今日は新譜ではなく2007年夏頃リリースのHarmonia Mundi USA/ガーシュウィンのコンチェルト・インFとラプソディー・イン・ブルー他から。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2551790
ガーシュウィン:
・ヘ調のピアノ協奏曲
・ラプソディー・イン・ブルー
・キューバ序曲
ジョン・ナカマツ(p)
ロチェスター・フィルハーモニック管弦楽団
ジェフ・タイジック(指揮)
実は数週間前だが、MusicArenaのロジェ/ド・ビリーRSOウィーン(OEHMS盤)の同曲に関するメールを松戸市のiさんという方から頂いた。iさんによればOEHMS盤よりもこちらのHarmonia Mundi USA盤の方がオフマイクで音場が広く聞こえているのだがそちらではどうなのよ? というご質問を頂いたのだ。この盤の事は知らなかった。店頭で探しても見当たらずHMVのネット通販で頼んでいたのだが先週にようやく届き聴いた。iさんは、演奏はともかくも録音について詳しく知りたいとのことだが、取り敢えずは演奏について・・。
Concerto in Fだが、割とおとなしめの演奏で、キング・インターナショナルの解説にあるようなジャズに造詣が深い指揮者(=ジェフ・タイジック)の特異解釈とは思われない正統的な演奏である。オケに比べてピアノは品行方正で更に静的な解釈だ。この曲に関してはOEHMS盤の方が躍動的で聴かされるものがある。
次のラプソディ〜だが、これになると俄然元気が出て来て色彩感が増す。ジョン・ナカマツというピアニストはどういった人物かはよくは知らないがヴァン・クライバーン国際コンクールに優勝した経歴を持つらしく確かにラプソディ〜では鮮やかな技巧を誇っている。なかなかに音の数が多いし運指は超高速にして精密だ。ピアノの音自体はソリッドで乾燥しておりちょっとあっさり気味に聞こえる。乗りは良くて本来の譜面にはない音も所々加えているようだ。しかし、この際ロジェと比べるのは可哀相というもの。
オケはクラシック専門なのだろうがアメリカっぽい乗りのビッグバンド調へと適度にハメを外しており、これはこれで楽しい演奏である。そう言った点で言うとOEHMS盤の方は格調高いクラシック畑からのアプローチだったと言える。
(録音評)
Harmonia Mundi USAレーベル(HMUS)、HMU807441、SACDハイブリッド。さて、iさんがおっしゃっていた感想は我が家の場合は当てはまるのか。OEHMS盤との比較試聴を行った。
まず、この盤は音質が極めて優秀だ。ライナーにはrecorded, edited in DSDと明記がある。録音エンジニア/バランス・エンジニアはRobina G. Young and Brad Michelで、これはヒリヤー/エストニアのラフ晩祷
http://musicarena.exblog.jp/10026446/ と全く同じ面々だ。実像系でエネルギー感が強く鮮烈な録音である。
両者では音の作り方や録られ方が随分と異なる。HMUS盤の方のホールは比較的残響の短いホールで、オケの規模は3管編成程度と中型。一方、OEHMSの方は大きな空間で残響が長め、そしてオケは4管編成と大規模。
HMUS盤はOEHMS盤よりもオンマイクで左右方向の拡がりが大きく、奥行き方面はそれほど深くはない。しかし各パートの前後関係は正確で個々の楽器が鮮明に分離する。客席位置で言うと一階席前方5〜10列目位を意識した録り方、対するOEHMS盤はかなりオフマイクで2階席前方1〜5列目を意識した録りかただろう。HMUS盤に比べて各パートの分離は甘く聞こえる。空間の広さと奥行きの深さに関してはOEHMS盤の方が圧倒的であり、実像の明晰さとエネルギー感はHMUS盤が勝る。
OHEMS盤は録音レベルが低いうえに微小なディテール情報がたくさん含まれていてこれを十二分に引き出すと巨大なホール空間が現れるが、この拾い出しに失敗すると平坦で弱々しい録音に聞こえてしまう。一方のHMUS盤はアンビエント成分がそれほど多くは含まれず、従ってセッティングその他に鋭敏に反応するタイプのCDではないと思われる。
ということで、iさん宅とはあべこべの音質評価となってしまった。
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