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2009年11月17日08:07

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【バレエ】Kバレエ「ロミオとジュリエット」(11月4/8日) その2

師匠「この演目、他に誰で観たい?」
ぱろ「...シムキン君とコチェトコワちゃん。」
師匠「あ〜、それいい! かわいいだろうな〜。まさに等身大ペアだよね」
ぱろ「あと、ボリショイの弾丸ペア。」
師匠「...。」
ぱろ「ジュリエットがおとーさんに結婚を押しつけられる場面、
   頬を張られると足を踏んづけかえしそうですよね。(^O^)」

       *     *     *

★第2幕

○第1場 広場の祭り

屋敷の回廊が装飾を変えて広場を見下ろす道路に。
シュツットガルトの「眠り」を思いだしました。

広場ではモンタギュー家とヴェローナの街の男女による群舞。
ポワントではないし、プティパの難度Dでもありませんが、
足音は静かで、なにより踊りに勢いがあります。
また脚をふりあげる時、
股関節を支点に棒を上げ下げするコンパス的な動きではなく、
膝から下を最後にぐんと伸ばすので、実際以上に長く見え、
さながらロシアン・ダンサーです。

そして皆鍛えているので動きが音に遅れないから、
音楽に合わせて「普通に」踊るだけで、
自然と動きもシンクロします。(^^)

まだぼーっとしているロミオの元へ、手紙を携えた乳母登場。
街の男たちとのやりとりが、さらに面白おかしくなっています。

冒頭、彼女に「ロミオさんはどこ?」
と訊ねられ、「あそこよ」と指さす女性、
躊躇せず指し示すのではなく、
「え〜と(どこかしら?)あ、あっち!」と、
一呼吸探す仕草をいれないと。(^^;)

乳母は2日とも(たぶん、全日)樋口さん。
ジマイマに続き、太目の役です。(^o^)
彼女は丸顔なので、肉襦袢を着けても違和感がないのですね。
コミカルだけど動きがしっかりしているところは、
吉本さんのサンチョのようです。

手紙を読んだ時の熊川ロミオの喜びよう!
乳母にキスすると、足に翼でも生えたかのように、
上手袖へと消えていきました。


○第2場 教会

十字架に祈りを捧げるジュリエット。登場の順番が元版と逆。
でも、呼び出したのは彼女の方ですから、
たしかにそのほうが理にかなってます。

そこへ2人の僧侶、ロレンスとジョンがやってきます。
ジョンは他の版では省略されていますが、
原作にはちゃんと登場する人物です。
ただの下っ端僧侶ですが、のちほど大切な任務が与えられます。

また場の最後に、ロレンスは結婚のお祝いとして
十字架のネックレスをロミオにプレゼントしますが、
これもまたのちほど印象的な小道具となります。


○第3場 広場の祭り

舞台は再び街の広場に。ティボルトの登場です。
ロイヤル版では酔っぱらいがからんでくるという展開ですが、
熊版はヌレエフ版のように素面で、
大切な姪に手を出す悪い虫にお灸をすえてやろう、
というのが彼の意図のようです。

登場場面で、飾りの花を蹴飛ばして乱入してくるのですが、
遅沢さんは板についているけれど、清水さんは似合わない。(^o^)

さっそくマキューシオがちょっかいを出します。
ふたりがチャンバラを始めたところへロミオが帰ってきて、
なんとかやめさせようとしますが、
その「困ったなぁ」という雰囲気が熊さんうまい。(^^)
彼にとっては、もはやティボルトは親戚ですからね。

突きつけられた剣先を自分の胸から外すときも、
遅沢さんは指の背で普通に払ってましたが、
熊さんはロイヤル式に指でつまみ、さらに笑顔を浮かべ、
まあまあ、ここは音便に、とひと演技。

その後の顛末はご存じのとおりですが、
ティボルトの亡骸にすがりつき、狂乱のヴァリを踊るのは、
キャビュレット夫人ではなく、ロザラインなのです。

夫人とティボルトの関係は叔母さんと甥、
あの2人はイケナイ関係にあったのだろうか、
と推測する人もいるくらいの嘆きようは、
私も昔、初めてこの場面を観た時、2人は親子だと思いましたから、
実にすっきりした気分です。(^O^)


