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2010年01月12日12:41

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【バレエ】マールイ(レニングラード)「バヤデルカ」(8日)

金曜の夜にイベントがあると、
休日が一日増えたようで得した気分になります。

       *     *     *

同じ演目を同じキャストで観る時は、
作品としての完成度アップが期待されますが、
もうひとつ、役作りの変化という楽しみがあります。

「バヤ」を例にあげると、たとえばボリショイのアラシュさんは、
ニキヤ役の雰囲気に合わせて、初日(ザハロワさん)は優しいガムザ、
2日目(グラチョーワさん)は高慢なガムザを演じていました。

では、今回のマールイ「バヤ」はどうだったかというと、
まずニキヤ役のペレンちゃんですが、予想どおり変更はなし。
というのも、初日の彼女は役になりきっているというよりも、
「ペレンがニキヤを演じてます! という感じ。」(師匠談)
演技面では彼女、あまり器用そうではありませんからねえ。(^^;)
とはいえ、両日ともソロルを見つめる笑顔が愛らしい、
けれど踊りは色気のあるニキヤでした。(^^)

また地道に鍛錬を積んできたのでしょう。
特に下半身の鍛え方は特筆もので、
あちこちで他の方も書いてらっしゃいますが、
3幕ベールの踊りは08年のザハロワさんより上手でした。

時折昔の悪い癖、踊りが雑になったり、
せっかくの長い手足が短く見えてしまう動きが散見されましたが、
この調子なら、それもほどなく解消されることでしょう。

相方のルジさんは、役作りは気分で変える、
と言うようなことをおっしゃってますが、
これは相手の役作りにあわせるという、
大ベテランならではのお言葉と解しています。

従って、前述のようにペレンちゃんは変えてこなかったので、
彼の演技にも大きな変化はありませんでした。
驚きの時間が短くなるなど、細かい表現は違ってましたけどね。(^o^)

彼はスロースターターなので、完成度の向上が顕著でした。
たとえば初日、召使いが左右から支えてガムザをリフトする場面では、
タコさんが前に倒れそうになってひやりとしましたが、
あの場面、本来はルジさんが後ろから彼女の腰を支えるはずなのに、
彼のサポート入りが遅れてしまったからでした。

ベテランらしくない失敗ですが、
芸監兼務のため舞台感が鈍ってしまったのでしょうね。
それをもって引退を口にする人もいると思いますが、
体力にあわせたものを踊ればいいだけの話、
あの流れるように美しい動きや独特の身のこなしを
封印してしまうのは、あまりにも惜しすぎます。
...彼の大僧正も観てみたいかも。(^m^)

大僧正といえば、
ドルグーシンさんが面白すぎて目が離せません。
1幕のニキヤとソロルの逢瀬を盗み見して嫉妬する場面など、
嫉妬の相手はソロルではなくニキヤ?
と一瞬思ってしまいそうになりました。(^O^)

2幕、下手袖から不安と後悔の入り交じった表情で
ニキヤの踊りを見つめる彼の元へ、苦行僧が毒蛇のことを注進すると、
「ぬあに〜!?」とばかり彼の手首を握りしめ、わなわなわな。
その後はいてもたってもいられない様子。

この場面は、反対側のソロルとガムザのやりとりからも目が離せませんし、
もちろんニキヤの踊りも観たいので、目玉が3組欲しくなります。(^^;)

それにしてもここの2幕のディベルティスマンは楽しいなあ。
マールイ版を見慣れてしまうと他の版が寂しく思えます。

ニキヤとソロルに変化がないので、
タコさんのガムザも高慢という基本路線は同じでしたが、
今回も「なるほど!」と思わせる役の解釈がありました。

いちばんの大きな違いは、
初日がソロルとの結婚を喜んでいたのに対し、
2日目は喜んでいない点です。

冒頭、父から結婚を言い渡され、
相手は彼だ、と肖像画を見せられると、
しばらく見つめてから右下に顔を向ける仕草で、
前日ははにかむように口の端に笑みを浮かべていましたが、
2日目はその笑みがなく、ついにこの時がきたのね、
とでも言うような悲しげな表情を浮かべていたのです。

思うにそれは、ソロルという個人に対しての感情ではなく、
もっと大きな失意、自分の人生に対しての、
諦めだったのではないでしょうか。
ラジャにとっていくら可愛い娘であっても、基本は政争の道具、
彼女はいつかこの日が来るのを覚悟していたのでしょうね。

余談ですが、2幕婚約式のラジャ、ガムザ、ソロルの登場場面で、
ソロルの乗り物がいちばん豪華なのはヘン、
と感想を記している人がいるそうですね。
たしかに見た目はそうですが、ソロルは虎も狩る戦士で、
象は虎刈りの必需品。戦争で使用する武器でもあります。
従って彼としては式典に正装で臨んだだけのことで、
設定としておかしくはないのです。

話をガムザに戻すと、彼女は若くしてすでに人生を達観し、
自分の立場も十分理解しているようですが、
結婚相手の心の中にはすでに別の女性がいるとわかると、
失意の闇の中に、怒りの炎がちらつきはじめます。

政略結婚という覆しようのない現実は、
不本意ではあるものの受け入れるとしても、
相手にとって自分の存在が1番ではないということが、
彼女のプライドを傷つけたのでしょう。

また、万一ソロルに断られでもしたら、
彼女の魅力はニキヤに劣ると宣言されるようなもの。
そこでコトが公になる前に、密かに話を付けようとしたのでしょう。
彼女の意図がニキヤの身を案じてではないとわかったのは、
泣き落としの場面でした。

これまで観てきたガムザには、いろいろなタイプがありましたが、
泣き落としもあれはあれでガムザの本心、
強がっている反面、人として弱い部分もある、
という心の2面性の表現であり、初日はまさにそのとおりでした。

ところが2日目は、後ずさるニキヤの足下に崩れるとき、
初日に比べて勢いがなく、床に片膝を付くにとどまります。
そしてガムザを振り払い肖像画の方へ走るニキヤを振り返る目は、
「ちっ、泣き落としはきかないか」
...え? いまのは演技だったの?(^^;)

アイヤがナイフを押さえたあとの怒りの形相は、
初日の比ではありませんでした。タコさん、恐いよ〜。(ToT)

彼女の憤懣は、その後も収まることはありません。
「手配はすんだぞ」と耳打ちする父にはうっすらと笑みを浮かべ、
倒れるニキヤに駆け寄ろうと立ち上がるソロルの動きは、
腕を上げて遮るのではなく、握りしめた拳ひとつと冷たい視線のみで制圧。

また結婚式の場面では、まさに諦めの境地で、
周囲の出来事にはもはや関心はない、という様子。
花カゴを見ても、恐れるというよりは、
汚らわしいものをおしのけるかのようでした。

そして寺院崩壊の場面では、うろたえる父を後目に、
あなたの優柔不断さが、このような事態を招いたのよ、
とばかりに毅然とソロルを睨み付けるのでした。

これはこれで納得の解釈ですが、
次はエフセーエワさんやアラシュさんのような、
愛らしいガムザも魅せてくださいね、タコさん。(^^)

       *     *     *

ルジさんのヴァリ、これが最後かと思うと、
時の流れを寂しく感じたのですが、
カテコで幻影の場のヴァリを踊った若手が、
間違えて苦行僧と一緒に出て行きそうになったのを、
ぐい、と引き戻される様子に癒されたぱろでした。(^^)
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