久し振りのPentatoneの新譜、SACDハイブリッド。アラベラ・シュタインバッハー&ヤノフスキ/スイス・ロマンドのバルトークVnコンだ。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3878457
バルトーク:
・ヴァイオリン協奏曲第2番 BB117
・ヴァイオリン協奏曲第1番 BB48a
Arabella Steinbacher (Vn)
アラベラ・美歩・シュタインバッハー(ヴァイオリン)
Orchestre de la Suisse Romande, Marek Janowski
スイス・ロマンド管弦楽団/ マレク・ヤノフスキ(指揮)
瑞々しくも彫啄の深い、実に素晴らしいバルトークだ。シュタインバッハーは暫くORFEOレーベルに在籍しており、そしてその時代最後のベルクとベトコンはMusicArena AwardsのSound of the year 2009
http://musicarena.exblog.jp/13948330 を獲得した。彼女はそのすぐ後にペンタトーンに移籍していて、これがPentatoneにおける二枚目のリリースとなる(一枚目のシマノフスキ&ドヴォルザークのVnコンの評価は良好だったようだが未聴)。ここでは名門スイス・ロマンドの好サポートを得てゴージャスかつ深く切れの良い鮮やかな演奏を聴かせてくれている。
バルトークの2番は規模感の大きな、そしてドラマティックな傑作中の傑作なのだが演奏は概して難しい。シュタインバッハーの演奏は線の細さと墨痕鮮やかな太筆の魅力を併せ持った自在性が特徴となり、ストラディバリ・ブースが発する鮮烈で伸びやかな音色は非常に印象的である。オケと重なる部分では音量が過少になるどころか寧ろモリモリとボリュームを上げていく様は女流の域を超えたエネルギッシュさ。バルトーク固有のデモーニッシュな不協和音パートでの堂々たる弾きっぷりは胸が透く爽快感がたまらない魅力だ。
1番は一転して内省的、かつ少々暗鬱な翳りを伴うこれまた難曲なのであるが、シュタインバッハーは静謐で繊細な旋律進行をベースラインとしつつも彫りが深く、ぶ厚く大胆な解釈を展開しており、楽器が一段減ったスイス・ロマンドとの掛け合いの妙味が、ある意味2番よりも純粋に味わうことが出来るのだ。空間と無音の間(ま)を丁寧に繋ぎ、そしてトゥッティへと向かうあたりの疾駆感は素晴らしい。
両方のVnコンともにシュタインバッハーの技巧、ヤノフスキのリードによるスイス・ロマンドの演奏はほぼ完璧であり、まさに今世紀に相応しい現代的でクールなバルトークである。
(録音評)
Pentatone、PTC5186350、SACDハイブリッド。録音は2009年6月、7月、場所はジュネーヴ、ヴィクトリア・ホールとある。Pentatoneの伝統である高域に含まれる華やかなブリリアンスは僅かに残っているようだが、従前からの様子とは異なり、殆ど透明系のサウンドだ。そして、特筆すべきは奥行き感の深さと音場の広大な拡がり、及び極低音まで伸びきったウルトラスーパーワイドレンジなハイファイ感だ。これは以前のPentatoneとは一線を画する3D音場系の取り方であり、SFSメディアの一連のマーラー・チクルスに比肩する、いやひょっとして凌駕する超絶的な音質を誇るのだ。クラシック録音最先端の世代はまた交代するのかも知れない、と予感させられる超優秀SACDハイブリッドだ。
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