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2010年11月02日12:49

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【バレエ】Kバレエ「白鳥の湖」(31日)

怒涛の短期5公演観覧、最終演目の感想です。

有休まで取って、私は何をやっているのだろう...。
と、ふと冷静になると、落ち込んだりして。(=.=)

............ま、いっか。面白かったし。(^o^)


えー、気を取り直して、「白鳥」2日目、
Kバレエ2010-11シーズン幕開け公演の最終日です。

ゲストにロイヤルのマルケスさんを招聘しての舞台でしたが、
私のお目当ては男性主役の浅田良和君。
彼は名前を知る前からの気になる存在で、
顔と名前が一致してからは注目のダンサーのひとりになりましたが、
先日の「ロミジュリ」マキューシオで我が目に狂いなし、と確信。(^o^)
今回のジーク初役を、不安半分、楽しみ半分で足を運んだ次第です。

サンドイッチをほおばりながら配役表を眺めると、
後述のとおり、ほぼファースト・キャストです。
脇はまかせろ、初役ダンサー! 思う存分踊れ!!
という熊さんの親心でしょうか。(^^)

そして彼はその期待に十二分に応えていました!(^^)
実際は緊張していたのかもしれませんが、
それを観客に気取られない笑顔とともに登場すると、
長い手足を生かした大きく優雅な踊りはいつものまま、
終始萎縮した様子はありませんでした。

最近観たケースだと、新国の寺田さんやさいとうさんのように、
緊張のあまり動きは小さくぎこちなくなり、
踊りで感情を表現するどころか、つなぎの演技すらままならなくなる、
というのが初役ダンサーの一般的な反応ですが、
彼はもう何年もその役をやっているかのようでした。

それどころか、お師匠さまと私のツボである、3幕のヴァリエーションまで、
見事に喜びを踊りで表現したのでした。
松岡さんといい浅川さんといい、まったくここのダンサーたちの心臓は、
毛皮でコーティングでもされているんじゃなかろうか。(^O^)

技術に関しても、その完成度には目をみはるものがあり、
踊る姿はシクリャローフ君より美しい。手足の長さも見劣りしないし。(^o^)
ビントレーさんの「日本にはいいダンサーがたくさんいる」というのは、
けしてリップサービスではないと思います。
日本人ダンサーを悪く言う人は、水晶体が濁ってるようですから、
早く目医者に行った方がいい。(^m^)

正規団員からゲストになってしまった清水さんの、
穴を埋めるにはまだ早いですが、次から次へと、
ほんと良いダンサーをみつけてきますね、熊さんは。
そして、ちゃんと育ててる!(^^)


彼のサポート陣ですが、まずベンノに橋本君。
浅田君が優雅で王子様然としているので、人のよさそうな彼の雰囲気は、
少し階級が下の貴族という感じでバランスがとれています。(^o^)
王子への気遣いもあり、3幕では見事なヴァリを披露。さずか主役経験者。

トロワは浅川、遅沢、松根の豪華3名。
主役経験者が2人も混ざってますからね。(^O^)

松根さんは、浅川さんと比べてしまうと、まだもっさりした感じがありますが、
キャラダンだけでなく、大きくしなやかな踊りもできるので、
これからが楽しみ。2人は大きな白鳥も兼任です。

松根さんはさらに3幕でスペインも踊るなど、
熊さんの短期集中養成講座の特待生といったところでしょうか。(^o^)
長田さん、小林さんといったベテランの穴を埋めてくれることを、
期待されているのでしょうね。

遅沢さんは、長身を生かした力強い踊り。
王子の護衛も兼ねる、軍人の家系の出の友人?
と観る者の想像力をかきたてます。(^^)

4羽には神戸さん、湊さんの名前も。
主役級が混ざる4羽って...。(^^;)
他の2羽も余裕の踊りでした。(^^)


熊版は、ベンノと部下たちが王子と一緒に狩りにでかけます。
彼らは王子より先に白鳥たちを見つけ、矢を射かけようとしますが、
王子が止めに入り、オデットに部下の非礼を詫びるというパターン。

ここで彼らは狼狽するわけですが、その様子が、
いままで観てきた版のものとは、ちょっと違うような気がしました。
他の版でも、臣下たちはここで動揺しますが、
それは白鳥が人間になったことへの驚きです。

