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2008年11月18日11:07

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【音楽】Chopin: Piano Works@Jean-Marc Luisada

RCAレッドシールの新譜から、ルイサダのショパン・ピアノ作品集、SACDハイブリッドだ。

https://www.hmv.co.jp/product/detail/2810398

ショパン:
・ノクターン第20番嬰ハ短調『レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ』(遺作)
・ノクターン第1番変ロ長調Op.9-1
・ノクターン第16番変ホ長調Op.55-2
・舟歌 嬰ヘ長調Op.60
・ポロネーズ第7番変イ長調Op.61『幻想ポロネーズ』
・スケルツォ第4番ホ長調Op.54
・エチュード変イ長調Op.10-10
・エチュード変ト長調Op.10-5『黒鍵』
・ワルツ第3番イ短調Op.34-2『華麗なる円舞曲』
 ジャン=マルク・ルイサダ(ピアノ)

綿密なショパン研究と丹念な譜読み、そしてこれらの深い洞察力によって今やショパン・ディクテーターとしての地位を揺るぎないものにしたルイサダ・・。そのルイサダが満を持して贈るショパン珠玉の名作集だ。繊細でナイーヴなルイサダの指先によってピアノ譜の行間に潜むショパンの陰鬱かつ勇壮な心の内面がつまびらかにされて行くこの空前の演奏は大いなる賛辞をもって迎えられるだろう。まさに新しい世紀にふさわしい新ショパン解釈の誕生である−−−

・・・上のセンテンスは、プロモーション側の評論家であればきっとこのようなキーワードをちりばめた評論文を書いて絶賛するのだろう、という予見をもって組み立ててみたコンテキストだ。以下、忌憚のない感想:

このルイサダという人の演奏はNHKのスーパーピアノレッスンという番組で断片的に聴いたことがあるが、まともに聴くのはこれが初めて。エモーションとロマンチシズムを重んじるタイプのピアニストでキータッチの一音一音を非常に大切にするという印象、そしてとても繊細なピアノを弾く人物だと思っていた。

ショパンやリスト、ラフマニノフのピアノ作品は、絵画や写真などに例えるなら超微粒子で構成される細密画の様なもので、一つ一つの画素が粗いと全体のフォーカスが暈けてしまい、持ち味であるディテールの光沢や陰影が間引かれてしまう。

このCDにおけるルイサダのショパンはまさにこういった構成画素を大きめの点で描画したような演奏で、要はテンポが遅すぎる。それでいて大きく歌わせたいがためか叙情部では常に後拍で弾いているし、それが著しい箇所では1/3〜1/2音も遅れるので全編がシンコペーションに聞こえてしまう。つまり一音一音を大切に弾く余り離散的になり過ぎ、非常にダルなのだ。

これは、この人の技巧に起因する弾き方ではなく、明らかにこういった離散的な解釈を快しとしているからなのだ。なぜならエチュードOp.10#5はこの曲集の中では唯一の例外で、ほぼ譜面指定通りの速いテンポで弾いており、細かなパッセージ、トリルや装飾音も高速で完璧に弾き抜けている(が、後半はやはりルバートがきつくて酔ってしまう)。

ルイサダは上部雑音(finger-to-key noise)やペダルの操作音は殆ど聞こえないくらい静かなピアノを弾く人だ。そして、確実にノン・レガートで弾き進むところはよいのだが、ペダルの多用が悪さをしていて持続音が少々汚いのと、ルバートの揺らぎが強くて清潔な旋律が濁ってしまっている点が残念なところだ。

以上に述べたように、どの曲(特にバルカローレ)も譜面からは大きく変形された独特の曲想で弾かれているため、従来からのこれらに対する作品イメージが崩れかけていて少々面食らってしまった。この演奏に対しての好き嫌いは大きいと思う。

(録音評)
RCA Red Seal、88697389952(国内盤はBVCC31097)、録音は2007年11月6-9日、軽井沢大賀ホールとある。使用ピアノは単にYAMAHAとある。音質は悪くはないがDSD録音の特徴を活かしているかと問われると疑問。CDレイヤーの音質はSACDレイヤーのそれと殆ど差異はない。

ショパンならばやはりスタインウェイで聴きたいと思うし、ましてやこの大賀ホールにはあのミケランジェリのスタインウェイがあるので是非これで弾いて欲しいと思うのだが、ルイサダの選択はヤマハだった。ピアノの音自体は紛れもなくヤマハだが、ルイサダの弾き方が丁寧なためか破綻箇所や不快な歪を出す箇所は皆無で、中高域はベヒシュタインのそれに酷似している。太く鈍色の低音弦はヤマハのそれそのもの。彼のこの曲想から言うとスタインウェイはソリッドでブリリアント過ぎたのかも知れない。

不思議なことにこの輸入盤とされるSACDハイブリッドは欧米で発売されている気配がない。このBMGの製品番号でサーチしても引っかかるのは日本の@TOWERだけだ。他のキーワードでルイサダ作品を探しても見当たらない。このCDは日本専用?

※今夕は勉強会→懇親会
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