○第4場 ジュリエットの部屋

マクミラン版ではここから3幕ですが、
熊版は2幕と3幕を統合しています。

悲しみのPDDのあと、ロミオは別れ際、
ロレンスからもらった十字架を、
2人の愛の象徴としてジュリエットに託します。

彼女が再度父に結婚を強制され、ベッドに突っ伏した時、
枕の下に隠してあった十字架に手が触れ、
彼女は救いを求めて教会に向かいます。
この時のショールを翻して走り去る姿は美しいですね。(^^)


○第5場 教会

仮死薬を貰ったあと、マクミラン版では省略されている、
ロミオへの手紙を書く場面があります。
ジョンはこの手紙を届ける役を仰せつかるのです。


○第6場 ジュリエットの部屋

薬瓶を隠すジュリエット。
勝手にいなくなったジュリエットにご立腹のお父さん、
結婚を承諾する娘に拍子抜けするも、
パリスに対する嫌そうな様子に、憮然として退室。
ちゃんと彼に謝罪する仕草もあります。芸がこまかい。(^^)

薬を飲むことを躊躇うシーンは、ふたりともいい感じでした。
そして瓶を舞台中央の床に置き、十字架を瓶の首にかけ、
お祈りを捧げると、ぐい!

そしてもうろうとなりながらも、
彼女はふたたび十字架を首にかけると、
ベッドに向かうのでした。

翌朝、友人と乳母に続き、両親がやってきて、
ジュリエットの「死」を嘆きます。


○第7場 追放の地

マクミラン版では墓室の場面になりますが、
熊版には短い1場が挿入されています。

ジュリエットの手紙を託されたジョンですが、
彼は夜盗に襲われ、任務を果たせず絶命。
代わりに駆けつけたベンボーリオからジュリエットの死を聞き、
血相を変えて走り去るロミオ・・・。


○第8場 キャピュレット家の墓室

葬儀のあと、ひとり残ったパリスが、
ジュリエットの亡骸の前に跪いていると、
ロミオが駆け込んで来てつかみ合いに。

マクミラン版では双方がいきなり得物を手にしますが、
熊版ではパリスが先に短刀を抜き、もみあっているうちに、
誤ってパリスを刺してしまうという展開。

続く死者とのPDDも短くなり、
おもむろに毒薬の瓶を腰のポーチから取り出すと、
いっき飲みして果てるロミオ。

マクミラン版では、
息を吹き返したジュリエットが嘆いたあげく、
ナイフを拾って自分の腹をさしてオシマイですが、
熊版では、彼女は最初、ロミオの毒薬を飲もうとします。

しかし一滴も残っていないと悟ると、パリスのナイフを拾い、
ヌレエフ版のようにロミオの手に握らせてから胸を刺し、
折り重なるように事切れるのでした。

観客席からは、すすり泣きがあちこち・・・。

       *     *     *

マキューシオが殺され、
我を忘れて突きかかる熊さんロミオは迫力がありましたが、
全般に殺陣は勢いがいまひとつで、時折タイミングもあわないなど、
もう少し練習してほしいところ。
踊り同様、殺陣も感情を表現する手段のひとつですからねえ。

新国の「ライモンダ」だったと思いますが、
詳しい方が、殺陣を甘くみると危険だ、観ていてひやひやする、
という感想を書いていたのを、つい思い出してしまいました。

マキューシオの恋人役を演じていたのは、
たぶん白石さんだと思うのですが、
長田さん、小林さんの抜けた大きな穴を、
彼女は塞ぎつつあります。(^^)
舞台にいると、つい目を惹かれる良い動きと演技でした。
Kの群舞の中で目立つということは、
相当力を付けてきたと言えるでしょう。

ここの群舞、観ていて気持ちがいいもうひとつの理由は、
音楽にのっている人が多いところ。

音楽と踊りがあわない人には、3つのタイプがあります。
ひとつは、音感のない人。
もうひとタイプは、音感はあるのに、
筋力が足りなくて、イメージどおりに体を動かせない人。
そして、振付が体に馴染んでない人。
アタマで考えているようでは遅い。
体が勝手に反応するくらい、踊りこまないと。