ところが彼らは、王子の様子を不審に思っているようなのです。
もしかしたら彼らには、オデットたちは鳥の姿のままなのかもしれません。
となると、王子は鳥に敬語で謝っていることになります。

「おい、うちの王子さま、トリとなんかしゃべってるぞ?」
「結婚を無理強いされて、どうかしちまったんじゃないか?」

そんな会話が聞こえてきそうでした。(^^;)
真相はどうなのでしょう?(^o^)

ちなみにトリたちの衣裳ですが、一般的なチュチュ姿はオデットのみで、
群舞はマシュー・ボーンのスワンたちのように、丈の長い羽のようなデザイン。
彼女たちが駆け回ると、本物の白鳥がわさわさいるようです。

そのトリを支配するのがキャシディさん。

熊版の「白鳥」は、
オデットとオディールが別役でスタートし、
その後ひとりで踊るように改訂され、
白と黒が別役の吉田都スペシャルを経て、
現在のひとりバージョンとなります。

道化は登場せず、家庭教師とベンノがいて、最後は悲劇というパターンですが、
いちばんの特徴は王子以下男性ダンサーの見せ場が多いところにあります。
家庭教師も、ベンノも、そしてロットバルトにもヴァリがあります。

家庭教師の先生、1幕で女性たちに、
「先生はお堅くてつまらないわ。今日はおめでたい日、
お酒でも飲んで楽しくやりましょう♪」と誘われ、
最初は逡巡しますが、理性が感情に負けて本を放り出すと、
えーい、もうやめじゃやめじゃ、と自ら踊りだします。(^o^)

キャシディさんのヴァリは、2幕と4幕だけでなく、3幕にもあります。
さすがにもう動きは重く感じますが、それを逆手にとって、
重厚感、迫力いっぱいの悪魔でした。(^^)
2幕では、王子がボウガンを彼に向けるのですが、
あっさりむしり取って投げ捨てると、オデットとの間に割って入る彼を一蹴、
がおーと睨み付けてソデに追い払ってしまいます。(^O^)
浅田王子、背は高いけれどまだ線が細いので、なすすべもなく退散。


第3幕のキャラダンは、ハンガリー(チャルダッシュ)が省かれ、
ナポリとマズルカは王室の臣下ですが、スペインはロットの手下。
ブルメイステル版やグリゴロ版を彷彿させる場面もあります。

熊版は、どの演目もいろいろ工夫が凝らされてて面白いのですが、
必ずしもすべてが良いわけではなく、
「白鳥」3幕のディベルティスマンは、改訂してほしいもののひとつです。

Kのダンサーたちにとって、3幕のような場面は得意中の得意のはずなのに、
なぜかいつもあまり盛り上がらず、それが不思議でなりませんでした。
そこで今回、改めてじっくり観たところ、原因がわかりました。

ナポリもマズルカも、振付がつまらないのです。
加えて3人ずつ2回に分けられた姫様たちの登場も、
間延びしただけで、分けたことによるメリットがありません。
熊さんのことですから、意味はあるのだと思いますが、
この振付は、どのような意図によるものなのでしょう。

その中で、スペインはまあまあ見応えがあります。
男女とも4人、計8人という物量もありますが、
力量のあるダンサーが配されることが多く、
特に今回はバットボルト、西野、ヴィユウジャーニン、内村の男性4名が、
良い仕事をしてくれました。(^^)


そして4幕。
ここの白鳥群舞たち、優雅さという点では、まだまだ改良の余地ありですが、
今回はその人間的な雰囲気が、逆に良い効果をもたらしました。(^^)

その理由を記すには、今回のゲスト、
マルケスさんについて先に触れる必要があります。

彼女を意識して観たのは、2008年のロイヤル来日公演の時が初めてで、
小柄で元気だけど、気ぜわしい踊りをする人だ、程度の印象しか持ちませんでした。
そのため翌2009年にKのゲストとしてやってきた時も、
敢えて足を運ぼうとは思いませんでした。
冒頭で「目当ては浅田君」と記したのは、そういう理由なのです。

