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2009年04月27日11:04

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【音楽】J.S.Bach: Goldberg Variation BWV988@Catrin Finch

最近では買うことも殆ど無くなったDGの新譜で、なんとハープで弾くゴルドベルグ。またまた際物の類なのだが・・。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/3512627

J.S.バッハ:
ゴルトベルク変奏曲 BWV.988

カトリン・フィンチ(ハープ)

このところバッハの新譜が多いような気がするが、これもまたそう。ゴルドベルグは現代ピアノで弾かれるケースが非常に多く、それはグールドの録音 http://musicarena.exblog.jp/7404561/ 以来のトレンドと言えようか。昨今ではイサカーゼの録音 http://musicarena.exblog.jp/9476970/ が印象に残る。

奇を衒ったアクロバティックなハープ演奏かと思いながら針を降ろしたが、そう言った心配は無用だった。2段鍵盤クラヴィーア用に書かれたゴルドベルグをハープ用に奏者フィンチ自身が書き直したトランスクリプションを用いており、チェンバロ譜を目で追いながら聴くと左手対旋律が微妙にオクターブ上下したり、大胆にデシメーションされ(間引かれ)たりしていて苦労の痕がしのばれる。そう言った独特の編曲がなされているこの演奏だが原曲の骨格を殆ど変えずに第30変奏までのフルセットをちゃんと並べていて、演奏が困難な曲を省いたりショートカットした抜粋版ではない意欲作だ。

しかし、チェンバロ版で下段鍵盤に割り振られている低音の高速分散和音やパッセージの速い対旋律スケールはいかにも厳しいし、上段鍵盤で言えば回音やトリル、装飾音符の弾き回しにはハープという爪弾く楽器の限界が見える。それ故、現代ピアノ版などのような超高速演奏にはなり得ず、逆にそれが奏功してゆったりと優雅に楽しむことが出来る。つまり、この演奏には気忙しさがないのだ。

撥弦楽器という点においてはチェンバロとは似た感じの発音・音色となるが、スチール弦のちゃりちゃりした音ではなくガット弦のふくよかで柔らかい中高音域はギターに似た趣だ。また低音域はどうしてもフォーカスが甘くなり膨張気味の発音となるが、これに関してはチェロのピチカートと類似と思えばほぼ間違いはない。

また、ハープは強弱の付く楽器でありながらデュナーミクは思いのほか少なく、アゴーギクを中心として曲想を組み立てているのはチェンバロで弾かれる古楽主義に近いものを感じる。ライナーにはグールドの演奏様式も参考にしたとあるがその片鱗は特に感じられない。楽器構造から来るハンディはあるがそれを殆ど感じさせないハイセンスな編曲のこのゴルドベルグは一聴の価値がある。


(録音評)
DG、4778165、通常CD。録音は2008年3月、Recorded by Hywel Wigley at Kissan Studio, Acapela Arts Complex, Cardiffとある。

音質はDGの製品としては例外的に優秀。等身大のハープがバッフル面の後ろに定位して壁抜けし、フィンチの指使いや息遣いまで克明に捉えられている。音色は地味で背景も漆黒、そして残響は過多でもなくデッドでもなく柔らかな音響をまとっていて心地よい。殊更にディテールを強調するでもなく、さりとて輪郭が暈けるかというと寧ろ細密な描き方なのだ。

それもそのはず、Kissan Studioとはロンドンの西方200キロほどのカーディフという小都市に本拠を構える音楽スタジオや大型ホールを有するレコーディング・ファーム http://www.kissan.co.uk/page.aspx?pt=home&lc=English で、ファウンダーはこの盤の録音担当であるHywel Wigleyと奏者のCatrin Finch自身だという。Webページによればスタジオ/ホールは木質系で音響を重視した構造、録音機器はアップ・ツー・デートな著名製品を取り揃えているようだ(因みにライナーにはエミール・ベルリーナ・スタジオの名前は一切クレジットされておらず、DGはプレスとディストリビューションだけに徹しているようだ。但しコピーライトはDGになっている)。

演奏も意欲的だが音質もなかなかに野心的で優秀、フランスのnaiveやMIRAREといった優秀レーベルに比肩する出来映えの録音は音楽ファン、オーディオ・ファン双方に広くお薦めできるCDと言える。

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(あとがき)
なかなかに優秀な録音でDGにしては凄い! と思ったらカラクリがあったというわけだ。随分前になるがミュンフンのダフクロもフランス国営放送が録ったものをDGがそのままディストリビュートした盤で超優秀盤だったし、DGはあんまり自前で制作しない方が良いのではないかと思わされた一枚。

これから大型連休に入る。あちこちに出掛ける予定があるので音楽日記はあまり書けないと思う。
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