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2014年12月01日11:41

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小学生の時に見た、“少女マンガ”のようなミュージカル「リリー」(1953)に、懐かしさと当惑とを感じる。

監督はチャールズ・ウォルターズで、主演はレスリー・キャロンとメル・ファーラー。上映時間81分という小品です。原作は「ポセイドン・アドベンチャー」のポール・ギャリコが書いた短編小説だそうです。小学校3年生のころに、叔母に連れられて見ました。叔母はこういうファンタジーが好きだったな。

物語は、両親を亡くしたリリー(レスリー・キャロン)が、父親の遺言に従って父の知人を訪ねて町にやってくるところから始まります。でもその知人も亡くなっており、サーカスのマジシャン(ジャン・ピエール・オーモン)の紹介で給仕となります。しかしそのマジシャンの手品に見とれて仕事をおろそかにし、あっという間にクビになる。リリーは世をはかなんで自殺しようとしますが、そこを人形劇の人形に呼び止められる、という展開です。

人形使いのボスがメル・ファーラーで、戦争で脚を負傷してダンサーをあきらめ、人形劇をやっています(原作は「世間を憎む男」というような題名なので、本来の主役はこっち)。その相棒がカート・カーツナーでした。このころから見ていたんだ。だから「脱走大作戦」のとき、なじみの顔に思えたんですね。←テレビにもいっぱい出ているから、それで見覚えがあると思っていました。

マジシャンのジャン・ピエール・オーモンは、あんまり顔を覚えていません。そもそも覚える気がない。「四時の悪魔」に出ていたけどほとんど記憶にないし、ティナ・オーモンのパパというだけですね。マジシャンの相棒がザザ・ガボール。あのころの37歳は熟女でしたけど、今見直すとまだまだ“現役バリバリ”ですがな。

ポイントは、少女マンガが描く田舎娘丸出しのレスリー・キャロンが、自分の幻想の中でさっそうと踊るシーンでしょう。レスリー・キャロンを知らない人が多いと思いますので説明すると、ティム・バートンの新作「ビッグ・アイズ (2014)」に出てくるイラストのような目を持った少女だと思ってください。そんな田舎少女がさっそうと踊り出すシーンでは、衣装もメイクもがらりと変えての鮮やかな変身ぶりに驚きます。そして彼女の背中が色っぽい(写真3はポートレートで映画には関係ありません)。なに? 少女マンガみたいなファンタジーにいやらしい感情を持ち込むなって? そういう倫理観は1980年以前に置いてきました。

そもそも、終戦直後にバレエ映画「赤い靴」が日本でヒットしたのは、あの時代の野郎どもが“芸術鑑賞”という御旗を掲げて、モイラ・シアラーの太ももを拝みに行っただけのことです。なに? さっきから喚いているの、僕だけ? そうやね、アニメブームだってこの手の人気が支えたんだから、今やあたりまえの事実ですよね。

というような懐かしさにまみれた劣情的トリビアはどうでもいいのです。僕が愕然としたのは、映画の構成、展開、そして画像が、みごとにあのアメリカ黄金の50年代という定型に収まっていること。僕はあの時代を体験しているから、そして叔母の思い出とともにこの映画を見直すからいいけど、それを体験していない人にはどういうふうに見えるんだろう。

主題歌の“ハイリリー、ハイロー”をじっくりと聴かせるのはいいのですが、そして先述の幻想シーンもたっぷりと見せてくれるのですが、そのテンポ、その色彩感覚、振りつけからの印象、そのどれもが“50年代スタジオシステムで作りました!”というメッセージに充ち溢れているのです。それに当惑している僕自身の立ち位置って何?っていうことです。虚しいCG大作なんか要らんと言っている僕も、しょせん21世紀の人間になったという意味もあるでしょう。レスリー・キャロン扮する田舎娘が、“真実の愛に目覚める”というおとぎ話を、やすやすとは信じられない時代に生きているという問題でもあるでしょう。いやはや、なんとも…。
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