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2010年07月31日18:57

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【音楽】Gubaidulina: Portrait@Claire-Marie le Guay

Accord Classicの年初の新譜で、グバイドゥーリナの現代曲アルバム。ピアノは鬼才女流と言われるクレール=マリー・ル・ゲ、最後の協奏曲はカントロフ指揮ローザンヌ室内管弦楽団と豪華版だ。

http://www.hmv.co.jp/en/product/detail/3729280

グバイドゥーリナ:
・インヴェンション(1974)
・シャコンヌ(1963)
・音楽のおもちゃ箱(1969)
1. Mechanical Accordion
2. Magic Roundabout
3. The Trumpeter in the Forest
4. The Magic Smith
5. April Day
6. Song of the Fisherman
7. The Little Tit
8. A Bear Playing the Double Bass and the Black Woman
10. The Woodpecker
11. The Elk Clearing
12. Sleigh with Little Bells
13. The Echo
14. The Drummer
15. Forest Musicians

・ピアノと室内管弦楽のための協奏曲『イントロイトゥス(入祭唱)』(1978)

 クレール=マリ・ル・ゲ(ピアノ)
 ローザンヌ室内管弦楽団
 ジャン=ジャック・カントロフ(指揮)

グバイドゥーリナの略歴等はWebに出ている。ちょっと拾ってみると・・



ソフィア・グバイドゥーリナ(Sofia Gubaidulina, 1931年10月24日 - )は、ロシアのタタール自治共和国出身の現代音楽の作曲家。ロシア語のキリル文字表記ではСофия Асгатовна Губайдулинаであり、カナで転写すると「ソフィーヤ・アズガートヴナ・グバイドゥーリナ」となる。

(経歴)
タタールスタン共和国のチーストポリにタタール系の父親とロシア系の母親の間に生まれる。野原に出ては作曲家になりたいと祈るかたわら、イコンに惹かれるような少女であったという。カザン音楽院で作曲とピアノを学び、1954年に卒業する。モスクワ音楽院に進んで1959年までニコライ・ペイコに、さらに1963年までシェバリーンに師事。

ソビエト・ロシアで修学中に、新しい音律を探究したために「いい加減な音楽」との烙印を押されたが、ショスタコーヴィチの支持を得た。ショスタコーヴィチはグバイドゥーリナの卒業試験で、これからも「誤った道」に取り組みつづけるように激励したという。

1970年代半ばに、作曲家仲間のヴィクトル・ススリンやヴャチェスラフ・アルチョーモフらと、民族楽器を用いた即興演奏グループ「アストレヤ」を結成。

1980年代初頭にギドン・クレーメルの擁護を得て、ヴァイオリン協奏曲《オッフェルトリウム》がソ連邦の国外で演奏され、これが現在の国際的な名声のきっかけとなった。その後にT・S・エリオットの霊的な詩集に啓発を受け、この詩人へのオマージュを作曲している。

ペレストロイカが始まり、以前にもまして名声が高まると、ソ連を出て西ドイツに移住した。現在もドイツを拠点に自由な作曲生活を謳歌している。

2000年にタン・ドゥン、オスバルド・ゴリホフ、ヴォルフガング・リームの3人と共に、シュトゥットガルト国際バッハ・アカデミーの委嘱によって《新ヨハネ受難曲》を作曲、これに続いてハノーファー放送局の委嘱によって、さらに《ヨハネ福音書による復活祭オラトリオ》を完成させる。これらの2曲は、イエス・キリストの死と復活を描いた「2部作」と呼ばれ、今のところグバイドゥーリナの最大規模を誇る作品となっている。なお、「新ヨハネ受難曲」というのはあくまで俗称であり、作曲者自身は「ヨハネ受難曲」と名づけている。

2005年には、ベートーヴェンの「交響曲第5番」に倣った《終末の光明》がプロムスで上演されている。

(作風・作品)
グバイドゥーリナの作品は、楽器の特異な組み合わせが特徴的であり、ロシアの民族楽器であるバヤンや日本の琴(箏)を西洋のオーケストラと組み合わせたり、打楽器とサクソフォーン四重奏を組み合わせている。また、スクリャービン博物館において一時的にシンセサイザーが設置された際、いち早くこの電子楽器に興味を示し、ソ連における電子音楽の先駆者ともなった。

正教に改宗したタタール人として、キリスト教の神学や神秘主義を題材とした作品を数多く手懸けており、宗教曲も数多い。代表作は《イエス・キリスト最後の七つの言葉》、《イン・クローチェ》《シレンツィオ》など。1999年にはNHK交響楽団の委嘱で、1人の奏者による3面の箏とオーケストラのための《木陰にて》を作曲している。《太陽の讃歌》はロストロポーヴィチに献呈された。

