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2013年06月10日13:34

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【バレエ】Kバレエ「ジゼル」(7/8日)

ここも今年は「ジゼル」だそうです。
http://www.moeginomura.co.jp/FB/

例年は3演目を交互にやるので、
カレンダーをにらみつつ悩むのですが、
今年は1本に集中するそうです。

ちなみにゲストの下村さんの日は、
7月31日と8月2日だったかな?
行こうと思った方は、事務所に確認してくださいね。
 *キャスト表が発表になっていました。

ここの群舞は鍛えられているし、
霧でも出た日には、最高の舞台装置です。

   *    *    *

「まさか熊さんのアルブレヒトに泣ける日がこようとは!」

と、お師匠さま。

その意味はのちほどとして
帝政時代のロシア・バレエは演劇性も重視されていて、
それが英国のお家芸となり、その分派のひとつがKバレエなんだね、
ともおっしゃってました。

熊版では、他の版では省略されることの多い、
ベルタ母さんのマイムもしっかり再現されているほか、
公爵たちには水ではなく絞りたての葡萄ジュースが振る舞われ、
剣を発見したヒラリオンは直後に村人に見つかり、
思いきりキョドって不審がられるなど、
細かい演出もいろいろあります。

また群舞たちも葡萄を搾りながらつまみ食いしたり、
ジゼルはバチルダに野の花をプレゼントするのですが、
受け取ったバチルドはさっさと侍女に渡したかと思うと、
嫌そうに指の泥を落とし、侍女たちは侍女たちで、
「あなたにあげるわ」「いらないわ、こんなの」

...芸が細かい。(笑)

熊版の村人の踊りは6人(パドシス)で見応えあるのですが、
中でも目を引いたのが、橋本さんと池本くん。
橋本さんは調子が戻ってきたようです。
池本くんは、ようやく踊りと顔が識別できた。(笑)
前は道化で、しかも2人いましたからね。

ベルタはロイヤルからの客演、ゲイル・タップハウスさん。
1975年に入団、現在もミストレスとして活躍中だけあって、
マイムも他の演技もセリフが聞こえてきそう。

バチルドは山田蘭さん。
シンデレラの背の高い方のお姉さんです。
彼女は演技をウリにしていくのかな。
同僚を付き従わせて舞台上を歩く姿は、
どことなく楽しそうです。(笑)
しかもよくありがちな高慢な姫さまかと思ったら、
ひとひねりありました。

花束の時だけでなく、
首飾りを貰ったジゼルが手にキスしようとすると、
音速で(手を)引っ込めたりと、嫌な感じいっぱいなのですが、
ジゼルの様子がおかしくなると、心配そうな素振りもみせる。
もしかしたら根は良い人かもしれない、
当時の階級制度とはこういうものだ、
と観る者に想像させるのです。

そういえば、首飾り、侍女に外させてました。
土曜日は侍女役の人が落としてしまいましたが、
慌てずにナイスキャッチ。

演出的? にちょっと残念だったのはウィルフリード。
冒頭も2幕の頭も、聞き分けがよくて影が薄いのです。
従者としてはこんなものかな、とも思いますが、
もっとね、いろんな演技をする人もいますからねえ。

ミルタは金曜日が白石さん、土曜日が井上さん。
2人とも威厳が足りず物足りませんでしたが、
白石さんの方が少し良かった。彼女は最初緊張していて、
ドゥウィリの方が上手いかも、と思わせる出来でしたが、
次第に本来の力を出し始めたのが〇。

それにしてもここのダンサーたちは、
上から下まで本当に鍛えている。
ヒラリオンを始末したあと、
少人数に分かれて捌けて行くウィリたち、
他のバレエ団だと、後のグループほど足音がうるさいですが、
ここは最後まで静か。

足音が静かというのは、観客だけでなく、
ダンサー自身にも良いことなんですよね。
(+ダンサーの力量を測る目安にもなる)

足音がしないということは、
着地の衝撃をうまく吸収しているわけで、
膝や腰への負担が少ない。
つまり、怪我をしにくい、
ダンサーとしての寿命が長くなるわけです。

でも、そのためには筋力を鍛えなければならず、
やり過ぎるとアジア人は見た目で不利になるから、
その兼ね合いが難しい。

もっとも、最近は日本人もスタイルが良くなってきたし、
割り箸みたいなダンサーよりも、
太もものしっかりしたダンサーの方が、
ダイナミックな踊りもできれば、動きも繊細で滑らかなので
個人的には好きですが。

話を舞台に戻すと、Kの至宝、キャシディさんは、
ヒラリオン(金曜)と公爵でした。
上背と広い肩幅のおかげもありますが、
ともに押し出しのある名演で、
公爵の時など、立っているだけでも存在感がある。

かと思えば、寄り添うジゼルとアルブレヒトの間に、
剣を片手に割り込む場面では、
大抵の人は両手に均等に力を込めて2人を分けますが、
彼はジゼルを押す方の手、力を弱めるんですよね。
ヒラリオンはジゼルが好きだから、どんな時でも乱暴にできない。

