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2015年03月02日10:25

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【バレエ】モンテ・カルロ・バレエ「LAC」(27日)

「幸運を祈る。ただそれだけを言おう。」

...さよなら、ミスター。(泣)



新国は2015/16シーズンに、
ワーグナーの「ラインの黄金」“新制作版”を上演する。

「ニーベルング」の第1作だから、
続きも予定しているのだろうが、
それを聞いてお師匠さまがお怒りのご様子。

このシリーズ、新国は立ち上げ時期の目玉商品として、
4部作を2001年から4年がかりで制作し、
2009年頃に再演されているが、3回目はなかったはず。

...ふ〜ん。ダメにした舞台装置って、
これのだったのか。(笑)


「LAC」27日と28日の公演では、
三浦さんを“聞き手”に、(笑)
芸監マイヨーさんのプレトークがあった。
例によって半分近くは三浦さんの熱弁だったが。

三浦さんの話も文章で読む分には面白いのだが、
こういう場で聴衆が聞きたいのはゲストの話なわけで、
空気を読み自重してほしい。
でも、あの歳になると、もう無理なんだろうなあ。

しかし老害の多くは、
本人の性格が最大の原因ではあるけれど、
それを許してしまった、
事なかれ主義の取り巻きのせいでもあるんだよな。

マイヨーさんの話の内容も、
すでにあちこちで語られているもので新味はなかったが、
なるほどと思う事柄を改めていくつか箇条書きすると、

・バレエのテクを披露するのではなく物語重視。
・トウ・シューズも道具ではなく、ダンサーの体の一部。
・基本、動きに男女の違いはない。
・人間と鳥の違いは「手」。(さまざまな用途、使い方がある)

2011年12月にリリースされたばかりの、
「LAC〜白鳥の湖〜」の日本初演、初日を楽しんできた。

タイトルの「LAC」、仏語の「湖」なのか、
それとも「白鳥の湖(LAc de Cygne)」の頭文字なのか、
どちらなのだろう。(プログラムには説明がない)

版権が絡むせいか、
バレエ公演のテレビ放映は少ないが、
なぜか彼の作品はよく目にする。

この「LAC」もNHKですでに放映されているので、
御覧になった方も少なくないと思うが、
広義には「白鳥の湖」の改訂版ということになる。

ただしマイヨー版だけあって、
名作をモチーフにしたまったくの別物。
振付も原典を彷彿させる動きが織り交ぜてあるが、
基本はコンテである。
会場では親子連れの姿を何組か見かけたが、
わかって来ていたのだろうか。

演奏は録音で、耳に馴染む音源だったから、
どこが演っているのか知りたいのだが、
プログラムには見当たらない。

聴いていると、
見慣れた映像が時折脳内でオーバーラップするが、
順番を入り替えたり、短いフレーズを重ねたり、
リズムをダンサーに合わせてではなく
演出として変化させるなど、かなり手を加えている。

脚本にはジャン・ルオーさんを起用しているが、
マイヨーさんがルオーさんに依頼する際、
「“白鳥の湖”って知ってる?」とたずねると、
「さて。女性ダンサーが腕をばたばたさせるやつだっけ?」
とマイヨーさん、面白そうに語る。(笑)
知らないでいてくれた方が、原典から離れて、
万人受けする作品に仕上げてくれるだろう、
という思惑があったという。

というわけでストーリーも、
「白鳥」をモチーフにはしているが、
ネットのまとめサイト風に記すと、
幸せに暮らしていた親子が、
ピクニック中に出会った放置子と関わったら、
キチママ親子に執拗に絡まれて、
家庭を台無しにされてしまった、というもの。

冒頭はモノクロ映像が薄幕に投影され、
王子が幼い頃の話が綴られる。
親子3人でピクニックに出かけると、
王子より少し小さい、白い服の少女と出会う。
彼女の出自はまったくの不明なのだが、
オディール(黒)の対偶、
純粋・無垢の存在ということらしい。

そこへ黒ずくめ・サングラスという出で立ちの、
いかにも怪しい子連れ女性が現れ、
(子供は白服少女と同い年、衣装が黒)
王子親子と白少女に絡んだあげく、
白少女を拉致して去って行く。

