アメリカTONARレーベルのちょっと前の新譜から、ピアソラのギター・ソロ作品集。演奏するのはバルエコというギタリストで、当代を代表する人物だそうだ(初めて知ったが・・)。4つの作品からなるCDで、一つを除いて他の楽器からギター向けにバルエコ自身が編曲したもの。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2685263
ソロ・ピアソラ/マヌエル・バルエコ(ギター)
1.Invierno Porteno(Arr. Assad/ Barrueco)
2.Verano Porteno(Arr. Assad/ Barrueco)
3.Five Pieces
4.Tango-Etudes(Arr.Barrueco)
Manuel Barrueco(g)
個人的にはピアソラは余り聴かない作曲家の一人。別に嫌っているわけではない。オーディオ愛好家の間では少し前からピアソラが非常に人気があり、オフ会などで耳にする機会も多いのだが、ましな演奏&録音を聴いた試しがなくて何となく敬遠していたのだった。
従って聴いたことがあるのは有名なリベルタンゴとアディオス・ノニーノくらいだ。その次に有名なのが「ブエノスアイレスの四季」という4部構成の作品らしいが、ここにはその中から冬と夏が取り上げられている。
どれもが哀愁に充ち満ちたピアソラらしい暗鬱とした作品だ。しかし言葉を返せば落ち着いた、つまりテンションが低くなった心の襞を慰めるには好適な曲想とも言えよう。
色彩で言えば褐色、いや、もうちょっと微妙にくすんだセピア色がぴったりか。明るくもなく暗黒でもないがちょっと翳っている具合の心象だろう。
このバルエコという人のギターは非常に巧い。技巧的な面はもとより感情表現の起伏が大きくとても図太い解釈と展開を見せるギタリストである。
このCDは2008年度のグラミー賞・クラシック独奏楽器部門にノミネートされたと、ジャケットに金色のステッカーが貼ってあった。
http://www.grammy.com/Grammy_Awards/50th_show/list.aspx
ここのCategory 103に確かにリストされている。残念ながら受賞は逃したようだ。
夜、眠る前にこのCDから何トラックか聴きながらナイトキャップなどしているとその日に起きたことが自然と反芻されてくる。
(録音評)
TONARレーベル、TONAR 70715、通常CD。アルバムジャケットの写真やライナーの構成は全てセピア色ということで、ここに収録されているピアソラの曲風から連想させられる色彩感と全く一致する。
そして音質だが、これもまた驚くべき事にセピア色そのものの調音なのである。高域を意識的にカットし、中域をふくよかにすることによりギターの胴鳴りと弦の直接音を強調している。ホールトーンや残響と言った間接音、音場情報は高域のカットのために後退したものとなっており、それはやむを得ないことなのだろう。ピッキング・ノイズなどは盛大に入っているのであるが高域を絞ることによりマスキングされ、寧ろ刺激的な付随音を徹底的に排除した感のあるマスタリング手法だ。オーディオ的に云々すべきアルバムではなく、セピア色の音に心ゆくまで浸かるためのハイセンスな音楽アルバムと言える。
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