もっとも、Kにゲスト出演した時は、以前よりも良くなっていたよ、
という噂を耳にしていたので、どのくらい進歩したのかな、
と思って2幕の登場を待っていると...あ、ここにも雀がいた。(^o^;)

白鳥姫といえば、なにをさておいて、
まずは「優雅」という単語で語られる存在ですが、
王子の姿を認め、吃驚して舞台を駆け回るその姿は優雅とはほど遠く、
誤ってオフィスに入り込んでしまい、出口を探しまわって慌てふためく、
ちび雀の姿がオーバーラップしました。(^^;)

その後も眉間の皺はあたりまえ、続く愛の表現、裏切りに嘆き悲しむ姿、
すべてがわかりやすいというか派手な演技。
「濃い演技」とは彼女のためにある言葉のような舞台でした。(^^;)
雰囲気も、魔法で鳥に変身させられたというよりは、
白鳥のコスプレをした女性のようです。

白ですらこのような様子ですから、黒は推して計らんというもの。
もう感情全開、ちょっと下品なんじゃないの〜? と思ったりもしましたが、
白鳥も上品ではないから、バランスはとれてるのか、と、ひとり納得。(^^;)

ロットに耳打ちされれば嬉しそうににや〜り。
彼女は部下やしもべではなく、絶対に共犯者。(^^;)
幻影への対処は絶妙のコンビネーションでやりすごし、
オデットのマネをしたあと、背中を向ける王子を上目遣いで見る様は、
コレスニコヴァさんの怪しげな目付きにまけません。

極めつけは、観客まで騙してしまったことでした。(^O^)

結果からいうと、彼女はテクニックの人ではなく、
特徴はその過剰ともいえる演技力にあるダンサーです。
2幕のヴァリでは長めのアラベスクに挑戦するものの、
松岡さんや浅川さんのように不動のバランスではなく、
ふらふら、ふるふると、けっこう危なげ。(^^;)

ところがオディールの時に再び試みると、
こんどは5秒以上も微動だにしないのです。
アラベスクに限らず、それまでの踊りを観ていれば、
大体の技量はわかりますから、んなばかな、(^^;) と思ってよく観ると、
背後にいる王子が体を密着させて支えているのですね。

けれど2人とも両手を上げているから、
さも彼女がひとりて立っているかのようで、
すっかり悪女にたぶらかされた観客からはやんやの大喝采。
やるなあ。(^O^)


熊版のラストは、オデットが身投げして王子が後追い、
苦しむロットを群舞が取り囲んでとどめを指す、というパターンですが、
群舞たちからは、主役ふたりの遺志を継ぐかのような感情が伝わってきました。

「白鳥」に限らず、群舞は変形可動舞台装置的な要素が強く、
物語に直接関与する感情表現とは無縁な場合が多いですが、
今回の舞台の群舞からは、血の通った生き物の怒りと悲しみが感じられ、
マルケス・オデットの激しい感情表現と共鳴効果をもたらしたのです。

そしてこのマルケス効果が、相方の浅田君に、
主役はただステップをなぞるだけではダメなのだ、と意識させたのでしょう。
安定した技術もさることながら、王子の心情もしっかり表現した、
初役とは思えない良いジークフリートでした。(^^)

あの世で人間に戻ったマルケス姫、にっこり微笑んでいると、
愛らしい貴族の姫様に見えるのですが、
嬉しそうに王子に抱きつく様子は、最後まで庶民的でした。(^o^)

       *     *     *

オケは「コッペリア」の時と同じシアターオーケストラトーキョー。
パーフェクトではありませんが、この日も迫力ある良い演奏でした。(^^)

ただし指揮の福田さん、ダンサーに迎合することはないけれど、
もうすこし臨機応変にリズムを変えてあげてもいいのでは。
耳には気持ち良くても、視覚情報との誤差が出ては、
舞台芸術の完成度としてはまずいのではないでしょうか。

       *     *     *

プログラムの熊さんのコメントによると、
「ロミジュリ」は次回で改訂してくるようです。

また彼は完全オリジナル作品を、いつか創り上げたいと考えており、
いろいろトラブルもあっったけれど、そういう意味でも
「海賊」がいちばん思い入れのある作品なのだとか。(^^)
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