王さまがいるのに助けないんだ、というのは置いといて、
映像は成人した王子の過去夢だったという設定で、
1幕は親父(王さま)と息子(王子)の葛藤、
婚約者選びの舞踏会、
オディール親子の乱入などが描かれ、
オディールも含めて、
王子はすべての女性を拒否って逃走し幕。

花嫁候補が、
お茶目な双子やお色気担当、S系姉さん等多彩で、
さらに王さまと王子が
揃ってオディール親子に鼻の下を伸ばし、
王妃さまの焦る様子がコミカル。(笑)

休憩を挟み、2幕は森の場。
成長したオデットが登場するが、
この時彼女は手先に風切りを模した、
短い羽を付けている。

この羽の材質と形状がチープで、
さながら使い捨てのポリエチレン手袋...
というのは見なかったことにして、
後半これを取ることにより、
鳥から人間に変化したことが表現されている。

白鳥群舞が本物の白鳥のように怖いとか、
オディールの母親(夜の女王)が
輪を掛けて不気味とか、見所満載。

休憩なしの3幕は、再び宮廷場面から。
王子の花嫁発表の場で、
花嫁候補はなぜか皆白鳥をイメージした、
ベネツィアン風のドミノマスクを着けている。

オディールもオデットに化けて白い衣装なのだが、
デザインがノースリーブのワンピースミニ、
下半分に三角形の端布をたくさん取り付けるという、
なかなか前衛的なもので、
この端布が適宜灰色や黒の布に交換され、
オディールの正体がばれる、という流れ。

最後は親子揃って高らかに嘲笑するくだりは
古典と同じだが、
オディールが逃げ遅れて掴まってしまう。
場面転換の直前、王妃さまに頸を締められる様子が、
シリアスな場面のはずなのに、なぜか笑いを誘う。

場面は再び森となり、
追ってきた王子は逆に夜の女王に威嚇されるが、
そこに王さま、王妃さまが、部下とともに
オディールの遺骸を持ってくる。

親子揃って女王に立ち向かうのかと思ったら、
亡骸を置いて去ってしまい、
王子のみが残されるのはなぜだろう。

嘆き悲しむ夜の女王は、部下に命じて
(彼女には部下が2人いる)
ぼろぼろになったオデットをひっぱり出し、
王子を嘲笑う。

最後はオデットを抱きしめて崩れ落ちる王子、
悲哀の表情を浮かべた女王は、
黒い突風とともに夜の闇に消えていく...。

ここのバレエ団で顔と名前が一致するのは、
コピエテルスさんと小池ミモザさんくらいで、
お目当てのコピエテルスさんも引退してしまった。
日本公演限りの復活も期待したが、別人だった。
(プログラムに紹介があるのは、冒頭の映像用?)

しかし、後継のモード・サボランさんもなかなかの実力者で、
映像に残されているコピエテルスさんに負けていない。

また小池さん以下主要キャストは
映像化もされたファースト・キャストだが、
前述の夜の女王と王子の腹心が新顔で、
腹心役加藤三希央さんは温情出演かと思ったら、
これまた実力により勝ち取ったものだった。

キリアンさんらが好む(?)、
奇っ怪で醜悪とすら思える振付が少なく、
物語性があり、音楽も基本は原典に忠実、
という要素も大きいが、
ここの踊り手たちは、男女ともコンテ系ダンサー特有の、
肩周りの筋肉が発達した逞しい体型をしており、
しかもその鍛え方は半端ないため、
すべての動作がコントロール下にあり、
曲と同調した緩急制動自在の動きは爽快ですらあって、
苦手なはずのコンテの踊りがほとんど気にならない。

ノイマイヤーさんをはじめ、
現代振付家の作品は完成度が高い分、
踊り手に許されたフリーハンドの部分が少なく、
今回のサボランさんも、コピエテルスさんと
印象が大きく異なるところはなかった。

こうなると、キャスト違いで何度も観たい、
とはならないが、作品としては面白く、
「白鳥」の異種バリエーションのひとつとして、
いちどは御覧になることをお薦めしたい。
(ブルーレイ/DVDも販売している)
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