 5月1日

9時にホテル前にタクシーが来るよう手配してあった。 定刻どうりに車に乗り込み暫く行くとメーデーにも関わらず一軒だけ八百屋が開いているの見えたからタクシーを停めさせバナナとオレンジを二つづつ買って3本のペットボトルに500ccづつ入れた水の横に詰め込んだ。 昼食はそれとオランダから持ってきたグルテン抜きのパンとグルテン抜きのシリアルである。 肉は夕食で補給することにして昼食には精々塩漬けの生ハムぐらいだ。 他の連中はパン屋で買った焼きたてのバゲットで缶詰のパテや魚、チーズで昼食にするのだ。 ワインがあればそれでピクニックになるのだがそんなことをしていては歩けない。 

タクシーで麓から標高で3ー400m上がったAuribeau村は村といっても教会も店も何もないところだ。 標高600mぐらいのところだろうか、そこから1時間ちょっと厳しい坂を登り続けて1050mの峠に出る。 そこからなだらかな稜線にそって登り降りを繰り返しこの日の最高点1100mで昼食にする。 小雨が降りそうな気配があるけれど昼食の間は降らなかった。 見晴らしのいいところを歩いていると何十キロか彼方にポール・セザンヌが何回も描いたサント・ヴィクトワール山が見える。 あの山は画では下から眺めたものを描いたものだから富士山や他の山のように一つ聳えたもののように見えるけれど実際は山脈の端に突き出た崖のように見えるその先端だ。 このGR9のルートにあの山も入っているので数日のちには我々もあのサント・ヴィクトワール山を目指して麓から登り頂上に着いてからは後ろに続く山脈を歩くことになる。

あちこちには高山植物とはいかなくとも平地よりは小ぶりの草花が咲いていて写真に収めたい気がするのだが先は長く他と歩調を合わせて歩かねば2,3分のこととしても遅れると2,30メートルは遅れてしまいはっきりした径だと問題がないけれど人の歩いた跡がはっきりしなくブッシュや岩場で見通しが利かなそうになると逸れかねないのでそうならないように歩を進めるためには今回は随分と草花の写真を逃した。 GRルートはオランダでも上が白、下が赤の小旗のように刷毛で二本横に塗った印であるけれど印されたその位置がまちまちだ。 分岐点になると岩や木にそれが見えルートでない側には赤白のバツ印がついているのだがそれも必ずしも手前からみえるばかりでなくだいぶ進んでどこかに小さくある、というようなこともあるから時には宝探しのようにして探さなければならない時もある。 この印を辿るのにはもう何年もチロルのアルプスを歩いて慣れてはいるけれど1000m前後のこのあたりでは立木、ブッシュ、岩場、林が混在してあちこちに曲がりくねっていることもあるので慣れなければなかなか判別するのが難しい。 とはいっても先頭を行くリーダー格のヤープに任せておけば安心なのでこちらは足元に気を付けてひたすら歩くのみだ。 2週間もある長丁場では初めの2,3日がきつく、そのうち徐々に体が慣れて楽しめるようになると聞いている。 なにせこちらは膝を痛めて10日間何もしていないで歩き始めるのだから少々の不安もあったけれど登り坂、稜線の上下には別段負荷とは感じなかったものの午後3時を周って下り坂が続くと厳しくなり始めた。 ストックをついて左足をかばうようにソロソロと下りるものだから時間がかかり他から大分遅れる。 登りは何ともないけれど下りがきつかった。 それに加えて村の宿舎まで1kmのだらだら下り坂になると膝が痛み疲れが一時に出てくるようで歩くのが少々辛かった。 これは最後まで同じで奇妙なことに微かに傾斜がついて下っている村の道が一番きつかった。 人から見れば山から下りて疲労困憊のように見えるけれど実際はそうではなく膝の痛みに耐えながら歩いているだけで登り坂、急な坂なら何でもないというようなものだった。 膝の問題はその後も続く。

第一日目の22kmは堪えた。 ただ登って下りるだけならまだしも間にいくつも上り下りがあり一日の最後がかすかに下る村道というのが自分にはきつかった。 これが登りで村にたどり着くというのなら皆と同時に到着できるのだがどの行程も一日の終わりはこれだから一人だけ数百メートル遅れて宿に着くというのが少々自分の誇りに埃がついたようでもあった。

Vitrolles en Luberon村の一家族が鍵をもつ宿舎は古い家を改造したもので泊り客が来るたびに通いで夕食、朝食の準備をしに来るようなところだった。 子供向けの二段ベッドが二階に4つ、8人収容の部屋に通された。 入口からキッチン兼食堂を通って上がり下がりするのがきつく、なんとか手すりを伝いながらのへっぴり腰で移動した。 シャワーといっても粗末な隅に温水がでるものだったけれどシャワーの蛇口をひっかける粗末な針金も壊れておりいちいち手で持って浴びなければいけないようなものだった。 賄のやたらと量だけは多い粗末な夕食を腹に入れて一息ついているともう9時をだいぶまわっており皆早々にそれぞれ二段ベッドの下に自分の寝床を作り頭をぶつけながら寝床に潜り込み明日に備えた。 それぞれ鼾をかくようだが自分には何も聞こえなかった。 目をつぶれば次は朝だった。 
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