これはシェスタコワさんのミルタにも通ずる演技で、
ヒラリオンやアルブレヒトの時と、ジゼルの時では、
同じ拒絶でも、ジゼルに対した時の方が優しさがある。
ともに辛い境遇を経た仲間ですからね。

キャシディさんの対偶は、ふた役とも遅沢さん。
彼は背も高いし、威圧感を出せる人なので、
適役ではありましたが、キャシディさんと比べてしまうと、
薄味というか、無難にまとめているように思えてしまう。

1幕のラストでは、ナイフや剣で自決しようとするアドリブも見せ、
それなりに考えてはいるようだけど、
小手先の技だけでなく、キャシディさんの名演技を、
彼が元気なうちに、もっともっと吸収してほしい。

さて、主役ですが、
金曜日は神戸さんと熊さん、土曜日は荒井さんと宮尾くん。

女性は2人とも観るたびに、
「よくここまで伸びてくれたなあ」という思いで一杯になります。
神戸さんは、いまの佐々部さんのように、
なぜそこまで、というほど配役されていたにもかかわらず、
いまひとつ伸び悩み、荒井さんも直線的な動きが好きになれず、
主役を観るのを避けていた時があったからです。

神戸さんは、演技派の彼女にしては2幕の解釈が無表情すぎて、
ジゼルにというよりは、熊さんの方にうるうるきましたが、
荒井さんのジゼルには、本当に泣けました。
鐘の音に続く場面では、
ほとんど動かず、表情もわずかにしか変わらないのに、
驚き、安堵、微笑み、そして悲しみという感情の変化が、
明瞭にわかるのです。

宮尾くんは、そろそろ分岐点かもしれません。
踊りは、熊さんのコピーというには物足りない。
大きくて、のびやかだし、丁寧なのですが、
観る者の目を引きつける、わくわく感が足りない。

調子が良い時の橋本さんや池本くんは、
基本形からは多少逸脱するけれど、複数で登場すると、
いつの間にか彼らの姿ばかり追ってしまいます。
あんな感じの踊りがほしい。

では演技が達者かというと、熊さんの劣化コピーみたいで、
こちらも物足りなさを感じてしまう。
上背もあり、イケメンな次世代も現れてきているので、
ここは先輩としての意地をみせてほしい。

今回の主役は、やはり熊さんでした。
「ジゼル」なのに。(笑)

Kバレエを避けている人は、
大きく分けて、2タイプあるようです。
ひとつは、何度も書いている、
色物バレエ団と思い込んでいる先入観の人々。
もうひとタイプは、熊さんのキャラが嫌いな人。

実は、私もお師匠さまも、怪我をする前の熊さんは、
そんなに好きではありませんでした。
テクニックはあるけれど、
「俺様」が鼻についてしまうからです。

たとえばアルブレヒト、
マラーホフさんのようにジゼル大好きでもなければ、
ルグリさんの絵に描いたような貴族様でもない。

可哀想なのはジゼルではなく、
好きな娘に死なれちゃった俺様。
あくまでも俺様が主役、哀れなのは俺。
はいはい、勝手に浸ってなさいね、という感じ。(笑)

ところが!
今回のアルブレヒトは、なんと! マラーホフさんでした!
まさか熊さんに、マラーホフさんの姿がかぶる日が来ようとは。

軽いところはあるけれど、
ジゼルを好きという気持ちは本物で、
具合が悪くなるとすごく心配する。

バチルドと対する時はとても気まずそうで、
1幕のラストもさっさといなくなるのではなく、
いつまでも、最後までジゼルから視線を離さず、
2幕の落ち込みようは涙を誘います。

余談ですが、バチルドにキスを強要される場面では、
手ではなく唇だったのは新鮮でした。
宮尾くんは手でしたから、熊さんのアドリブなのかな。

最初は高貴な感じが少なく、
貴族というよりもフランツを観ているようでしたが、
村人とともに踊り、村娘に恋をする、
変わり種の貴族様というのは、
案外このようなタイプなのかな、という気もしてきます。

また2幕でジゼルの気配を察するにつれ、
昂揚していく気持ちの変化が、
踊りから伝わってくるのは、さすが熊さん。

ラストは、彼がお墓に供えた花束と、
ジゼルがもってきた花束を、アルブレヒトが抱えますが、
その姿は、あたかもジゼルの亡骸を抱えているかのようで、
アルブレヒトが十字架の前から舞台中央に後ずさる際、
一輪、二輪と落としていく演出が、例えがナニで恐縮ですが、
太陽に照らされた吸血鬼の骸が土に帰っていくのに似て、
ジゼルが本当にもう、この世の者ではなくなってしまったことを、
視覚的に暗示しているかのようでした。

...思い出すだけで、うるうるきます。(泣)
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