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2015年03月24日16:22

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【バレエ】谷桃子バレエ団「海賊」(22日)

以前、「海賊」の全幕生舞台なんざ珍しくもないぜ、
と偉そうに記したが、
版のヴァリエーションとなると多くはない。
いや、少ないです、はい。(笑)

ボヤチー版、ルジ版、マリインスキーのその元版に熊版。
あとはホームズ版くらいだろうか。
ヌレエフ版はガラの断片映像しか観た記憶がない。

チラシの解説によると、今回上演されるのは、
マリインスキー出身のアリエフさんが手がけた、
コルパコワさん監修の新改訂版だという。

お教室系の発表会公演も、
アウェー感をひしひしと覚えつつ、
たまに楽しんでいるが、
(ごめん、ほぼゲストが目的です)
そういえば谷バレエ団は観たことがない。
いい機会だからと、チケットを取ってみた。


プロローグは嵐の海。
波と風に翻弄される海賊船と男たち。
しかし、難破はしない。(笑)

場面は市場、奴隷の競売も行われている。
変装したコンラッドたちは、
買う気もないのに応札して値段を釣り上げ、
パシャに無駄金を使わせようという魂胆。
メドーラとギュリナーラは、
すでにランケデムの商品という設定。

パシャが値段の交渉をしているさなか、
コンラッドとメドーラは視線を交わし、恋に落ちる。
お、バレエの王道だぞ。(笑)

ランケデムは金を、パシャは美しい奴隷を手に、
それぞれ笑顔で市場を後にする。
去り際、パシャが2人の頭に薄絹を再び掛ける様子は、
大事な宝物を大切に箱にしまうかのようで、
ちょっと微笑ましい。(笑)

基地の洞窟に戻るもコンラッドはメドーラを忘れられず、
眠りに落ちると彼女の夢を見る。群舞も交えてのPDD。
目覚めた彼は、メドーラを奪うべく宮殿へ向かう。

ここまでが私の観た1幕の流れで、
以下はプログラムのあらすじの要約。

2幕はパシャの宮殿がメインで、
メドーラとギュリナーラは友人でも姉妹でもない、
パシャの正妻の座を狙うライバル。

オダリスクたちも巻き込みながら、
ギュリナーラは策謀を巡らせてパシャの関心を引こうとし、
その隙を突いてコンラッドは宮殿に侵入、メドーラをさらってく。

ギュリナーラは2人の逃亡に気付くが、
このまま逃げてくれた方が彼女にとっては都合がいい。
しかしメドーラはパシャの一番のお気に入りだから、
取り戻そうと追っ手がかかるのは間違いない。
そこでギュリナーラはメドーラに化け、
パシャの夜這いを待つ。子供に見せていいのか。

場面は再び洞窟基地。
ギュリナーラの目論みは成功し、追っ手の心配はなくなる。
メドーラとコンラッドは愛を誓い、海賊たちも2人を祝福する。
エピローグとして、2人の船出。

え? アリは?
と思った方、こちらをどうぞ。(笑)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=324015318&owner_id=3210641

アリエフさんは、著名な在版に手を入れたのではなく、
サン・ジョルジュ/マジリエの初演版を紐解き、
独自の省略と再構築を図ったようだ。

だからアリが登場せず、
ギュリナーラが権謀術策を巡らすのは、
斜め上を狙った色物改訂を目指したからではなく、
むしろこちらの方が本家筋に近いと言える。

しかし、観てない者が言うのもなんだが、
物語的にこれで盛り上がったのだろうか。
どこか読み飛ばしてしまったかと、
読み返してしまったよ、あらすじ。

最後の洞窟場面は、ちびからシニアまで、
生徒を総動員しての群舞とヴァリだろうから、
踊る側とその家族は楽しいのかもしれないが...。


生オケならなんでもいい、という人がいるように、
生舞台至上主義者もいるようだが、
生舞台鑑賞と自宅でのDVD鑑賞には、
それぞれ長所短所がある、と私は思っている。

