昨日はハルモニア・ムンディUSAの録音だったが今日はフランス本国の録音で、個人的に応援しているイザベル・ファウストのベートーヴェン。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2587277
Beethoven:
Violin Concerto in D major, Op. 61
Violin Sonata No. 9 in A major, Op. 47 Kreutzer'
Isabelle Faust (Vn) & Alexander Melnikov (Pf)
Jirí Belohlávek(Cond), Prague Philharmonia
イザベル・ファウストはジョリベやショーソン、バルトーク、マルティヌー、プロコやフランクなどといった近現代ものの録音が多く、オーソドックスなところではブラームスが精々か? と思っていたが、王子ホールでのリサイタル
http://musicarena.exblog.jp/7468989/ でいきなりベートーヴェンの7番ソナタを弾いたのでちょっと意外だった。このときはなにげに巧かった記憶があるが、ここへ来てベートーヴェンの大作にして重要作をがっつりと録音してきた。結論から言うと非常に良い演奏・録音でとても楽しめた。これなら近現代が駄目でもベートーヴェン専門で勝負しても生きていけるだけの出来映えで、この人は何を弾かせても本当に巧い。
Vnコンは近年ではちょっと例がないほど太くて朗々とした取り組みだ。この感触は何に由来しているかというとD線とG線が太く聞こえ、とりわけG線がVa(ヴィオラ)のような風情なのだ。ここまでゴリゴリと渋く鳴り響くのはイザベルの他の録音でもあまり聴いたことがないほど。
この曲のカデンツァはベートーヴェン自身は一切書いておらず譜面はない。従って演奏者ごとに違う内容となるのだが、流派として有名なのは、ヨアヒム、アウアー、クライスラーというかつての巨匠たちが付けた旋律で、現在でもこれらを踏襲することが多い。カデンツァは第一楽章のコーダ直前に挿入されるが、このファウストのカデンツァは非常に異色で今までこのパターンは聴いたことがない。しかし途中からティンパニの合いの手が入ることからピアノ編曲版(=聴いたことはない)のためにベートーヴェンが書いたとされるカデンツァなのかも知れない。ファウストが渾身の力と技を込めて弾くこの部分は更にゴリゴリのオンパレードだ。因みにバックオケもそこはかとなく巧い。
一方のクロイツェルは一転してスタジオでの録音で落ち着いた入り。しかし長大な一楽章の途中からは俄然アクセルがかかり猛スピードでの加速感が凄まじい、鬼気迫る迫力の演奏だ。G線のゴリゴリ感はVnコンほどではないにせよ、必要以上に抑制しない弓捌きなので鋭い擦過音が縦横無尽に出ていて、ヴァイオリンという小型弦楽器が悲鳴を上げるほど目一杯鳴り響いているという構図だ。スリーピング・ビューティーというストラディバリウスは美しい音だけではなく荒々しく男性的な音もまた魅力だ。
(録音評)
Harmonia Mundi、HMC901944、通常CD。Vnコンは2006年4月にチェコフィルの本拠地=プラハのルドルフィナムで収録、クロイツェルはベルリンのテルデックス・スタジオだ。音質はどちらも良いが、特にプラハで録られたVnコンは素晴らしい音場と美しい残響がとても印象的な好録音だ。後者はもう少し輝度を落とした仄暗い音調だが見通しは良くこちらも優秀録音だ。大人のサウンドが部屋中に充満するのだ。
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