日本では、ペレストロイカ以降に旧ソ連の水面下で活動を続けた作曲家の1人として紹介されると、武満徹や高橋悠治によって支持された。武満は「オリヴィエ・メシアンの曲に出会った時以来の衝撃」と絶賛し、高橋は1990年代に演奏家としてグバイドゥーリナの作品に取り組んでいる。

初期作品では、特殊奏法への偏愛や、曲全体を貫く上昇ラインなどに現在の作風の萌芽をうかがわせている。即興演奏においてもグバイドゥーリナは、1つの音を執拗に連打する音形を好んでおり、その後の作風への直接的な関連が認められる。

西側に紹介された頃には、きわめて単純な素材(たとえば半音階や単音の連続や、半音ずらした音程のグリッサンドなど)を用いつつ、それらの呪術的な積み重ねにより圧倒的なクライマックスを築き上げるという作風にたどり着いていた。時には三和音や教会旋法などが剥き出しで用いられることも多いが、それらが一切従来の音楽的意味を成さず、単なる音響として常に静的に処理され、それらの持つ緊張感の積み重ねによってのみ音楽が進行する。

1980年代初頭に、楽曲構成の手段としてフィボナッチ数列を用いるようになる。この手順は、作曲原理が得られるだけでなく、形式の「息づかい」が許されるというので魅力的に感じられたらしい。この手法による作例に、12楽章の交響曲《声…沈黙… (独語:Stimmen... Verstummen...、露語:Слышу... Умолко...) 》、《知覚 Perception 》、《太初(はじめ)にリズムありき (独語:Im Anfang war der Rhythmus )》が挙げられる。その後の福音書による作品群は、部分的にフィボナッチ数列を援用している。

グバイドゥーリナ作品の大きな特色は、西洋的な時間軸が完全に放棄されていることである。管絃楽曲でも、中央に据えられたバヤンはオーケストラとは全く無関係に蛇腹の押し引きを繰り返し、東洋哲学にも似た超越的な時間感覚を想起させる。

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引用がちょっと長くなった。音楽としては不思議系で、12音技法のシェーンベルクやアルバン・ベルク的な風情は全くなく、また武満のような蓋然性否定の展開も聴かれず、ペルトのような、ある種の調和と不調和を対峙させるバランスで組み立てた音楽でもない。

最後の協奏曲を除き全てピアノソロのための作品だが、そのどれにも類似性はなく、各々が全く別の作家が書いたようで、類別性は全くないといえる。

インベンションは、どちらかというと離散的な旋律で、和声はあってないようなもの。但し離散的に紡がれる何らかのコードが展開されているような気にさせられるという点ではジャズの不協和音展開に似ているかも知れない。

音楽のおもちゃ箱は、英語の題名を「Musical Toys, piano pieces for children」とあるように、子供のため、ということを念頭に置いて書かれた作品。短い面白い曲が一杯並んでいて、これは殆どが擬態を用いて構成されているピアノ独奏曲。心象と言うよりは、ある特定風景を端的に短く切り取ってきて貼り合わせたフォト・コラージュの様な作品である。これは面白い。部分的にはサン=サーンスの動物の謝肉祭に雰囲気(というか諧謔で皮肉っぽいところ)が似ていると感じられる。

最後の協奏曲は、もれまた不思議な作品で、不協和音のオンパレードなに全然不快ではなく、寧ろ何度も聴きたくなるミニマル要素を多分に含んでいる作品だ。ピアノの独奏部は頑張って旋律を紡ぐと言うことをせず、非常にシンプルな下のC-E(ド・ミ)、ないしA-F(ラ・ファ)の和音を繰り返し打鍵するのみなのだ。

なんとも雰囲気のある曲とアルバムであり、これは面白い作品だ。もう暫くは楽しめそうだ。

(録音評)
Accordレーベル、4803153、通常CD。録音は2004年、2005年12月(協奏曲)、場所はパリ、ローザンヌ(協奏曲)とある。音質はニュートラルで理性的な透過性、しかし過度な解像度の録音ではない。スタインウェイの透き通ったソリッドな響きが印象的で、このル・ゲという人物の並大抵ではない操鍵能力を思い知る。擦過音や上部雑音も殆ど感じられず、非常に静かな背景に明滅、乱舞するピアノの音だけが浮かび上がってくる。

オケの方は幽玄に霞たなびく絶妙な距離感・空間感の録音で、これは素晴らしい出来映えだ。ちょっと大きめのアンサンブル録音としては理想的な録り方ではないだろうか。ピアノの配置と音量バランスも絶妙だ。作品と演奏、そして調音の巧みさで傑出した録音だ。


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