ずっと以前から、マイミクの.はな
http://mixi.jp/show_friend.pl?id=1307981 に頼まれていて、なかなか要望に応えられずにいたドビュッシー/二つのアラベスクのレビュー。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2506547
クロード・ドビュッシー(1862−1918):
・版画
・組曲『子供の領分』
・2つのアラベスク
・ベルガマスク組曲
・レントよりおそく
・バラード
・マズルカ
・小さな黒人
パスカル・ロジェ(ピアノ)
年末に.はなから話しがあった時点で、パスカル・ロジェの1977年録音(アナログLP=現在はカセットしか手許にない)を取り上げようと思ったのだが、たまたま偶然、ロジェがこれらの小品集を再録音した、という情報を掴んだ。インスピレーション的には「これ!」だろう、と思った。その後すぐにリリースが分かり、アマゾンに頼んでいたが、輸入新譜の場合、注文がロストすることがたまにあって今回もそれらしい。で、結局キャンセルして店頭を当たった。成人式明けのHMVは初回入荷分が売り切れで、バタバタしているうちに2月に入り、ようやく手に入った。
アラベスクとは「アラビア風」、あるいは唐草模様などを意味する単語である。しかし、厳密なアラビア風音楽というジャンルは、今も昔もなくて、何となく異国の情緒、変わった試みの曲などに命名する習わしがある。
驚くべき事に、この二つはビュッシーが最初に書いた正式なピアノ曲とされ、1888年頃の作曲と推定されている。既に視覚デザイン的なドビュッシーの作曲エッセンスがしっかりと息づいているのが分かる、完成度の高い鮮烈な曲だ。
1番ホ長調は、3連符とアルペジオ、短いトリルを複雑に組み合わせたロマン派最後期の薫りがする作品。しかし、左手の刻む複雑な分散和音にはドビュッシーが印象派と言われる基になる要素が潜んでいる。
2番ト長調は平易な旋律進行ながら、減4度、或いは増3度和音を横糸として織り込んでいて、これもまたフランス印象派の発芽を感じさせる。コード進行は、展開前はショパンのOp.10の「黒鍵」、展開後はOp.25の「エオリアン・ハープ」に似ている。全体に溌剌とした秀作だ。
この作品集を聴くと、円熟の境地にいるロジェが録音したがった理由が分かる気がする。もともと独特のパリの薫りと風情を持ったピアニストの一人であるが、ピーキーで尖鋭な解釈と一種苛烈なタッチが癖でもあった。
しかし、今回のこれはどうだろう・・。並み居るヴィルトゥオーゾに見られる非常に繊細な超絶技巧とは違い、離散的な音符はそのままダイレクトにバラバラに描写するのは以前と同様。だが、空白・無音の扱いが以前にも増して魔術的だ。無音にシンコペーションが掛けられているとでも言うべきか・・・。
上部雑音は全くといって良いほど聞こえず、とてもしなやか、それでいてタッチは前回録音より剛健で太い。太いと言ってもドビュッシーの要求する微細なトリルはより微細に、非常に速いアルペジオは非常に速く、言うならば「鈍なる太さ」ではなく、「鋭なる太さ」なのだ。やはりロジェはロジェだった。
二つのアラベスクの他、子供の領分全曲、月の光を擁するベルガマスク組曲、そして名曲・レントより遅く、など、楽しめる作品がいっぱい詰まった嬉しいCDだ。
(録音評)
onyx Classicsレーベル。昨年6月、スイスで録音とある。音質は超Hi-Fiではなく、ピアノ古来の刺激音を極力抑えた耳に優しい、聴きやすい調音だ。かといってレベルの低い録音ではなく、なかなか立派なものだ。
恐らく曲の構成、また、ロジェの解釈と演奏スタイルを加味するとこれが音質的には最適なバランスではなかろうか。輪郭強調でバリバリのピアノを期待する人には到底お薦めできない。まぁ、ポートレート写真で言えばデビッド・ハミルトン風とでも言っておこう。
〜明日の音楽日記はお休み〜
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