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2009年01月13日10:09

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【音楽】Saint-Saens: P-Con#5,4@Kiyoko Tanaka, NHK SO.

キングレコードから一昨年リリースされたCDで田中希代子とN響のサン=サーンスPコン。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/2506341/ref=2506345

サン=サーンス:
・ピアノ協奏曲第5番ヘ長調 op.103『エジプト風』
 田中希代子(ピアノ)
 NHK交響楽団
 ピエール・デルヴォー(指揮)
 録音:1965年1月27日、東京文化会館(ライヴ、ステレオ)

・ピアノ協奏曲第4番ハ短調 op.44
 田中希代子(ピアノ)
 NHK交響楽団
 ディーン・ディクソン(指揮)
 録音:1968年1月16日、東京文化会館(ライヴ、ステレオ)

 (音源:NHK)

素晴らしいの一言。5番は三楽章形式でエジプト風と愛称が付けられたPコンだが、2楽章の旋律はどことなくチャイナ風。全楽章を通じてカデンツァと言える独奏部が無く、ピアノをオケ・パートの一部へと同化させた様な美しい調和と溶け合いを見せる作品。敢えて見せ場と言うなら随所でアクセントとなっているピアノ両手による上昇スケールが目立つくらい。田中希代子の瑞々しいキータッチは息を飲むほど高速で微細、そして時に豪放磊落。彼女独特のアーティキュレーションはとても鋭敏で印象的なもので、まるで水飛沫が迸るような勢いだ。

4番は2楽章形式の珍しいPコンで5番に比べれば主題はちょっとアンニュイで暗い。各楽章ともリフレインのないそれぞれ連関を持たない主題が並置される構造。2楽章第二主題からはサン=サーンスの根っからの明るさを帯びた展開で最後は律儀に真っ直ぐに閉じられる。多少抑制気味に弾かれるピアノ・パートは濃やかにして陰影の強いプレゼンスだ。

N響のこの演奏は昨今ではあまり聴かれないほど熱気のこもった好演で、田中希代子のハイスピードで強烈な音に負けないようにと必死に合わせているのがよく分かる。

田中希代子は悲運の星の下に生まれたピアニストだとつくづく思う。これだけ衒いなく上手にピアノを弾く人は日本のみならず世界的に見ても、そして現代にあっても珍しいと思う。NHKが秘蔵していたこれらのステレオ音源が世に出たことは非常に喜ばしい。

発売元のサイト: http://www.kingrecords.co.jp/tanakakiyoko/index.html

(録音評)
キングレコード、KICC654、通常CD。随所に雑音があるけれど了承してくれ、という注意書きがライナーにある。確かに強いヒスノイズは耳につくし、会場のノイズもステージ上の奏者のノイズも盛大、テープのドロップアウトもあちこちにあって、決して優良な状態ではない。しかし、それを忘れさせてくれるほどの好演でありこの際音質云々を言うべきではないだろう。

改装前の東京文化の典型的な音で、短くフラッター気味のホール残響とストレートで濁りの少ない直接音が特徴だ。

※今日をもって2008年度購入分の試聴記は終了
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