Triolilaという知らないレーベルの新譜でチャイコンとラフPコン3番の豪華カップリング。微妙な齢の女性がピアノの前で屈託なく笑っているジャケットが目を引いた。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2752646
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 Op.23
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 Op.30
ギュルスィン・オナイ(Pf)
ビストリク・レジューハ(指)スロヴァーク・フィル(1997年11月7日Live)
エミール・タバコフ(指)ビルケントS.O(2005年4月3日Live)
この女流ピアニストはギュルスィン・オナイといい、トルコ国内にあっては極めて著名な人物、国民的な演奏家らしいが、日本では余り知られていない。過去に来日し公演もしたらしいのだがこのCDを買うまでは全く知らなかった。
本人のWebサイトはこちら:
http://www.gulsinonay.com/newsite/main-en.php
結構な数のCDをリリースしているようだ。今回のこれも例によってキング・インターナショナルのチャレンジングな輸入となるが、他のリリースも取り扱っているかどうかは不明。
チャイコンの入りはごく普通に絢爛豪華、モデレートなもので安心して聴き始めたのだが、最初のカデンツァからただならぬ気配が漂う。スタインウェイが時々鋭い悲鳴を上げるし、アチェレランドの急峻さはかつて例がないほどの高速域に達する。アインザッツからのオケとの絡みがまた凄い乗りで瞬きをする暇もないほど目まぐるしい弾きっぷり。緩徐楽章のピアノの歌わせ方は独特のクールさであってとても女流とは思われない醒めたもの。そしてフィナーレの凄まじいピアニズムの炸裂はいったい何なのだ。これほどピアノの音数の多いチャイコンは余り聴いたことがない。とにかく手数が多く、そしてなんと言っても豪快かつ精巧な高速スケール、分散和音、シンコペーションは現代のヴィルトゥオーゾそのものだ。ただ者ではない。コーダがやむやいなや嵐のような喝采が鳴り響いて我に戻った。
そしてラフ3番。チャイコンで打ちのめされたあと、甘美にやるせなく美しい旋律が待っているかと思いきや・・・、いきなりぶっ飛んでしまった。なんと速く巧いラフなのだ。もともとラフ3は最難曲の一つに数えられるコンチェルトで、弾き手の操鍵テクニックを過度に要求する曲だ。現代の名ピアニストをもってしても最後まで弾き通すのは息も絶え絶え、旋律とカデンツァを一通りトレースするだけでもアップアップという代物なのだが、これをいまだかつて聴いたこともない様な超絶技巧を用いて超高速で弾き倒してしまうラフ3というのは未体験ゾーンだ。そして特筆すべきはその技巧ではなく、乗りの良さである。本人は大いに楽しみながら時に情感を込め、時に痛快に疾駆しているのである。後からライナーを読んで納得した。この人は自他共に認める根っからのラフ弾きらしいのだ。
これは凄いピアノ弾きだ。こんな人がいたとはつゆ知らなかった。他にもショパンのポロネーズ集などを録音しているらしいのだが、果たしてどんな弾き倒し方をしているんだかとても気になる。
(録音評)
Triolilaレーベル、279923、通常CD。チャイコンの方は何の衒いもないワンポイント録り流しという風情の録音で、ライブ特有の会場ノイズなども盛大に入っている。音質はかなり良い方でメジャー・レーベルの現代録音よりも優れている。ラフの方はもうちょっと洗練された録音で弦が美しく際立っている。勿論両者ともピアノの狙い方は一級品で、痛いほど叩かれて悲鳴を上げるスタインウェイが克明に捉えられている。
このチャイコンは伝説とされているライブを録ったもので、かつてプライベートレーベルから限定数発売されたというが、今回はいわば幻の音源の再デビューということらしい。
とにかく生々しい優秀録音だ。チャイコン・マニアにもラフ好きにも超お薦めの一枚。
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