外国の「プロ」ダンサーが聞いたら、
笑われてしまいそうなことばかりですが、
日本のメジャーなバレエ団には、
そういう人たちがたくさんいるのです。

音楽は、追っかけてちゃだめなんです。
ついていくのに必死では、音楽と遊び、
踊りでなにかを表現する余裕なんかありませんからね。

Kのダンサーたち、
昔は音楽を追っかけるだけのつまらない踊りでしたが、
思い返せば、熊さんに引きずられるようにして、
速い音楽と古典のステップに必死に追随しようとすることで、
自然と基礎体力が養われたのでしょう。

今回の熊版、変えてほしいところもありますが、
総じて良い改訂版だと思います。
物語を整理、一部省略し、わかりやすくしていますが、
マカロワ版「ラ・バヤ」や牧版「椿姫」のように物足りなく感じたり、
ただの粗筋を追うだけになっていないところが大したモノです。

おそらく、元となる版を、単に削ったり並べ替えているのではなく、
明確なテーマを設けて再構築し、
新たな肉付けもしているからだと思います。

実際に舞台をご覧になった方は、
短くなった? と感じられたのではないかと思いますが、
マクミラン版の市販映像と比べると、
意外にも5分程度しか違わないのです。

近くに親子連れがいて、
例によって解説を始めるお母さん、話しかける子供でしたが、
幕が上がるとほどなくして、2人とも黙ってしまいます。
つい、舞台に見入っていたのでしょう。
それだけ完成度の高い演出といえます。
本家英国のバレエ・ファンの感想も聞いてみたいな。(^^)

熊版のもうひとつの特徴が、
在来版では影の薄かった脇役たちの多くが、
血の通った人物として描かれているところです。
もちろん、演出家の意図を具現してくれる、
ダンサーたちがいてくれたからであることは、
言うまでもありません。

それだけに、パリスが残念でした。
マクミラン版では特に彼の感情表現が終始乏しく、
熊版でもなぜかそこの部分には手が入っていません。
それならば、いっそのことノイマイヤー版やグリゴロ版のように、
途中で退場させたほうがよいのではないでしょうか。

また現代の感覚からすると、
ロミオが毒薬を携帯しているのも不自然です。
そしてロミオがいきなりナイフを抜いて、
パリスに切りかかる版もありましたが、
パリスがジュリエットを殺したわけではないのですから、
これまた実に不可解です。

そこで、このような演出を考えてみました。(^O^)
もちろん、ベースは熊版です。

ロザラインは、ティボルトの死をあれほど悲しむのですから、
それまでの経緯がどうあれ、彼女はロミオのことを、
絶対恨んでいるはずです。

2幕5場の教会シーンは、
神に祈りを捧げるロザラインの姿から始まります。
彼女は、ティボルトの死後の幸福と、
ロミオへの天罰を願っているのです。

そこへ駆け込んでくるジュリエット。
ロミオの不幸を願っていただけに、
ジュリエットへのうしろめたさから、
ロザラインはつい物陰に隠れてしまいます。

そのため聞くとはなしに聞いてしまう企み。
ロザラインは、それを復讐に利用することを思いつきます。

5場のラストに、ロザラインが使用人に、
使用人が夜盗に金を払う場面を挿入します。
つまりジョンの殺害は、
ロザラインが仕組んだことにしてしまうのです。

2幕最終場、
パリスはキャピュレット夫妻とともに退出し、
代わってマント姿の人物がひとり残り、闇に隠れ潜みます。

駆け込んでくるロミオに、暗闇から短刀を振りかざすマントの人物。
かろうじて第一撃をかわし、反撃に転じるロミオ。
もみ合いのすえ、返り討ちにあうマントの人物。

自分を襲った者の正体を暴こうと、
マントを取ったロミオは驚愕の表情を浮かべます。
なんと倒れているのはロザラインでした。

虫の息で、彼女は咄嗟の策略をめぐらします。
「あなたの軽率な行為を嘆きながら、あの子は死んでいったのよ!」
短剣のようにロミオの胸をえぐるロザラインの言葉。

ともに先に手を出したのは相手とはいえ、己のとった行動が、
好意を抱いていた女性ふたりの命を奪ってしまったのは事実。
若者が自らの命を断つには十分な動機です。

ロザラインの遺体を整え、頬に手を当てるロミオ。
そしてジュリエットに近寄ると、口づけして、自らの胸に刃を立てます。
やがてジュリエットもまた、その短剣で・・・。


ハッピーエンドのプソタ版、観てみたいな。
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