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2009年04月22日12:11

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【音楽】Mahler: Sym#9@MTT/SFSO

今日はここのところコツコツと蒐集しているMTT/SFSOのマーラーから9番。マーラーの交響曲のなかでも最高傑作に数える人が多い作品だ。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/1073179

・マーラー:交響曲第9番ニ長調

サンフランシスコ交響楽団
マイケル・ティルソン・トーマス(指揮)

この曲はマーラーが完成させた交響曲では事実上最後の作品で、大地の歌をナンバー付きの9番とみなすとこの9番が10番目の交響曲ということになる。マーラーは「第九交響曲の呪い」を真剣に信じていたらしく大地の歌に番号を付けなかった。しかし、純器楽構成4楽章形式で完成させたこの作品には9番という番号を与えざるを得なく、そして10番を作曲中に死んでしまう。ということでマーラーに関してはこの呪いは実現してしまった。

あらゆる意味でマーラーの集大成の曲と言え、角笛、原光っぽいところや夜の歌のモチーフ、亡き子を偲ぶ歌の断片などがチラチラと現れては消える。何を思って曲を書いていたのかは分からないが沈鬱な全体の空気と雰囲気からは作曲活動の終焉が近付いていることを気取っていた感じがする。

このCDは数少ない名演に数えて良いくらいの出来映えである。明確な二者比較は出来ないが、1〜3楽章はブーレーズCSOの解釈と同一路線であり、そこから更にブリリアンスを削ぎ落とし、更に純度を高めた音の組み立てだ。そしてこの演奏が孤高にして現代最高のマーラーと言える特徴は4楽章にある。アダージオを終楽章に持ってくる例は他にも希にあるが、この作品の場合には辞世の曲としての予感が漂うメッセージ性の強い楽章と言えようか。MTTは異例に長い時間をかけた渾身のアダージオを組み立てる。記憶が確かなら、これより長い演奏時間の4楽章はバーンスタインRCO(=当時はアムステルダム・コンセルトヘボウと言った)のDG盤(1985年)を除けば見当たらない。以下、マゼール、アバド、バーンスタイン、ブーレーズ、ギーレン、そして今回の盤の時間比較だが、どの楽章も長めになっており、終楽章が殊更長い。

L.M/VPO 29:44 16:01 13:00 25:17
C.A/BPO 25:52 14:56 12:21 25:56
L.B/RCO 29:52 17:26 11:47 29:34
P.B/CSO 29:27 16:10 12:44 21:25
M.G/SWR 29:05 17:48 14:42 22:30
--------------------------------
MTT/SFS 30:31 17:04 13:58 27:49

とにかく弦が綺麗すぎるくらいに綺麗で、しかも無音域にも音が残されているのではないかと錯覚に陥るほど消え際が精密なディミヌエンドは魔術的ですらある。4楽章のスコア http://imslp.info/files/imglnks/usimg/5/5d/IMSLP21194-PMLP48640-Symphony_No._9_-_IV.pdf の16ページ目の終わりの小節の末尾にフェルマータが付いているが、ここが音の存在をもの凄く感じさせられる純粋な静寂(=矛盾している物言いだが・・)である。そして、次のページの頭から始まる合計27小節がコーダで、速度記号Adagissimoが付されている通り、MTTは最遅速度でのリードで終わりに向かう。コーダだけで実に4分余りを要しているのだ(ブーレーズは2分余りで終えている)。しかし、演奏時間が長い=遅い、ではないのだ。比較に出したブーレーズCSOは短く弾いているが拙速さは感じないのとは逆で、MTT/SFSOは長い時間をかけてはいるが遅いとは体感されないのだ。霊感がぎっしりと詰まった、とにかく凄い演奏だ。

(録音評)
Avie、82193600072、SACDハイブリッド2枚組。録音は2004年9月29日〜10月3日、サンフランシスコの本拠地デイヴィス・シンフォニー・ホールでのライブ収録。他のシリーズと全く同様の高音質でこれ以上何を望むのか、という出来映え。この曲の特徴である弦の美しさと無音域を味わうには是非SACDレイヤーで聴いて欲しいもの。

(あとがき)
MusicArenaの方にちょくちょくコメントを頂くYoshimiさんから教えて頂いたスコアのパブリックドメイン・サイトはなかなか便利である。PCのハードディスクに溜め込んだ音源を再生しながら同じ画面でスコアを追うという時代が来たようだ。

余談だが、この9番がマーラー辞世の曲であるとされる根拠はスコアの最終ページ最終小節にある。そこのフェルマータ付き全音符には楽想記号「ersterbend」が書き添えられている。このドイツ語は日本語で言うと「死に絶えるように」という意味だそうで、そこから後世の人が辞世の曲と言い始めたようなのだがマーラーは他の作品でもこの記号をあちこちに書いているので当たっていない気がする。死に絶える=こと切れる(心臓が止まる)、ということであれば、この終わり方は寧ろショスタコ15番 http://musicarena.exblog.jp/7439630/ のコーダで鳴り止むシロフォンの例を想起してしまう。

※今日は外出のため、今週の音楽日記は少ないがこれでおしまい(の予定)。

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