■CMとは裏腹に至って常識的な車■
トヨタ自動車のCM
としては何ともセンセーショナルなCMだった。美少女と思しきブロンドのロングヘアの人が出て、上半身裸になってしまう。しかし、その美少女かと思った人は実は美青年だった・・・。
この意外性をこの車にダブらせているのだろう。
トヨタは発表会の時に、「スポーツハッチ」と謳った。今までのトヨタにしては少々尖がった車だし、意気込みは良いと思ったので、乗ってみた。
オーリスは2006年にデヴューし、新型は2代目にあたる。このセグメントは日本では全く売れていないが、世界ではメインの市場である。或る意味最も乗用車が乗用車らしい使われ方をする、そんなセグメントである。
売れないからと言って、手を抜けないのである。
このセグメントはVWゴルフの独り勝ちが続いている。さしものBMWの1、ベンツのAもゴルフの牙城を突き崩せていない。但しゴルフ以下は大混戦なのだ。オーリスはランクスの時代までは「カローラ」という名が与えられて売られていたが、名をオーリスと変えてからは日本と同じオーリスである。ただし、オーストラリアでは未だにカローラ、スポーティバージョンについてはカローラ・レビンの名が与えられている。また日産も日本では既に絶版のパルサーにSSSターボなんて懐かしい名をつけて現地では販売。このセグメントの重要性が窺える。
日本仕様に乗るエンジンは1.5L、1.8LのNAしかないが、海外ではラインナップが豊富で、1.4L直噴、1.6L直噴、1.4Lディーゼルターボ、ハイブリッドもある。トヨタは走りとハンドリングではゴルフの6代目に追いついたと謳うが、正直それだけでは突き崩せないと見たのだろう、ハイブリッドがラインナップされている。
ヴィッツにしても、オーリスにしても、「何でハイブリッドが無いんだ」
というユーザーも多かろう。ホンダは様々な車種にハイブリッドをラインナップしているが、トヨタはヴィッツやオーリスといった廉価な車にハイブリッドをラインナップしたら、値段を安くせざるを得ず、商売にならないと判断したのだろう。
そういうことで、トヨタとしてはあまり売れるとは考えていないようで、月間目標販売台数は2千台で、先代よりも千台ほど低く抑えている。
乗ってみると、車幅は1760mmのまま、全高は1500mm未満になった。初代からの乗り換え組は後席がやや狭く感じるかもしれないが、といって乗りにくいほどではない。
シートは先代から続く堅めで、速度が上がるほど快適なタイプ。先代ではあったフライングバットレスは廃され、通常のコンソールになり、フロアシフトになっている。個人的には先代のRSのインパネシフトは見た目には違和感はあるのだが、なかなか使いやすくて良かったので保守に戻ったのは残念な気がした。
最初に乗ってみたのは、1.5Lの150X。正直言って、ヴィッツRSよりも200kgも車重が重たいので、軽快な走りは期待できないが、足回りは同じ1.5Lでもカローラアクシオとは比較にならない(といっても、先代よりは遥かにマシだが)。山道では腰砕けになるカローラとは違い、粘り強い。全輪ディスクブレーキだから、停止も楽チンで不安にならない。
タイヤも195/65/R15、トーヨーのS70。プリウスと同じサイズである。燃費重視のモデルと割り切った方が良さそうである。ただ、ヴィッツのRSに10万円を足せばこの広々としたキャビンが手に入るならば、これを選んでも間違いではないだろう。
次に乗ったのは180GのSパッケージである。エンジンに火を入れた時点からして音が違う。先代の後期型にバルブマチック搭載のエンジンになったが、そのテイクオーバーである。これならば走りに痛痒も無いだろう。雑誌では150Xを勧めている。実際180Gは価格もやや割高だし。しかし、ヴィッツRS、フィットRSなどからのグレードアップ組、アルテッツアあたりからのダウンサイジング組はこちらを乗った方が痛痒はなさそうである。先代は条件が厳しくなるほど、ゴルフとの差は明確で、VSCありきだったが、今回のは流石にしっかりとしている。AI−SHIFTの採用、後輪はダブルウイッシュボーンの採用で、ヤワではなくなった。試乗させてもらった180Gのタイヤは205/55/R16で車格相当だと思うが、タイヤはイーグル・LSエグゼだった。もう少しグレードを上げたいものだ。とはいえこのサイズは無数に選べるのが嬉しい。
最後に乗ったのはRS。オーリスのイメージリーダー的な存在である。
シフトノブは86と同じリンクを上に引いて押しだすとRになるタイプ。
この6MTは久方ぶりのトヨタ内製のもの。クロスしていて、結構使い手は悪くないが、いかんせんエンジンとの相性が合っていない。トルクの波が何処にあるのかよく分からない。このエンジンはCVTで乗るべきものなのかもしれない。
カローラ・ランクス・エアロZツアラーにあったセリカのエンジン(190馬力)が載ればだいぶ相応しい性格になるのではないかと思うのだが。とはいえ、性格は走り屋の車ではなく、欧州車そのもの。ターゲットとなる速度まで一気呵成に加速し、後は巡航して燃費を稼ぐといった性格である。ただその分、減速してから再加速しようとすると、ちゃんと低いギアを選んであげないと加速してくれない。ラフな操作には抗議をしてくる(笑)。
燃費は流石に現代の車で、スポーティバージョンと謳いながらも、600kmほど乗って、11.9km/Lだった。カタログ燃費の83%となかなか優秀だった。
このクラスのライバルはスバル・インプレッサか、マツダ・アクセラとなるだろう。正直この2台に比べて、オーリスは目立った飛び道具が無いが、バランスは優れていると思う。
昔はどの車にもスポーツハッチはちゃんとあった。シビックにもsiRなんてモデルもあったし、ファミリアにもスポルト20なんてモデルもあった。日産もパルサーがあった。大体100万円台後半から200万円ちょっとまでの価格帯である。ところが今ではこの車以外、国産車はインプレッサとアクセラ程度しかないのは淋しい。車が最も車らしい使われ方をするのがこの中堅のセグメントである。オーリスが牽引してくれることを期待したい。
トヨタはガンダムとのコラボで「シャア専用オーリス」なるものを出展し、大反響を生んだ。反響の凄さにトヨタは市販も検討しているという。流石に「3倍の速度で・・・」にはならないが、話のタネには良いと思う。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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