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2016年05月22日11:21

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横溝正史 『 八つ墓村 』を読んだ。


映画『 八つ墓村 』(昭和52年 松竹)は大好きな邦画である。何度観ても、面白い。しかし、肝心の横溝正史の原作小説を読んだことがなく、最近、とあるTV番組で横溝正史の『 八つ墓村 』を紹介し、推理小説に詳しい有識者達が作品への思いを語る座談会を観て、大いに興味を抱いた。私の知っている『 八つ墓村 』とはかなり違っていたからだ。特に、驚いたのは横溝正史作品に登場する女性キャラの中で最も人気の高いという「 典子 」が映画には登場していないことだった。

 さっそく、原作を入手し、読んでみた。執筆された時代(昭和24〜26年)が古いこともあって、日本語の表現に違和感を覚える箇所が少なくなかったが、映画のシーンを思い出しながら楽しく読み進められた。原作を読み終えて感じたのは、松竹版『 八つ墓村 』の橋本忍脚本がいかに素晴らしいものだったか、ということだ。映画には尺の制限があり、原作の登場人物をカットしたり、何人かのエピソードをまとめてしまうことはよくあるが、松竹版『 八つ墓村 』はこの点、大胆かつ見事に登場人物を整理して物語を成立させている。中でも、原作の姉・春代、典子、森美也子のキャラを、映画では森美也子(小川真由美)ひとりにまとめたのは抜群に巧い(映画では姉・春代=山本陽子は登場するが、辰也への思慕は描かれない)。おかげで、映画の森美也子は原作より格段に魅力的で、存在そのものに意味がある最重要なキャラになっている。

 また、映画が原作を大きく変更しているのは、報奨金(原作では三千両の再興資金)欲しさに村人たちが尼子義久ら8人の落ち武者を惨殺した過去が、現在の事件に大きな影響を及ぼしているとした設定だ。原作では、進行する連続殺人事件の説明に紙数が費やされ、落ち武者惨殺事件は単なる歴史的背景に過ぎない。原作小説が推理ドラマであるとすれば、犯人の動機をもっと「 根の深いもの 」とした松竹版映画『 八つ墓村 』はおどろおどろしい伝奇ミステリードラマといえる。私はやはり、松竹版『 八つ墓村 』が好きなんだなと再確認した次第である。渥美清演じる金田一耕助が事件の全容を静かに解き明かしていくシークエンスは何度観ても引き込まれる。

■過去日記「渥美清 浅草・話芸・寅さん」
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