昨年秋口にリリースされたEMIの新譜だが、都合によりレビューが出来ずに積んであったCDだ。2006年のルガーノ・フェスティバルでのライブ収録、老年の域に達したアルゲリッチが珍しく大規模なP-Conを弾いたもの。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2617420
ショスタコーヴィチ:
・ピアノ協奏曲第1番(ピアノ、トランペットと弦楽合奏のための)ニ短調 Op.35
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
セルゲイ・ナカリャコフ(トランペット)
スイス・イタリア語放送管弦楽団
アレクサンドル・ヴェデルニコフ(指揮)
・コンチェルティーノ(2台のピアノのための)イ短調 Op.94
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
リーリャ・ジルベルシテイン(ピアノ)
・ピアノ五重奏曲ト短調 Op.57
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
ルノー・カプソン(ヴァイオリン)
アリッサ・マルグリス(ヴァイオリン)
リダ・チェン(ヴィオラ)
ミッシャ・マイスキー(チェロ)
ありきたりの表現だがアルゲリッチ渾身の、しかも珍しくエキサイトしている彼女のコンチェルトを久しぶりに堪能できる名演だ。この大胆にして華麗、そして超高難度のショスタコの大曲を、多少荒れながらも軽やかにトレースしていく情景は若い頃の熱情的な演奏スタイルを彷彿とさせるものである。付け足しになってしまったが、ナカリャコフというTp奏者は超絶的で精密なタンギングを見せつける人で、じゃじゃ馬のアルゲリッチのピアノとは好対照で冷涼な合いの手である。
コンチェルティーノは今まで数回しか聴いたことがなかった曲だが、なんとも言えないリラックスした良い感じの曲。
最後のクインテットはオールキャスト勢揃いという感じでなかなかにゴージャスな出来映えだ。まぁ、曲の全体解釈云々よりは各パートが担当するショスタコ特有のアーティクルを楽しみたい逸品だ。親友・マイスキーも登場する豪華版で、ライナーにはレンタルしたDGへの謝辞も明記されている。
(録音評)
EMIレーベル、5045042、通常CD。音質はささくれだった典型的なPCMである。これまた典型的な超高解像度、かつ音場成分もふんだんに含まれる優秀録音だ。全体としてやや硬質で細身の音色であり、アルゲリッチのピアノの音がメタリックで冷たい光沢を放っている。これはちょっとやりすぎかも。
ナカリャコフのTpは鋭いビームを伴って実在感は豊か、オケのパート分離も申し分ない。ステージの床のきしみや、ペダルを踏み込む際のアルゲリッチの発するノイズ、奏者の息遣い、会場ノイズなども盛大に入っていて臨場感溢れるライブ盤だ。
以上、大手レーベルの卒のない仕事と評価できるだろう。大手の昨今ではこの水準の完成度は珍しいかも知れない。超優秀マイナー・レーベルばかり聴き続けていると大手レーベル盤ではなかなか満足が得られないようになってくるのは困りもの。
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