年が改まった今回も日本人演奏家の録音。Trironレーベル(オクタヴィア)の秋の新譜から、高橋多佳子の初のシューマン・アルバムでSACDハイブリッド。国内ではそれなりのプレゼンスを持っていると言われる高橋だが、CDは今までになぜか買う機会はなかった。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3885088
シューマン:
・クライスレリアーナ 作品16
・謝肉祭 作品9
・トロイメライ 作品15-7
高橋多佳子(ピアノ)
高橋多佳子は日本国内で活動する数少ない一線級のピアニスト。経歴だが、桐朋を出た後にポーランドに渡り国立ワルシャワ・ショパン音楽院で学んでおり、そしてショパンコンクール5位入賞をも果たしている。そういった縁からかショパンの作品演奏が多く、録音もまたショパンに傾倒している人物だ。因みに高橋の個人blogは、MusicArenaもエントリーしているblogランキングで常に首位を争う人気サイトとなっている。
この人の録音はずっとオクタヴィアであり、このところExtonの音質的な完成度の問題もあってか余り食指が動いていなかった。しかし、昨年はショパン・イヤー、およびシューマン・イヤーということで色々と試そうと思った中の一枚がこれだったので躊躇しながらも買ってみた。
この人の演奏を初めて聴いてみての感想だが、大きくは二つある。一つ目は、シューマンの代表作品であるにも拘わらずショパンっぽい薫りが充満していてとても新鮮な解釈であるということ。二つ目は、ちょっと抽象的だが「小股の切れ上がったいい演奏」だということ。
クライスレリアーナはシューマン作品の中でも一、二を争う名曲であり=各曲の解説はこちら
http://musicarena.exblog.jp/7430190、今までに多くの演奏家が手掛けてきているのは言うに及ばないが、高橋のヴィヴィッドにして優雅、独特のうねりを伴った民俗楽曲的なアーティキュレーションはショパンのマズルカ等の三拍子曲に通ずるものがある。さりとてよたよたと拍を刻む情感過多な演奏ではなくて、細身できりりと締まった直進的な演奏である。
謝肉祭は小品を多く並べて構成された叙事詩風のこれまた秀逸な作品なのだが、高橋の微細にして大胆、そして煌めくようなセンスが光る秀逸な演奏となっている。特に第9曲:蝶々、10曲:A.S.C.H.(躍る文字)、11曲:キアリーナ、12曲:ショパンあたりの盛り上がりは素晴らしい。この中での白眉はキリアーナ(クララ・ヴィークのイタリア語読み)で、右手主旋律のブリリアンスと左手通奏の見事な調和と一糸乱れないリズム感、疾駆感が印象的だ。
順序が逆となるが、この人のショパン作品は是非聴いてみたいと思う。
(録音評)
Tritonレーベル、OVCT00073、SACDハイブリッド。録音は2010年6月23-25日、場所は私の故郷・富山県で、立山の麓に程近い上市町(中新川郡)の北アルプス文化センター。DSDレコーディングとある。
北アルプス文化センターでのExton録音は何枚も持っているが、その中では優秀な録音である。というのは、このホールの音質は透徹されて非常に優秀なのだが、なぜかオクタヴィアはあまりここでの録音を得意としておらず苦戦して来たというのが現実である。しかしこの録音は楽器の実在感と空間感という点においては一応のバランスを得ていて恥ずかしくない出来映えだと思う。但し、ピアノの音像はちょっとオン気味で前面に出てきており、もうちょっと引っ込めて描いた方が曲風にも合っていて好ましいと感じられる。SACDレイヤーとCDレイヤーの差は割と明確な方で、できればSACDレイヤーでDSD録音の微粒子感を味わいたいものだ。
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