mixiユーザー(id:3210641)

2008年12月01日18:45

160 view

【バレエ】シュツットガルト・バレエ「オネーギン」(30日)

マイミクさんたちの日記タイトルに
「オネーギン」の文字が並びはじめ、
みなさん、どんなこと書いてるのかなー、
と気になりつつも、じっと我慢の数日でした。(^^;)

       *     *     *

演目がマイナーなためか、
周囲の観客はバレエを見慣れている方ばかりのようで、
しかもマナーも良く、舞台に集中することができました。(^^)
アイシュヴァルトさんの痛いファンもいなかったし。(^O^)

あの風貌ですから、
ヘンなのがひっついててもおかしくはないのですが、
バレエ団もマイナーだから知られてないのかな?

指揮はタグルさん、「眠り」の時と同じ方です。
オケも東京シティ。今回は安心して聴けました。
ありがとね。(^^)

群舞たちは相変わらずどすんばたん。(^^;)
東バの足音についてはいろいろ言われるのに、
ここのが話題にならないのはなんでだ?

あと、「美人が多い」と評判のようですが、
ロシア系バレエ団基準では普通かなぁ。
キャラクテールまで美男美女揃いでつまんねー、
というとこもありますからねぇ。(^^;)
むしろ王子が似合いそうな男性ダンサーの
多いことの方が、特徴に思えるのですが...。

       *     *     *

公爵はレイリーさん。
前日のオネーギンに続いての登板です。勤勉だなぁ、(^o^)
このひと、やはり良いダンサーですね。次は主役でも観たいな。

レンスキーはザイツェフさん。
もっと若いと思っていたら、意外と歳くってました。(^^;)
年齢を考えると、もう少しプリンシパルのオーラが欲しいところ。
写真よりもハンサムですが、もっさり感も出てました。(^^)

オリガはメイソンさん。小柄で可愛い人です。
20代半ばでプリンシパルとのことですから、
若手のホープというところでしょうか。
明るく元気な妹役を上手に演じてました。(^^)

せっかく良いダンサーがいるのですから、出し惜しみせず、
「眠り」の妖精役に当てればいいのに。もったいない。
位がどうのと言えるほど、層の厚いバレエ団ではないんだから。
主役を踊った人が翌日群舞やソリスト役に入る、
マールイを見習いなさい。(^O^)

オネーギンは、バランキエヴィッチさん。
「眠り」の時、どこか陰のある王子だったので、
結構似合うかな? と楽しみにしていたところ、
前半は自信家だけど傲慢になりすぎない、
微妙なバランスをうまくとっており、
後半も熱いけれど沸騰まではいかない、
これまた私のイメージに近いオネーギンでした。
踊りも「眠り」の時より良かったし。
サポートも綺麗に見えたよー。(^^)

日本には各国のバレエ団が次々とやって来ますが、
毎年来てくれるのはマールイくらいで、
あとは2,3年に1度、5年10年ご無沙汰、
というところも珍しくありません。

またせっかく来てくれても、
用事があって観に行かれなかったり、
怪我により急遽降板というケースもありますから、
気になりつつも、なかなかお目にかかれないダンサー、
結構います。しかも一度振られると、
なぜか立て続けに振られるんですよね〜。(^^;)

アイシュヴァルトさんもそんな方のひとりで、
師匠からその実力のほどはうかがっていたのですが、
お目通りは果たせずにおりました。

そしてようやく出会えた彼女は...。
床に寝そべって、本を読んでいました。(^O^)

「眠り」の感想で、バレエ団としての力量は、
下手ではないけれど、特に凄いところでもない、
と記しましたが、彼女は別格でした。
初見のダンサーを観て背筋がぞくぞくしたのは、久しぶりです。

ぶれの一切ない、流れるような手さばき足さばきは、
味や香りに微塵の濁りもない、
ワインや吟醸酒を含んだかのようで、
バレエの美しさを再認識させてもらいました。
音楽と一体となり、途切れることのない、
正確かつしなやかな動きは、
フェリさんや都さんを連想させます。

そして見事なパドブレ。
ピッチを細かく刻んでそれなりに魅せる人もいますが、
腰や頭のどこか一点に注目すると、
そういう人は小刻みな上下動を繰り返しています。

ところが彼女は足首から先にも「しなり」があるので、
その動きはまさに流水のごとくでした。
これが観られただけでも、来たかいがあるというもの。(^^)

そして達者な演技力。
あの大きな瞳が、派手になることなく、
さまざまな表情を醸し出します。

中でも3つのPDDが象徴的でした。
最初は、一方的ではありますが、
子供らしい一途で純粋な思いが、
観ている方が恥ずかしくなるほど、
ストレートに伝わってきます。

寝室のPDDは、まさに少女の夢。
王子(?)は甘い笑顔を絶やさず、
彼女の笑顔も輝かんばかり。
ああ! 彼女のオーロラも観たかった!(^^)

