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2025年12月10日08:32

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ケネス・ロゴフ『ドル覇権が終わる時』(日経BP)を読みました。

ケネス・ロゴフ『ドル覇権が終わる時』(日経BP)を読みました。
著者は、米国ハーバード大学教授であり、ご専門はマクロ経済学、金融経済学です。今世紀初頭の2001-03年に国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミストも務めています。私の予想ではノーベル経済学賞にもっとも近いトップテンに入るエコノミストの1人だと思います。本書の英語の原題は Our Dollar, Your Problem であり、今年2025年の出版です。
英語の原題も日本語タイトルも、いずれも定義がややあいまいな「基軸通貨」という用語を用いていない点は少し注意して読み進んだ方がいいと思います。本書の中でも必要に応じて「基軸通貨」と表現していますが、本書の趣旨はあくまで日本語タイトルに正確に表されている「ドル覇権」なのだろうと私は思います。思い起こすべきは、フランスのジスカール・デスタン大統領に由来する「とてつもない特権」="exorbitant privilege" ではないかと思います。
本書では軽く、調達金利が低い点だけが印象的ですが、米ドルにはほかにも特権がいっぱいあります。そういった国際金融の歴史を冷戦期から振り返っています。しかも、英語タイトルにも日本語タイトルにもあるように、著者は国際金融史のインサイダーであり、著名なエコノミストとして、そして、もちろん、IMFのチーフエコノミストとして、私のような並のエコノミストでは接することが出来ない情報にもアクセスしてきています。
米ドルの覇権については本書第1章序論にあるように、現時点で世界のGDPの25%を占める米国の通貨である米ドルは、外貨準備の60%、原油取引の80%、商品貿易の40%が、それぞれドル建てとなっていることに現れています。
広く知られているように、米ドルの前の覇権は英国のポンドだったったわけですが、20世紀初頭の第1次世界大戦を経て通貨覇権は米ドルに移行しています。ですから、本書でも米ドルの覇権は永遠ではないと指摘し、その背景となる条件ほかについて分析しています。
主要には私は2点読み取りました。軍事力と金融市場の発達です。いずれも、前の通貨覇権国である英国も裏付けとして十分な軍事力と発達した金融市場を持っていたことはいうまでもありません。そして、これまた、ドル覇権に対するチャレンジは、決して中国の人民元や欧州のユーロ、もちろん、絶対に日本円ではなく、そういった海外からのチャレンジではなく、むしろ、米国自身のインフレによる低金利の終焉、政府債務、そして、その政府債務に対するアカデミズムの軽視、があると強調しています。すなわち、サマーズ教授なんかが主張し始めた "secular stagnation"=長期停滞は永遠に続くわけではなく、AIの活用などにより成長率が上昇する可能性があって、成長率が上昇して低金利の時代が終わる可能性を指摘しています。そして、現代貨幣理論(MMT)などをはじめとしたアカデミズムの「政府債務はフリーランチ」という志向や政治面でのバイアスからインフレが高進する可能性も指摘しています。はい、そうかもしれません。
最後に、私は40年前のバブル経済期であれば、米国に取って替わる勢いのあった日本経済を背景に、ドル覇権の終了は日本経済にはひょっとしたらチャンスになるかもしれない、と考えた可能性がありますが、現時点ではドル覇権が終了に至らないまでも、もしも弱体化したりすれば、日本経済は米国とともに沈んでいく可能性の方を憂慮すべきか、と考えています。
最後の最後に、さすがにロゴフ教授も70歳を超えて自分のパーソナル・ヒストリーを振り返ると、かなり自慢話が多くなっている印象を受けました。意識的に避ける努力をしなければ、私もたぶん自慢話が多くなるんだろうと思います。

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