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2008年10月20日11:14

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【音楽】Sibelius: Piano Works@Ashkenazy

TRITONレーベル(オクタヴィア)の夏の新譜で、アシュケナージが弾くシベリウスのピアノ作品集から。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/2764311

シベリウス:
・悲しきワルツ 作品44-1
・即興曲 ロ短調 作品5-5
・10の小品 作品58
・5つの小品(花の組曲) 作品85
・5つのロマンティックな小品 作品101
・5つのスケッチ 作品114
・悲しきワルツ 作品44-1

 ウラディーミル・アシュケナージ(ピアノ)

アシュケナージはピアニストとしての活動から引退すると表明しており、それはコンサート/リサイタルをやめると言うことなのだろうが、CD録音もやめてしまうのかどうかは定かではない。もうアシュケナージの新録音を聴けなくなるのかも知れないと思うと、アシュケナージの名を店頭でみつけるにつけ手にとって録音年月日を確認してしまう。これもそう言った一枚だ。

個人的にはアシュケナージは思い入れのあるピアニストの一人で、私がピアノをやっていたその昔、ショパン作品などの弾き回しや解釈を模倣する対象であり解釈の規範だった。アシュケナージのレコードには随分と世話になったと思う。これは、ロック少年がジェフ・ベックやエリック・クラプトンの弾くギターのパッセージを精緻に丸コピーするという行為と同じ様なものだったのかも知れない。この作品集に入っている花の組曲の第二番はカーネーションという曲なのだが、たしか中学生の頃にこれを猛練習し、発表会で弾いた日がつい先日のことのように思い返される。

アシュケナージの録音や芸風についてはずっと以前から日記に書いてきていて、今更ながら云々するつもりもないし、ましてや良い悪いだの好き嫌いだのと言った尺度では語りたくはない。

ここで聴かれるアシュケナージは、完璧なマルカートとレガート、そして透徹された高速デュナーミクは若い頃と変わらず、尚かつ晩年になってよく使うようになってきた大きく謳うようなアゴーギクにより強く心耳に訴える、そしてグッと胸に迫る何ものかを感じさせる演奏をしている。特にアゴーギクに関しては、まさにこの曲集のために鍛錬してきたと思われるほどの深い表現力だ。

悲しきワルツで始まり、悲しきワルツで終わるこの短い作品集を今後もずっと大切に、そして静かに聴いて行きたいと思う。

(録音評)
TRITONレーベル、EXCL00017、SACDハイブリッド。録音は2007年12月9-11日、フィンランド、ヤルヴェンパー・ホール、最後の悲しきワルツだけは2007年12月11日、アイノラ、シベリウスの家での録音。

音質はこの手のピアノ独奏録音としては極めて優秀、超高S/Nだ。しかし優秀すぎるのである。どういうことかというと上部雑音やアクション機構のノイズが殆ど入っていないのである。

ピアニストが鍵盤を押下するとその力がアクション機構に伝わりダンパーを押し上げ、直後にハンマーを駆動して弦を叩くのであるが、その経路と過程においては必ず機械ノイズを発する。またサスティンペダルを踏んだり離したりしてもダンパーが上下にスライドするときにノイズを発する。更には演奏者の気配も感じられるものであるが、このCDにはその種の音が殆ど入っていない。言ってみれば新品スタインウェイの音をサンプリングし、MIDIのCODECで鳴らしているような感じなのだ。これは恐らく制作側がこのように純音だけを捉えるよう意図したのであろう。

最後の悲しきワルツはアイノラ・ハウスに残されているシベリウスが生前愛用していた実物のスタインウェイで録られている。そのノスタルジックで狭レンジの音はご愛敬、また強弱が巧く付けられないらしくアシュケナージはそこそこ苦心しながら弾いている様子だ。但し、演奏と解釈は枯れた趣で美しい。弘法筆を選ばず、とはこのこと。
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