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2026年03月19日09:20

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渡辺努『インフレの時代』(中公新書)を読みました。

渡辺努『インフレの時代』(中公新書)を読みました。
著者は、日本銀行ご勤務の後、現在は東京大学名誉教授、ナウキャスト創業者・取締役であり、ご専門はマクロ経済学だそうです。おそらく、日本における物価指数やインフレに関する権威の1人だと私は思います。
本書では、まず、冒頭で第1に2022年の輸入インフレから始まった現在の物価上昇は一過性のものではなく、持続性がある、という点と第2にインフレは前向きな変化である、という2点が示されます。第1の点は私も長らく一過性の物価上昇で、すぐにデフレに近いゼロ近傍の物価上昇率に戻る、と考えていましたので、まさに物価に関する第1人者のご慧眼だと思います。第2の点は、本書では価格が動くことによる市場メカニズム機能の回復として考えてます。はい、私もその通りだと思います。
ただ、本書でもそうですし、このご著者の一連の論考でもそうなのですが、デフレと物価が動かない、ゼロインフレとは違うという点はゴッチャにされており、私は正しく認識しておくべきだと考えています。ですので、やや論点がズレている、あるいは、意図的にズラしている印象があります。
もうひとつ疑問なのが、本書では、デフレ、だろうと思うのですが、あるいは、日本の物価が動かない原因をグローバル化に求めています。もっと正しくいえば、グローバル化が進む中で、第1に、雇用を確保するために賃金を犠牲にした、すなわち、日経連『新時代の「日本的経営」』で示された非正規雇用の大幅な拡大が生じて賃金引上げが停滞したこと、さらに、第2に、中国からの安価な輸入品が増加したこと、の2点に求めていて、逆に、本書で明記しているのはグローバル化の巻戻しによるインフレの進行、ということになります。
本書で明記していない点は、金融政策の失政によるデフレの深刻化です。ただし、黒田総裁時代の異次元緩和がデフレ脱却には役立たなかったという歴史的事実がありますので、私はリフレ政策の限界だという気もしますから、今回明らかにされた日銀政策委員2人の任命に示されたように、現在の高市内閣のリフレ政策志向には少し疑問を持っています。黒田総裁時のリフレ政策がデフレ脱却に失敗したことは、私は明らかだと思います。
少し脱線しましたが、本書では、こういった基本的な物価やインフレに関する分析を明らかにした後、インフレの時代に、為替や政府債務がどうなるか、日銀や政府はどう対応するべきか、「自然」実質賃金という概念を用いた分析、令和の米騒動の原因、などなど幅広いマクロ経済のテーマを考えています。そのあたりは、読んでみてのお楽しみです。
最後の最後に、私の従来からの主張ですが、グローバル化の中で賃金を犠牲にして雇用を確保した、というのであれば、グローバル化が巻き戻す中で労働分配率を上昇させて、インフレの加速なしに名目賃金を大幅な引き上げることが可能で、したがって、実質賃金の上昇が期待できます。

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