自宅鑑賞は、いろいろな意味でとにかく気楽だ。
内容、演奏ともレベルの高いソフトが多く、
気になる部分があれば繰り返し観ることができ、
鬱陶しいDQN観客に煩わされることもなければ、
トイレや往復時の交通トラブルの心配もない。

一方、劇場での鑑賞は、
五感のすべてを総動員するので、
臨場感は自宅鑑賞の比ではないし、
舞台上のどこを観るかは自分で決められる。
キャスト違いや日替わりの解釈違いを
見比べる楽しみもある。

しかし劇場鑑賞にはリスクが付きもので、
まず希望の席を取れない場合がある。
良席をゲットできても、マナーを知らない観客のせいで、
舞台に集中できないこともある。
そして舞台やオケの出来は、観てみないとわからない。

大枚(S席1万2000円)はたいた席は
申し分なかったのだが(+1点)、
運の悪いことに、妙に座高の高いカップルが前に来たため、
視界がかなり制限されてしまった(−1点)。
しかも、となりのオヤジも見づらいらしく、しきりに動き回り、
あげく人にげしげしぶつかってくる(−1点)。

オケは東フィルで、いつになく真面目に演奏していたから+1点。
舞台装置は、デザインの好みを別にすれば、
それなりに凝っていて面白かったから+1点。

初めてみる新演出は興味深かったので、観る前は+1点。
在版とは異なる視点からのアプローチも+1点。
しかし冗長でスピード感に欠け、盛り上がらない演出は−1点。
振付もアマチュアが無理なく踊れるよう、
多くの場面で簡易化されていたから−1点。

踊り手たちは、みな一生懸命頑張っていたから+1点。
でも、私は家族でも親戚・友人でもない、
なんのしがらみもない、ただの観客。
重視するのはチケット代にみあったパフォーマンスを、
バックしてくれるかどうか。
群舞−1点、ソリスト−1点、そして主役−2点。

差し引き−2点。

2幕以降、挽回する要素も見当たらなかったので、
劇場を後にすることにした。


群舞とソリストの中には、
普通に踊れそうな人も数人みかけたし、
主役の2人はさすがに群を抜いていたが、
技術的にはKのアーティスト級。

メドーラ役の永橋あゆみさんは、
ここのプリンシパルだけあって、
丁寧でそれなりの踊りを見せてくれたが、
コンラッド役の三木さんが劣化していたのが痛い。

彼を最初に見たのは、5、6年前だろうか。
NBAか牧に客演していた時だったと思うが、
ロシアで学んだだけあって、力強さに加え、
大きくのびやかな美しい動きも兼ね備えた、
将来が楽しみな踊り手だった。

しかしこの日は、
回転や跳躍の勢いはあるものの、
脚や腰に悪そうな着地、
小さく美しくない空中姿勢、
パからパへの移行が乱れるなど、
あまりの変貌ぶりに、落胆を通り越して、
驚きの方が大きかった。


前日のKが1万3500円だったから、
あの内容で1万2000円は、数字だけ比べると、
ぼったくられた気がしないでもないが、(笑)
これは上野のハコ代も影響しているのだろう。
あそこは新国より安いというだけで、
規模が大きいから金額自体はけして安くはない。

しかしロシアのマイナーとはいえ、
ここよりはレベルの高いバレエ団が
7000円以下で観られることを思うと、
よほどツボにはまるゲストでも呼ばないかぎり、
もう一度観ることはないだろう。

残念ながら、高い勉強代となってしまった。
名の知れた老舗バレエ団のひとつだから、
それなりに見せてくれるだろうと、期待していたのだが。

もっと規模が小さい新興のマイナー・バレエ団にも、
レベルの高いところはあるし、
ここにも身体能力は高そうなダンサーも複数いたから、
おそらく指導層/教師の質が低いのだろう。
上を目指したい人は、移籍という選択肢もありだと思う。

ダンサーの家族は仕方ないとして、
付き合わされている親族友人たちには、
ほぼ同じ価格の、Kやマールイの「海賊」を、
みせてあげたかった。
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