そして圧巻は3幕のPDD。
タチヤーナの愛する人は、公爵ではなくオネーギン。
そのオネーギンの熱い想い(それは自分の想いでもある)に、
おもわず引き込まれそうになりながら、
かろうじて理性に引き戻されます。

その理性と感情の間を行きつ戻りつする様子、
理性にむけて助けを求めるように伸ばした両腕が実に印象的で、
けれど心の叫びをたたえた彼女の瞳に、
おもわず涙で舞台が歪んで見えました。(T_T)

       *     *     *

クランコさんの代表作、
さすが英国で勉強をしてきた方だけあって、
見ごたえのある物語バレエです。

ただ、原作、読んでるよね的な状況説明の省略や、
演出上のデフォルメも強く効いているので、背景を知らずに、
この作品で初めて「オネーギン」に接した人は、
おそらくオネーギン、すげーヤな奴! と思われたことでしょう。

...でも、同じ男として、
ちょっとだけ彼に肩入れしたくなります。(^^;)

そのあたり、プログラムのあらすじで
フォローしてくれると良いのですが、
残念ながら、そこまでの配慮はありませんでした。

もっとも、バレエの男性主役は、
あくまでも情けない奴でなければならない、
という不文律があるのなら別ですが。(^O^)

たしかにオネーギンという人物、
友だちになりたいとは思いませんが、
当時の貴族のぼんぼん、
よほど周囲の大人がしっかりしていなければ、
ああなっても仕方ないのでしょう。
ペテルブルグの彼と同世代の「知人」たちに比べれば、
彼はまだマシな方です。というのも...。

友人であるレンスキーとの決闘への流れを、
不自然に感じた方もいるのではないでしょうか。
そもそも2人は昔からの友だちではなく、
あのあたりの盟主であり、病の床についていた叔父を、
見舞いにやってきたオネーギンが、
残念ながら死に際に間に合わず、
そのまま遺産相続の手続きで
同地に留まっていたときに知り合った仲なのです。

オネーギンは、純朴なレンスキーを
最初は面白がっていただけですが、
そのやぼったさをからかいつつも、
腹に一物ある都会の連中よりは
ずっといい奴と思いはじめ、口にこそ出しませんが、
唯一心を許せる友と思っていたのでしょう。

それだけに、
友を自ら撃ち殺してしまった彼の心情には、
同情を禁じえません。

では、なぜレンスキーは腹を立てたのか。
バレエでは、タチヤーナの好意を受け入れるどころか、
鬱陶しく思ったオネーギンが、
あてつけとしてレンスキーの婚約者に
ちょっかいを出しているように見えますが、
元の話では、パーティに退屈し、オリガと結託して、
レンスキーをからかっているだけなのです。
そこはパンフにも書いてありますが、
舞台はそうは見えませんよねぇ。

百歩譲って、ではなぜレンスキーは、
そんなことで「決闘だ!」などと言い出したのでしょう。

オネーギンは、レンスキーに対する好感の歪んだ表現として、
いつも軽口を叩いていましたが、
レンスキーにしてみれば、都会育ちの彼にからかわれるたびに、
劣等感を抱いているのでした。

そのトドメとなったのが、
「君の恋人は、誰とでも踊る、浮気者だ」という一言で、
自分の婚約者を侮辱されたと受け取った彼は、
ついに堪忍袋の緒が切れたのです。
...悪いのは、オネーギンに変わりないですね。

もうひとつ、女性陣の顰蹙を買うであろう、
タチヤーナの好意に対する冷たい仕打ち、
特に心を込めて書いた恋文を目の前で破り捨てる、
というのは許しがたい行いですが、
これは後半のオネーギンの手紙を破る場面を
効果的に見せるための伏線であって、
演出効果を狙ってのものなのです。

元の話でも、一旦はわずらわしく思い、
手紙を暖炉に投げ捨てますが、その後すぐに拾いあげ、
焼け焦げのついた手紙を、
再会するまで大切に持っています。

そしてタチヤーナには、
若くしてすでに達観した人生観を持つ彼は、
私のような道を外れた人間のことなど忘れて、
もっと素敵な恋と結婚をなさい、と諭すのです。

二人の年齢差はわかりませんが、
当時は15歳で結婚することも珍しくはありませんでしたから、
いまでいうと、タチヤーナはせいぜい高校生くらい、
一方オネーギンは20代後半、
何不自由なく裕福な生活を都会で送り、
女遊びにも興じていた彼にとって、
タチヤーナはただの子供であり、
気持ちを弄ぶどころか、相手にもしていないのでした。

そして再会の時。
昔振った彼女が美しくなっていて惜しくなった、
というのが一般的な解釈のようですが、
私には、彼が本気で女性を好きになったのは、
このときが初めてだったのではないかと思っています。
だから、あのようななりふり構わない、懇願ができるのだと。
0 12

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2008年12月>
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031