去年だか一昨年出たこれ。派手で激情をさらけ出す独特の指揮、ミステリアスな表情でご婦人方に人気が高いワレリー・ゲルギエフが、欧州オケの王道VPOを振ったSACDハイブリッド。前評判は結構高かったように記憶している。
http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=1963344
しかし、いざ蓋を開けてみると実に端正というか奇を衒ったところのないスタンダードな幻想であった。シャルル・ミュンシュ盤の様な劇場型の幻想を想起しているならこれは外れだ。そしてウィーンフィルはあくまでウィーンフィルであったと言うことが良く理解できる録音。
3楽章のイングリッシュホルンとオーボエのダイアログはゲルの普段からは考えられないほどの穏やかなレントだ。そして四楽章「断頭台」のスタートアップはかなり淡泊で遅めにして用心深い入り。しかし中盤からはゲルの本領である激しいアチェレランドにより咳き込むように楽章の終わりへと駆け抜ける。
5楽章の冒頭は一転してリタルダンドの連発でどっしりとしたベースラインを演出、中盤からのアパッショネートはまずまずの盛り上がり、そして軽度のアチェレランドでフィナーレへと雪崩れ込む。
お決まりの演出効果だが、コルレーニョは割と強めで明確、鐘は極小さく遠い音で細い。細部の演奏テクニックは流石にVPOだけのことはある。
全体としては小振りで穏やか、中庸を行く盛り上がりと温度感の低い冷静な解釈だ。賛否両論あろうがゲルギエフと思わずに聴けば割と秀作だと思う。しかしゲルの盛り上がりに期待するならバツだ。
(録音評)
フィリップスのSACDで5.1chを含むハイブリッド盤。ウィーン楽友協会大ホールでのライブ収録とクレジットされている。
CDレイヤーのみの感想だが、録音はかなり酷い。VPOの美音ラッパが全て安ラッパに聞こえるほど変な調音を施している。それと、ステージ上の残響がおかしい。ムジークフェラインの残響は長めで尾を引くような美しいものだがこのCDに入っている残響は風呂場のような人工的なもの。恐らく後から合成でエコー成分を付加しているのではないか。オーディオ的に期待する向きにはお勧めしないが、演奏としては模範的なものなのであって良いかも知れない。
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